表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/145

16話 第六試合

短めです

 試合終了の宣言後、ニコニコと日奏が那月達の元へと帰ってくる。


「すげぇな、日奏!」

「ほんとだぜ!やっぱ強いんだな!」

「おめでとう。日奏」

「えへへ、ありがとう」


 那月、紅蓮、颯から賞賛の言葉を受け取るとニコニコ笑顔はふにゃりとだらしな笑顔へと変化する。

 しかし、すぐにその顔は元に戻る。

 次の試合の組が発表され、その説明を求められたからだ。


「ええと、五百雀いおじゃく 天斗あまと君。スキルは《集中》という集中力を高めるだけのスキルだけど、クラス九位の実力者だよ」

「へぇ、強いのか……」

「次に、稲荷 めめさん。スキルは《狐憑きつねつき》というもので、キツネを体に憑依させるスキルみたい。実家は神社らしいから遺伝系のスキルだね」

「遺伝系……?」


 遺伝系。特殊系に分類されるスキルで、理由は未だ分からないが、親と子に受け継がれるスキル。


「へぇ、面白いな」

「……なぁ、これも中学の時に習う奴だよな」

「あぁ、本格的に心配になってきた……」


 再び紅蓮と颯が那月心配議論を始めた所で闘技場に二人が現れる。


 奥の段から登るのは、青髪短髪の眼鏡をかけた少年ーー天斗。

 手前の段からはキツネ色の髪を腰まで伸ばした清楚系少女ーーめめ。


 二人の姿を確認して、音淵先生は開始を宣言する。


「第六試合。レディ、スタート!」


「《狐憑》!」


 めめが手を地面に着いてスキルを使う。

 すると、めめの目付きが鋭くなり、髪がふわふわの耳を形作り、フサフサの尻尾が生える。

 地面に着いた手の爪も鋭く伸び、獣のような気配を纏う。


「危なくなったら止めてください……行きます!」

「え?……なっ!《集中》!」


 めめが四肢で地面を蹴り、天斗に近づく。

 天斗もスキルを発動し、対抗する。


「シャア……!」

「ーーーーッ!」


 天斗はめめの体を引き裂くような爪の攻撃を短剣で的確に受け止める。


 《集中》を発動させた天斗の目にはめめの攻撃の全てが読める。

 というより見えているのだ。

 集中により時間の流れが遅くなり、思考時間が延びているため、攻撃に対する適切な対応を選択できる。

 そうやって、めめの攻撃を短剣で捌いていく。


 何度か撃ち合った後、埒が明かないと判断しためめが大きく距離を取る。


「はぁ、はぁ、稲荷さんって意外と積極的なんだね……手加減などしてくれても良いんだよ?」

「………フシャアァァァ……」

「聞こえてない感じだこれ」


 血走った目で天斗を睨みつけるめめ。

 まるで正気を感じられない。

 天斗の考察通り、めめには天斗の声が聞こえていない。

 《狐憑》。その名の通り、その身に狐を降ろすスキルである。

 つまり、今めめの体を動かしているのは、めめではなく狐の霊魂なのだ。

 そして、めめは未熟であるため、元に戻すことも叶わない。

 手加減など出来るはずもないのである。


「フシャア!!」

「うわっ!」


 再度めめの攻撃が開始される。

 今度は先程よりも速く、爪も伸び鋭さが増している。

 天斗も短剣で受け止めてはいるが、いくら強化された木剣と言えど、徐々にその剣身が削られていく。


「くっ……!」


 天斗も短剣で受け止めることは愚策であると分かっているが、動体視力だけで避けられるとも思っていない。

 《集中》が無ければ最初の一撃で終わっていた。

 この攻撃も本来ならば、串刺しにされてお陀仏だったはずだ。

 だが、その頼みの綱ももうそろそろ限界である。


 天斗のスキルは集中力を高める代わりに大量の酸素が必要となる。

 ただでさえ酸素消費が激しいのに、戦闘などという激しい運動で、肺が酸素を制限してしまっているために、意識が朦朧とし始めているのだ。


「…………くそっ……仕方ない」


 よって、天斗の取れる行動はただ一つ。


「降参だ」

「………!第五試合。勝者、稲荷 めめ!」


 降参という言葉を聞き、音淵先生が試合終了を告げる。


「フシャア!!」

「なにっ!?」


 しかし、めめは止まらない。

 いや、止まれないのだ。

 めめの意識は狐の霊魂の後ろに隠れているため、めめはその体を動かせない。

 天斗もそれは分かっていたが、意識が朦朧としていたせいで一瞬反応に遅れてしまった。

 その隙にめめの爪が天斗の肉塊を引き裂こうと振り下ろされる。


「《妨害不音スキルブレイク》」


 次の瞬間、訓練棟内に脳が締め付けられるほどの高音が鳴り響く。


「な、なんだ!?」

「い………ッ!」


 那月たちも思わず、両手で耳を塞ぐ。

 しばらくしてその音が止むと、ヘッドフォンを外しながら闘技場へ登る音淵先生の姿が目に入る。


「全力というのは、己のコントロール出来る最大限の実力だ……バカ」


 倒れて寝ているめめにそう言うと、音淵先生は辺りを見回す。


「じゃあ、天斗……は男だからダメだな。朝日!お前こいつを保健室まで運んでやれ」

「えぇー」

「拒否権は無い」

「ちぇー、それじゃ私行ってくるよ。百花も頑張ってね」


 朝日は桃髪の少女ーー百花に一言言うと、ぶつくさと文句を言いながらめめを担ぎ訓練棟を出ていった。


「なんだったんだ、さっきの……?」


那月が先程の謎の高音を思い返しながら一人呟く。

それに対して、日奏が答えを返す。


「たぶん先生のスキルじゃないかな?」

「あぁ、確かに昨日も似たような事してたっけ」

「でもよ、スキルを無効化するとか……反則すぎる」


 紅蓮が苦笑いを見せると、那月達は目を揃えて先生を見る。

 音淵先生は天斗に下がるように伝えると、次の試合の組み合わせを発表する。


「さて、気を取り直して。次、九九つくも 百花ももか大祓おおはらい みそぎ準備しろ」

本作をお読みいただきありがとうございます。


「面白い!」


「続きが気になる!!」


「頑張れ!!!」



と思って頂けたら


下記の☆☆☆☆☆から評価をよろしくお願いします。


面白かったら★★★★★、まぁまぁじゃね?と思われた方は★☆☆☆☆。


ブックマークもして頂けると本作の励みになります!


また、感想なども思った事を書いて頂けたら私の励みになります!!


何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ