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51話 縛り

「では、まずーー『無使用の鎖ノン・リエン』」

  「うぇ!?な、なんだ!」

「くっ!取れない……!」


 先程、那月達がスキルを込めた鎖がそれぞれ光る。

 そして、黄色に光る鎖が翔に、紫色に光る鎖が那月に絡まり付く。


 二人が巻き付く鎖に手をかけるが、取ることは出来なかった。


 暫く、鎖と格闘を続けていた二人。

 しかし、それは、途中で中止となった。


「な、消えた!?」


 那月がそれを見て、驚愕する。


 鎖が透明になって消えたのだ。

 ただ透明なったのではなく、手に乗っていた鎖の重量感共々消えたのだ。


 二人が唖然と立ち尽くしていると、枷鎖先輩が状況を軽く説明してくれた。


「今のは、俺のスキルだ。スキル内容は先程説明した通り。今具現化したのは、《封印》だ」

「封、印……?」

「そうだ。俺は今、お前達のスキルの一部を封印した。その証拠に……白浪、普段通りにスキルを使ってみろ」

 「はい……」


 翔は怪訝そうに返事を返すと、背後に屹立する木に手を向ける。

 そして、きっちり狙いを定めーー


 「《雷電》!」


 スキルを放った。


 翔の放った雷が木を穿いて、その木を倒れさせる。


 その光景を那月と翔が想像した、次の瞬間。それは、裏切られた。


 不発だったのだ。

 翔がスキルを放つと、雷が手のひらに現れ、そこで弾けたのだ。


 「ーーうぐっ!」


 己のスキルが手のひらで暴発した翔は、一瞬呻き声を上げた。

 そして、枷鎖先輩を睨みつける。


 「白浪、お前は普段、手のひらから雷を放出しているな?」

 「……ええ、基本的には」

 「だから、『放出』を封印させてもらった」

 「!!」


 翔は目を見張った。

 枷鎖先輩の一言を理解したからだ。


 放出を封印されたということは、雷を外に出すことが出来ないということだ。


 それはつまり、翔の四肢を折るのと同義で、翔にとっては、致命的な行為だった。


 「そして、黒滝。お前は『付与』を封印させてもらった」

 「付与ってなんすか?」


 那月が聞きなれない言葉に首を傾げる。


 「お前が普段使う、自身や対象に掛かる重力を触れることによって変える能力の事だ」

 「ふむ……ふむ?……ふむぅ!!」


 那月も意味を理解したようで、手をワナワナとしている。


 「さて、お前たちには、今までとは異なったスキルの使い方を習得してもらう。これが、俺の特訓だ」

 「「…………」」


 言葉が出なかった。


 スキルとは生まれた時から備わっているもので、使い方も当然、その時から変わらず同じである。


 言ってしまえば、日本人が日本語を話す事となんら変わりは無いのだ。


 それを枷鎖先輩は一週間で、教科書も何も無い状態から外国語を学べと言っているのだ。


 無理だ。


 那月と翔がその答えを導き出すのに一秒とかからなかった。

 その事を表情から読み取った枷鎖先輩が不敵な笑みを浮かべた。


 「これは、プレイヤーになる為には必須の条件だ。勿論一つのスキルの使い方に拘るのも良いが、良くて、中級止まりだろうな」

 「「……!」」


 二人がぴくりと肩を震わす。

 もう一押しだと言うように、枷鎖先輩は言葉を繋げる。


 「当然、中級じゃあ、雑魚のディクトにすら遅れを取るし」

 「!」

 「当たり前だが、最強とはとても言えないだろうな」

 「!」


 翔と那月がそれぞれ、顔を上げる。

 その瞳には、同色の色が浮かんでいた。


 一つは、怒り。

 一つは、闘志。

 そして一つは、覚悟だ。


 「やってやるよ」

 「それで、屑を殺せるのなら」


 「フッ」と枷鎖先輩は満足そうに鼻を鳴らすと、背を翻す。


 「俺は口を出さない。好きなように模索しろ」


 そう言うと、先程腰をかけていた岩の元へと歩みを進める。

 だが、数歩進むと「忘れていた」と振り返る。


 「黒滝、お前にはもう一つ縛りを設ける」

 「え?」

 「『記憶の鎖メモリーチェーン━━《:重力》』」

 「ーーぐッ!」


 枷鎖先輩がそう呟くと、消えたはずの鎖が那月の体に現れ、紫色の光を一際強く放つ。

 直後、那月の体がぐっと沈む。


 それは、まるで自分を十人背中に背負っているかのような感覚。


 「こ、れは……!?」

 「お前は身体能力が凄いらしいからな。ついでにそちらも鍛えてやろうと言うわけだ」

 「くっ……ぅぅ……!!」


 那月は何も言わず、ただ足に力を込め唸る。


 そうして居ないと地面に膝を着くことになりかねない。

 更にもしそうなった場合立つことは不可能だろう。


 「ぐっ!《:重力》!」


 那月は自身の体に掛かる重力を軽減しようとスキルを使うが、枷鎖先輩の『封印』によって、それは不発に終わった。


 「く、そ……」


 那月は枷鎖先輩を睨みつける。


 だが、当の本人はそれを意にも返さず、岩に腰をかける。


 「さて、お前達は何日で習得できる?」


 枷鎖先輩は再び不敵な笑みを浮かべるのだった。

本作をお読みいただきありがとうございます。


「面白い!」


「続きが気になる!!」


「頑張れ!!!」



と思って頂けたら


下記の☆☆☆☆☆から評価をよろしくお願いします。


面白かったら★★★★★、まぁまぁじゃね?と思われた方は★☆☆☆☆。


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