35話 モールダンジョン攻略①
短めです
那月たちの加勢のおかげで、地上に出るモンスターの数は減りつつある。
しかし、根本的な問題である迷宮崩壊を止めないことにはモンスターは半永久的に出続けるのだ。
「いやぁ、助かったよ。君たちのおかげで死者は二十も出ていない」
髭面の禿男は、のんびりとした口調で那月たちに感謝を述べる。
「やっぱり、回復系のスキル持ちがいると戦闘が楽になる」
禿男は百花を一瞥する。
「だが、戦闘が終わるわけじゃない」
「ん?」
「根本的問題を解決出来る訳じゃないと言ったんだよ」
翔は幾回りも年上の禿男を睨みつける。
男は不快な顔一つ見せず、にっこりと続きを促す。しかし、続く翔の言葉に驚愕を見せる。
「迷宮崩壊を止めるにはボスを倒す必要がある。だが、ボスが外に出てくるのを待っていてはここにいる全員が殺されるだろう」
「ふむ、確かにな。だから中級プレイヤーの到着をーーーー」
「俺がダンジョンに潜る」
「ーーっ!」
男のみならず、那月を含めたクラスメイトたちも驚きを隠せない。
「おい!おいおいおい、何言ってんだよ?冗談だろ?」
「冗談?俺が冗談を言うように見えるか?ここでいちばん強いのは恐らく俺たちだ。だから、俺たちが行く。違うか?」
那月達は何も言わない。
静寂を破ったのは以外にも氷華だった。
「私も行く」
「氷華!?」
「俺も行くぜ」
「私も行くー!」
氷華に続き、紅蓮、朝日が便乗する。
那月は呆れ顔を見せると、ため息をつく。
「わかったよ、じゃあ俺もーーーー」
「お前は要らない」
「なんでだよ!俺だって戦える!だからーー」
「だから、連れて行けと?スキルの使えないお前を?それこそ冗談だ。スキルの使えないお前に何か出来るとは到底思えない。足でまといになるだけだ」
翔の口からでた「足でまとい」という言葉に那月は酷く心を抉られる。
ライバルだと思っていた相手からそんな言葉を貰えば誰だって傷つくだろう。例えそれが心配からくる言葉だったとしても。
「それに……地上に出たモンスターを倒すのも大事な役割だ」
「……………わかったよ」
苦虫を噛み潰したような表情で那月は答える。
翔はそれだけ言うと、三人を連れてダンジョンに向かう。
しかし、そこで傍観を決め込んでいた禿男が待ったをかける。
「お、おい!ほんとに行くのか?プレイヤー以外のダンジョン探索は禁じられているんだぞ!」
「俺たち以外にこれが止められないから行くんだろ……あんたら大人に力がないからな」
「……っ!」
禿男は物言いたげな顔を見せ、しかし翔の言葉も正論であるため言い返すことが出来ない。
今度こそ翔達はダンジョンに向けて足を進める。
「しかし、ほんとに止められんのか?」
「やるしかないだろ」
「それで死んだとしてもか?」
「死ぬつもりなどない」
「そうかい」
紅蓮の問に翔はあっさりと答えを返す。
翔にしてみればこれくらいのダンジョンのボスは取るに足らない敵なのである。
翔は大きく開いたダンジョンの扉の前に立つ。
モンスターはプレイヤー達が倒してくれたおかげで、現在その扉からは一つの影も出てこない。
しかし、それは一フロア目のモンスターが出切っただけであって、二フロア、三フロアとモンスターは存在するのだ。ボスを倒さない限りモンスターは永遠に湧き続けるのである。
翔達は意を決すると、洞窟のようなダンジョンに足を踏み入れる。
ダンジョンに足を踏み入れ、モンスターが出てくる前に大まかな確認をする。
「このダンジョンはワンボス制のダンジョンだ。つまりボスを一体倒すだけでこの迷宮崩壊は止まる」
ワンボス制ダンジョンとは、そのダンジョンにボスが一体のみ存在するダンジョンである。基本的にボスは最下層の最奥にいるとされている。
ワンボス制の他には、フロアボス制というものがあり、こちらは学校の地下にあるダンジョンのような各フロアにボスが存在するダンジョンのことである。
迷宮崩壊はワンボス制ダンジョンの方が起こりやすいのだが、フロアボス制ダンジョンで起こった時は大きな被害を免れないのである。
今回はワンボス制ダンジョンという事で、少しはやりやすいのだが、それでも厄介な事には変わりないのである。
「途中のモンスターは最低限殺していく。撃ち漏らしは那月が何とかしてくれる」
「おや、足でまといとか言っておきながら、大した信頼です事」
「もしかして、那月を置いてきたのって心配だったからか?」
「……お人好し」
「ちっ、口を動かすなら足を動かせ!」
翔は苛立たしく舌打ちをすると、その足を速める。
しかし、三人は見逃さなかった。その頬が少しだけ朱色に染まっていることを……
三人はにやにやと笑いながら翔の後を追うのだった。
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