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32話 魔王城パンケーキ

「プランターってなんだ?」

「プランターってのはね、植物を育てるための入れ物だよ」

「へぇ、ってなんで百花がいるんだよ!」

「……うるせぇ」


 電車に揺られる三人は隣町のショッピングモールに雫玖のお使いでプランターを買いに行っている。

 那月と翔が心配と言うわけで、百花はお目付け役に指名されたのだった。

 那月はそこまで信用無いのかと、少し落胆するのだが、車内に響く隣町到着のアナウンスで立ち上がる。


 駅を出ると、学校前のような近未来感はないが、また違った都会感のある街が見えた。


「なあ、どうして弾二四市で買わなかったんだ?」

「弾二四市にはダンジョン鉱物製の道具しかないからね」

「それじゃダメなのか?」

「ダメに決まってんじゃん!ダンジョン鉱物製のプランターじゃ魔草しか育たないんだよ」

「へぇ、そんなもんか」


 百花はそれに、と言葉を続ける。


「それに、ここのショッピングモールの近くにはダンジョンがあるから気持ち値段が安くなるんだよ」

「まじか!」


 そんな雑談をしながら、三人は大型ショッピングモールまで辿り着いた。


「さて、早速プランターをーーーー」

「よし、那月くん、翔くん、行こう!」

「え、ちょちょちょ、おい!」

「はぁ、めんどくせぇ」


 百花は那月と翔の手を取ると、一直線にかけていくのだった。




「なぁーーーーー」

「きゃーぁ!これ可愛い!あ、こっちも!!」

「なぁ、ーーーーー」

「はい、那月くん。これも持ってね!」

「なぁって!!」

「ん?何?」

「なにじゃねぇよ!!」


 那月ははしゃぐ百花を呼び止める。

 そして、疑問をぶつける。


「なんで……なんで、俺荷物持ちしてんの?」


 現在、那月の両脇にはそれぞれ五つの袋が抱えられている。

 それらは先程から度々追加されており、全て百花が買ったものである。


「なんでって……男の子だから?」


 さも、当たり前といった風に言ってのける百花に那月はため息をつく。

 百花の方はダメだと諦め、那月はもう片方に文句をたれる。


「じゃあ、なんで翔は何も荷物持ってねぇんだよ!」

「…………フッ」

「ッこいつ……!」


 翔は何も言わずに鼻で笑うと、駆ける百花を追いかける。

 那月は何とか怒りを飲み込むと、翔と百花の後を追う。


 次に百花が入ったのは先程までの服屋とは違い、喫茶店だった。


「次はここか……?」

「そうだよ!そろそろお昼だしお腹空いてきたでしょ?」

「そういえばーー」


 那月は言われ、携帯の時刻を覗くと、確かにそこには『12:38』という数字が書かれていた。

 那月はそこで今が昼だということに気がつくと、それに続いてお腹が吠える。

 百花は那月のぐぅの音を聞くと微笑み、那月の手を引く。


「フフ、ほら入ろっ!」

「お、おう!」


 那月は手を引かれるがままにその喫茶店に入る。

 店内は落ち着いた木造建築で、和の雰囲気が強く示されている。

 三人は店員に促された席に着くと、それぞれにメニューを見る。


「二人とも、今日はありがとね」

「若干一名何もしてないがな」

「俺はこれから働く」

「ふふ、だからここは私が奢るから好きな物を頼んでね」

「まじで!?」

「……助かる」


 那月はじっくりと、メニューを睨むとハンバーグを頼む。

 翔が小さく「子供……」と呟いたが、那月の耳には届かなかったようだ。


 翔も、料理決めようとメニューに目を走らせると、『レモン入り海と山の幸酢漬け』といかにも口を窄めたくなるような料理を頼む。


「翔くん酸っぱいの好きって言ってたもんね……んー、私は……じゃあ、プレミアムパンケーキで」

「かしこまりました」


 店員は全員の料理を確認すると、それを厨房まで持っていった。


 十数分後、まず那月のハンバーグが運ばれてくる。

 ジュワジュワと肉汁を放つそれは、同時に空腹の腹をつつくような香りを放つ。

 那月は目を輝かせながら、それを受け取る。


 次に、翔の料理が運ばれてくる。

 見た目は普通の料理に見えるが、そこから放たれる匂いは食す前から自然と唾液を引き出してくる。

 翔はいつものすかし顔でそれを受け取る。


 最後に百花の料理が運ばれてきたのだか、それを目にして男子二人が目を見開く。

 テーブルに乗ったパンケーキは二人の知るそれとは大きくかけ離れていた。

 那月たちの知るパンケーキとは、表面積は手のひらサイズかそれよりも小さく、生地の厚さがせいぜい指の第一関節一つ分くらいのものだ。


 しかし、運ばれてきたそれは余裕で手のひらサイズを超え、厚さもぶ厚いハードカバー本を上回る厚さである。

 生地の上に乗る生クリームは禿げたおじさんが羨むほど多く盛られ、そこから垂れるシロップはまるで滝のようである。


 空いた口が塞がらない二人を差し置いて、目に女子特有の輝きを映した百花はナイフとフォークを手に取ると、早速食べ始める。


「わぁあ!じゃあ、いただきます!あーむ………おいひぃぃぃ!!!」


 顔を蕩けて頬を緩める百花に那月は覚悟を決めて告げる。


「百花、無理すんなよ。最悪俺たちが頑張るから」

「あぁ、奢ってもらうんだ……それくらいはな」

「………?ありがとう……」


 百花は二人の意図は分からないが取り敢えず感謝を述べて、再び魔王城のように屹立する巨大パンケーキを切り崩す。


 食後に那月と翔が驚きに言葉を失ったのは言うまでもないだろう。

いったい女子の胃袋とは分からないものである。

普段はあまり食べない人でもスイーツなどを出すとペロリと消してしまうのだから本当に分からないものである。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


本作をお読みいただきありがとうございます。


「面白い!」


「続きが気になる!!」


「頑張れ!!!」



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