136話 仮面三銃士
「クッソ……何が起きたんだ……」
腹部を押さえて立ち上がった那月が、敵を確認するために顔を上げる。
すると、翔と那月とを結ぶ直線の間に三人の仮面の人物が立っていた。
一人は那月を蹴り飛ばした赤いバツ目の仮面。
二人目はモノクルのようなデザインを青いラインでペイントした仮面。
残す一人は並んで立つ二人よりやや後方に立って那月を見つめる真っ白の仮面。
「何者だお前ら! 翔に何をしやがった!?」
「聞いていた通り、大きな声で叫ぶ子供ですね」
モノクルの仮面がやれやれと肩を竦める。
だが、コホンと咳払いをすると、一歩前に出て丁寧にお辞儀をした。
「私は主君が掲げる三つの正義の一柱──ゲナウ」
「同じく一柱──プレシ」
モノクルの仮面──ゲナウに続いて、バツ目の仮面を被ったプレシも名乗りを上げる。
二人の口上を聞き、那月は白仮面を見たが、彼女は無言のままだった。
那月がゲナウとプレシを睨みつける。
「お前らの名前なんて聞いてねェよ。俺が知りてぇのはお前らがディクトかどうかと、翔に何をしたのかって事だけだ!」
那月が声を張り上げると、プレシが仮面からはみ出た茶色の頭髪を掻き毟る。
「ゴチャゴチャゴチャゴチャうるせぇ野郎だなァ! ……ぶっ殺すぞ」
「やれるもんならやってみやがれ。お前を叩き潰した後で、じっくり話を聞かせてもらうぜ」
二人が交わした視線で火花を散らす。
直後、二人の足が同時に動いた。
「──"ストップ"」
しかし、二人が接触しようとしたその時──白仮面が間に割り入った。
那月が突然現れた白仮面に驚く。
目測を誤った拳が止める間もなく白仮面へ向かっていく。
那月は白仮面が殴り飛ばされる未来を想像した。
だが、その未来は来なかった。
「──え?」
白仮面に当たる直前の位置で彼の拳が止まっていた。
いや、拳だけじゃない。那月の体全体が金縛りにあったように動かないのだ。
「どうなってんだこりゃ!?」
「クソッ放せッ! 放せよォッ!!」
那月が思うように動けないのと同様に白仮面を挟んだ先にいるプレシも二本のナイフを振り下ろす途中のポーズで固まっていた。
けたたましく喚くプレシに白仮面が顔を近づける。
「落ち着きなさいプレシ。我々の目的は黒髪の彼を痛めつけることじゃなく、金髪の彼を保護することでしょう」
「……分かってるよ。……もう落ち着いた。放してくれ」
「ん」
白仮面が右肩の力を抜くと、プレシが拘束から解放される。
プレシは首を動かした後、那月を睨んで後ろに下がった。
プレシがゲナウと合流したのを見て、那月は白仮面に声をかける。
「この金縛りはあんたのだな? 俺のも外してくれねぇか?」
「それは出来ない。キミを放したら、キミは翔君を助けに言ってしまうでしょう?」
「だから放せって言ってんだよッ!」
「──ッ」
那月がスキルを発動させて、白仮面の体を重くする。
彼女は声を上げなかったが、苦しんでいるのは解けかけた金縛りでよくわかった。
那月がニヤリと笑って声を上げる。
「今だ! 紅蓮!!」
「──『飛蘭鳳凰』!!」
那月の声に呼応して客席から紅蓮が飛び出してくる。
彼は魔剣を構えると、渾身の必殺技を振り下ろした。
「これはまずいな」
迫り来る魔炎を纏った大剣を見て、白仮面がごちる。
彼女はスキルを解除すると、得意の瞬間移動で紅蓮の技を回避した。
金縛りから解放それた那月が後ろに退き、紅蓮と合流する。
「助けに来るのが遅いんじゃないの?」
「客を避難させてたんだよ。お前こそ、敵の一人も倒せてないってどうなんだよ!」
合流して早々に口喧嘩を始める二人。
そこに新たに数人の影が合流する。
「お前たち、喧嘩は後にしろ。敵の前だぞ」
「そうだよ。それに何やら翔くんが危ないみたいだしね」
「ったく、めんどーなことになってきたな」
「先生! 日奏! 春馬も!」
那月の横に並ぶのは音淵先生と日奏、春馬、それから続々とA組、B組の生徒が集まる。
音淵先生が那月を一瞥する。
「本来ならばこれは教師と上級生で対応する事案だが、生憎戦闘向きの教師と上級生は外の応援に向かっている」
「外で何かあったんすか?」
「A級やS級のモンスターが地上に突如出現したんだ。おかげで現在弾二四市は大混乱だ」
「地上にモンスター!? 迷宮崩壊?」
「いいや。違う。恐らくだが、これもあの白い仮面を被ったディクトの仕業だろう」
音淵先生が白仮面を睨みつける。
当の本人は仮面をしていて表情は汲めないが、憮然として佇んでいた。
「というわけで、この場は俺と数名の教員。そしてお前たち一年生でどうにかするぞ」
「んなこた、言われなくてもやってやる!!」
那月が手のひらに拳を叩きつける。
パチンっといい音が闘技場の中に響き渡った。
敵は脅威の知れないディクトが三人。人質を取られ、容易に手出しは出来ない。
対して那月の陣営はプレイヤーが数名と、プレイヤー見習いが多数。
戦況は圧倒的に敵側が有利である。
それでも──
「勝って、翔を助け出す。──行くぞ!!」
那月の気合いの入った掛け声と共に戦闘は開始された。
そしてこれより弾二四市の歴史上最も最悪な事件が幕を開ける。
激動の中、ここで第五章は終了です。
そしてここから波乱の第六章が始まります。
読者の皆様は勢いに振り落とされないよう注意し、最後まで見てくださいますようお願いします。
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