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57話 音淵先生の新特訓

 林間学校四日目。


 そろそろ、皆がみんな、それぞれの特訓に慣れてきた頃。

 その少年少女達は砂地の中心に集められていた。


 「お前達には今日から別の特訓を行ってもらう」

 「別の……」

 「特訓ですか?」


 音淵先生の言葉に天斗とめめが聞き返す。

 他の皆も同じ反応で首を傾げている。


 「あぁ、お前達はこの三日間で格段に強くなった。だが、これから先は特訓で細かく鍛えるのは非効率的。自分で課題を見つけ、実戦でそれを修正する方が断然効率的だ」


 音淵先生は声高々に言い切ると、左手に持った紙を目線の高さまで持ち上げる。


 「よって、これからお前達には昆虫採集を行ってもらう」

 「「「「…………は?」」」」


 全員が一斉に間抜けな声を上げる。

 理解が出来ないのか、全員が呆けていると、一人だけ正気に戻った颯が手を上げる。


 「薫風、どうした?」

 「昆虫採集というのは、ただの虫ですか?それともーー」

 「モンスターだ」


 颯の言葉を遮るように音淵先生が言う。

 そして、モンスターという単語に今まで呆けていた生徒達の目が、真剣な眼差しになり、空気が緊張する。


 音淵先生は一つ頷き、概要の説明に入る。


 「場所は旅館のすぐ近くにある『ノンシーフォレスト・ダンジョン』というダンジョンだ。ターゲットは『金色蛍こんじきぼたる』というモンスターだ」

 「金色蛍?そのモンスターはどこにいるんすか?」


 金髪ロン毛の少年ーー響が質問する。

 音淵先生は響を一瞥し、それに答える。


 「生息階層は五層から二十層だと推測される。だが、目撃情報が一度しかないため、その情報が確かかどうかはわからない」

 「一度!?そんなの見つけようがないんじゃ……」


 めめが不安そうに口にする。


 「そうにゃん、そうにゃん!」

 「っていうか、そんなことやらせておいて無報酬なんすか?」

 「確かに〜」


 めめの言葉に花恋が同意を示し、続いて響が言った不満に愛莉が賛同する。

 それらはだんだんと他のクラスメイトたちも伝染していき、『やらない』という雰囲気が場を満たしていく。

 だがーー


 「確かに任務のような訓練であることは否めないな。……ならば、金色蛍を捕獲した時は報酬として、『回らない寿司』をご馳走しよう」


 ピシャリ!!と雷が落ちたような感覚が場を満たす。

『回らない寿司』という魔法の言葉によって、ギャーギャー喚いていた者や、立ち上がり旅館に帰ろうとしていた者も静かに音淵先生の前に戻り、正座すると、揃って口を閉ざした。


 「よし、ではルールを説明する。ルールはたったの二つ。一つは、三人一班で行動する事。班メンバーは既にこちらで決めさせてもらっている。……もう一つは、ボス部屋には決して入らない事だ」


 そこまで行けるとは思えないが、という後付けに、全員眉を引くつかせる。


 だが、たったの数日で最奥まで行ける人間が果たしてこの中にどれだけいるだろうか。

 ダンジョンの規模にもよるが、三十階層と仮定して恐らく一人か二人。それも、個人でモンスターに出会わない事を想定した結果となる。


 颯がそこまで考え、しかし万が一に備え、音淵先生の注意を頭の隅に置いておく。


 他の皆も同じようで、覚悟を瞳に据える。

 それを見た音淵先生は再び視線を手元の紙に移す。


 「……では、これから班を発表する。一班。無花果 結夢、橘 花恋、二尾 愛莉」

 「「はい!」」

 「……ん」


 花恋と愛莉は元気な返事をし、結夢は虚ろな瞳で小さく頷く。


 「二班。大祓 禊、影谷 鵺、烏野 木菟」

 「……」

 「……はい」

 「はい!……二人とも、もうちょっと明るく行こうよ」


 根暗な二人の肩を、苦笑いしながら木菟が叩く。


 「三班。蒼黄 翠、樂楽 響、森 雫玖」

 「りょ〜かいって感じ?」

 「うぃ〜っす」

 「よ、よろしくね」


 ふわふわした翠に、軽い響。

 二人の返事に雫玖は、おどおどしながら手を伸ばす。


 「では、最後……四班。五百雀 天斗、稲荷 めめ、薫風 颯」

 「お、颯と一緒じゃん!」

 「よろしくな二人とも」

 「こちらこそよろしくお願いします」


 天斗が颯に片手を挙げ、颯はそれに手を挙げ返す。

 ついでにめめにも手を挙げると、めめは丁寧に腰を折る。


 「さて、これで班分けは終わりだ。これからダンジョンに向かってもらう訳だが、その前に準備の時間を取ろう。それぞれ準備が整い次第、先に述べたルールを守り、死なない程度に頑張ってくれ」


 音淵先生はそれだけ言うと、背を翻し、旅館へと向かって行った。


 音淵先生の姿が木の影に隠れ、見えなくなってから、その場は解散となり、それぞれの部屋へと戻って行った。


 颯達も、三十分後に旅館の前に集合という約束をして、砂地を後にした。

本作をお読みいただきありがとうございます。


「面白い!」


「続きが気になる!!」


「頑張れ!!!」



と思って頂けたら


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