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22話 安全地帯

本日二話目

「クソが!何してくれてんだ黒滝!」

「へっ!見たか白浪!俺だってモンスターの一匹や二匹なんて事ないんだよ!」

「こいつ…ちっとは後先考えて行動しやがれ!」

「ま、待ってぇぇぇ」


 現在、那月達は危機に瀕していた。

 レッサーウルフの群れに追われているのである。

 どうしてこうなったのかというと、那月が倒したレッサーウルフの断末魔に呼ばれ、沢山のレッサーウルフが集まってきたのだ。


 翔の咄嗟の判断でその場は逃げ出したはいいもののこうして無事、十を超えるレッサーウルフの群れに追いかけ回されているのである。


「このままじゃ、追いつかれる……」


 翔は走りながらウルフの群れを一瞥すると、右手をそちらに向け、スキルを放つ。


「《雷電》!」


 翔の手から放たれた黄色の閃光が先頭のレッサーウルフ目掛けて飛んでいく。

 閃光は直前でウルフに躱され、地面に跳ねて儚く消える。


「ちっ!当たらないか…やっぱり走りながらじゃ……」

「あはは、下手くそだな!」

「誰のせいでこうなったと…」


 那月はけたけたと笑うと、走りながら小石を拾い、ウルフに目掛けて投げつける。


「くらえ!《重力》!!」


 五百グラムの小石が六粒程飛んでいく。

 しかし、先頭のレッサーウルフの前足に弾かれ、音を立てて地面に落ちる。


「おいおい、子供でももっと速い球投げられるぞ」

「んだと!当たりもしないお前に言われたくねぇよ!」

「弾かれるよりマシだバカ!」

「はぁ!?」

「はぁ!!」


「二人とも喧嘩してる場合じゃないでしょ!!」


 那月と翔が口論を始めると、百花が間に入り、それを止める。


「二人とも今の状況わかってるの?ウルフ倒さないと死んじゃうんだよ!」

「「ーーッ!」」

「え?」


 百花の「死」という単語に、二人の足が同時に止まる。


「俺は最強のプレイヤーになるんだ……こんな所で死んでたまるか!」

「俺はもっと強くならなきゃならねぇ……ここで死ぬ訳にはいかない!」

「……グルル」


 二人の目にやる気と殺意が現れる。

 ウルフは二人の殺気に気圧され、一歩足を退くが、直ぐに姿勢を低くして、戦闘態勢に入る。


 那月たちも前足に重心をおいてそれに応える。

 幸いと言うべきか、がむしゃらに逃げたおかげで、魔草の草原を抜け、開けた空洞に出たため、レッサーウルフの位置が正確に分かるのである。


 翔はウルフに右手を向け、那月は足元の小石を幾つか拾う。

 今にも、戦闘が始まろうかという時、百花の声が割って入る。


「那月くん!翔くん!こっちに横穴があるよ!」

「なに…!?」


 百花の指の指す方を見ると、確かに横に穴がある。

 しかし、翔は思案する。

 もし、その横穴に入り逃げたとして、その先が安全であるという保証はあるのだろうか、と。

 だが、ここで戦って勝てるという保証もないのも事実。

 翔は大きく頭を振ると、意を決してうんと頷く。


「走れ!横穴に逃げるぞ!」

「な、戦うんじゃないのかよ!?」

「ここで戦って勝てる保証はない。だったらすこしでも生き残る可能性のある方に賭けるしかないだろ」


 那月は納得すると、翔と一緒に横穴へと駆け出す。

 レッサーウルフも逃がすまいとそれに続く。


「なぁ!ほんとにこっちでいいのかよ!もし行き止まりだったりしたらそれこそ終わりだろ!」


 珍しく頭の働いた那月の意見に、翔は苦々しい面持ちで答える。


「そんなことは分かってる……だが、ここで戦っても勝てないだろ……」

「……っ!」


 翔の弱音を聞き、那月は少し驚いていた。

 会ってまだ数日だが、那月は翔のことを少しは理解していた。

 だからこそ、翔が弱音を吐いたことに心底腹が立っていた。


 ━━こいつはいつも上から目線で、自分が一番だと思ってやがる。苛つく事もたくさん言うし……でも弱音を吐くようなやつじゃないはずだ…!


「……だっさ」

「なに?」

「だせぇって、そう言ってんだよ」

「お前ーー」

「弱音なんて吐きやがって、それでも…それでも俺のライバルかよ!!」

「………ライ、バル…」


 翔は何を言ってるのか分からないといった表情で那月の言葉を繰り返す。


「お前が俺をどう思ってるかは知らねぇ!それでも俺はお前をライバルだと思ってる!お前が俺なんか最下位を眼中に見てなくても、俺はお前に認めさせる。俺が最強だってことを認めさせて、ライバルとして、見させてやるよ!」

「……お前なんかが、俺のライバルになれる訳、無いだろ……」

「んだと!」


 那月が翔に突っかかろうとした時、またもや百花の声が割って入る。


「二人とも、前!前見て、扉だよ!きっと安全地帯だよ!」


 三人の目の前に大きな鉄の扉が現れる。

 安全地帯セーフティゾーン。それは各層に二つある魔物が入れない場所の一つである。

 その名の通り魔物は入ることが出来ず、中では休憩などをとる事が出来る。

 場所によってはその安全地帯の中に街が作られている場所がある程である。


 三人はその扉を見て、顔を明るくする。


「黒滝!俺が時間を稼ぐ、その隙に扉を開けろ!」

「え……おう!」


 翔はそれだけ言うと、足を止め、振り返る。

 レッサーウルフ達は足を止めることなく突っ込んでくる。


「《雷電》」


 直後、先頭を走るレッサーウルフが地面から立ち上る稲妻の壁によって、焼かれ落ちる。


「止まれ、命が欲しくばな」


 レッサーウルフ達は目に殺意を浮かべるが、稲妻の壁を恐れて、その場に止まる。

 翔がレッサーウルフを止めると、背後から地面を削る重たい音が鳴り響く。


「白浪、早くしろ!」

「…あぁ」


 振り向くと、大粒の汗を滴らせながら手を振る那月の姿が目に入る。

 翔は先程那月に言われた言葉に思考を奪われそうになるが、頭を降って、それを遠くに追いやる。

 そして、駆け足で扉まで向かうと、中に入り那月と共に重たい扉を閉める。

本作をお読みいただきありがとうございます。


「面白い!」


「続きが気になる!!」


「頑張れ!!!」



と思って頂けたら


下記の☆☆☆☆☆から評価をよろしくお願いします。


面白かったら★★★★★、まぁまぁじゃね?と思われた方は★☆☆☆☆。


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