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3話 試験説明

 筆記試験が終わったのは午後三時頃であった。

 筆記試験終了と同時に、受験生達は試験官の指示を受け訓練棟に来ていた。

 促された場所はとても広く、受験生達は何度目ともしれない硬直を味わった。


 現在の訓練棟内は五部屋の壁を取り払っているため、受験生およそ十万人が楽々入ることが可能である。

 中央にはステージがあり、その真上にはスクリーンが四方を向く形で配置されている。

 更に周りを囲むようにドーナツ型に置かれているパイプ椅子は、中央から外側へと高くなる段差型の━━普段は無い━━床のおかげで何処からでも中央のステージを見る事ができるようになっていた。


 訓練棟内は既にたくさんの受験生で満たされており、那月を含むおよそ二万人の受験生はステージから離れた後方の一角にある、まだ誰も座っていないパイプ椅子に腰を下ろす。


 恐らく人数的に十万人もの人数が入れる教室が無いためだろう。

 筆記試験は五クラスに別れて行われた。

 そのため、各クラスで終了時間に僅かながらズレがある。

 どうやら那月達が最後のクラスだったらしく、パイプ椅子は一脚の余りもなく全てが受験生の体重を支えている。


 試験官と思われるサングラスをかけた男がステージに姿を現すと、訓練棟内はしんと静まり返る。

 壁に埋められた無数の光源が力を失い、辺りが夜のように暗くなる。

 バンという音と共にステージの一点、グラサン男にスポットライトの白光が四方から集まる。

 グラサン男は腰からマイクを取り出すと、大きく息を吸い、そして━━━━


「レディース、エーーンド!ジェントルメン!我が校を受験した雛鳥共よ、俺はこの実技試験の監督役を任されたハバラだ!以後ヨロシクゥ!!」


 ハバラと名乗った男は司会者の決まり文句を第一声に、男にしては高めの声をマイクを通して訓練棟内に響かせた。

 多少の音割れを起こしながらも、ハキハキとしたその声は川のように澄んでいて、どこまでもひろがるようであった。


「まずは筆記試験お疲れ様と言っておくぜぇ!だが、ぶっちゃけ筆記試験の点数なんて耳くそ程度にしか考えてねえ!あって当然、無ければならねえ!!常識だからな!しかし、実技は非常識だ。俺たちはプレイヤー。ダンジョン探索者だ。死と隣り合わせの場所に鼻糞みてぇな奴は連れてけねぇ。つまり!この実技試験で結果を残せない奴はプレイヤーになるための土俵にも立てねぇから心してかかれ!」


 死地を見てきたであろう男の言葉には意思が籠っていた。

 弱いものを見捨てるのではなく、命を落とさせないために見限る。

 この学校が受験生に求めるもの━━それは強さである。

 再び静かになった訓練棟はしかし、先程までとは打って変わって受験生の覚悟で満ち満ちていた。


「腹は決まったようだな.........んじゃあ、ルール説明と行こうか?」


 辺りを一周ぐるりと見回した後、ハバラはにっと笑って本題へと入る。


「実技試験、その内容はゴーレムの街で生き残ることだ!おぉと、落ち着け子豚共。生き残るといっても死ぬ訳じゃあないから安心しな!━━場所は校舎裏の演習場。制限時間は一時間だ!そしてゴーレムはコイツらだ!」


 スクリーンが明るくなると、そこには四体のゴーレムが映し出されていた。

 全てシルエットだけだが、その形は全て異なる。

 右上のはゴツゴツとしているが、顔のようなものがあり、二本の足で立っている。

 次に左上はやや小さめではあるが四足歩行の獣のようである。

 一見すると犬のようにも、猫のようにも見える。

 右下も四足歩行で獣のようであるが、先程のよりゴツゴツしていて二回り程大きめである。

 最後に左下だが、これも右上のゴーレムのように人型であるが、横幅が少しばかり広く、肩から何かが突き出している。


「おおっと、ざーんねーん!皆シルエットだけしか見せられないんだ!まぁ、見てからのお楽しみってことで、ごめんよー!!」


 さて、と脱線しかけた話を元に戻すと、まるで子供が自分のおもちゃを自慢するような声で語り始める。


「でも、重要な事を教えちゃうぜ〜。こいつらは俺のスキル《砂塵》で作られたゴーレムなんだが、動かすためにはモンスターから取れる魔石が必要なんだ」


 ダンジョンが世界に出現してから数多くの人が挑戦し、敗れて、消える。

 その理由はトラップや、お宝に目が眩んだ賊に殺られるなど様々であるが、多くはモンスターによって殺されることだろう。

 モンスターとは、ダンジョンに生成されたとされている生き物で、その多くは謎である。

 奴らは体内に魔石というものを必ず一つは持っている。

 これは人間で言うところの心臓にあたるもので、これを砕く事で、モンスターは生命を絶たれる。

 しかし、魔石にはとても大きなエネルギーが秘められており、その貴重価値から魔石は高値で売れる。

 よって、多くのプレイヤーは魔石を砕かずにモンスターを倒し、それを回収し、売ることで生計を立てている。

 尚、魔石はエネルギーの塊、云わばエネルギー結晶の様なものなので、そこから供給されるエネルギーの量や質によってモンスターの強さが変わってくる。

 逆に言えば、強力なモンスターからは大きく、濃密な良質の魔石が取れるということである。


 以上のことから、魔石を核としたゴーレムはただの石や砂の塊ではなく、そのエネルギーを硬度に変換するため、まるで鉄のような、いやそれ以上の硬さを誇ることだろう。


「つまり、魔石を奪うか壊すかすればゴーレムは活動を止めるから頑張ってな!!」

「...........................。」

「..................?」


 あっさりと言ってのけるハバラに対して、受験生一同の緊張と覚悟の乗った責めるような視線が注がれる中、この試験の怖さを未だ理解していない少年はただただ試験の解説に耳を傾けるのであった。


本作をお読みいただきありがとうございます。


「面白い!」


「続きが気になる!!」


「頑張れ!!!」



と思って頂けたら


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面白かったら★★★★★、まぁまぁじゃね?と思われた方は★☆☆☆☆。


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