128話 真呈霊鳥
お久しぶりです。
ギリ生きてます。
「《真呈霊鳥》!!」
木菟がスキルを発動させる。
すると彼の体がドクンッと跳ね、直後に彼の体を真っ白の羽毛が覆い隠した。
球形に彼を覆う羽毛の塊。それは不意に宙に浮かぶと、しばらくそこに静止した。
いったい何が起こるのだろう。観客たちはそれをじっと見つめる。
紅蓮ですら、警戒という意味でそれを見つめていた。
羽毛の塊がごぞごぞと動き出す。
まるで孵る直前の卵のように。
そして、羽毛の塊が白い光を放った。
同時に羽毛が四方八方へ散っていく。
中からは一人の少年が目を覚ました。
「……『フォルム──霊鳥ミミズク』……」
厳かな声でそう言った木菟の姿はまさに神聖の一言だった。
白い羽毛で全身を覆い、背中から黒い斑点を模様とした真っ白な羽を二対生やす。
金色の瞳を爛々と輝かせ、その上から生える黒い耳羽は背中を渡り、腰の辺りまで伸びている。
パステルカラーの虹色の尾羽をたゆたわせる木菟はまさに霊鳥という名に相応しい相貌をしていた。
神々しい見た目で浮遊する男を仰ぎ、紅蓮は口角を上げて毒づいた。
「ここで覚醒すんのかよ……!」
紅蓮がスキルの覚醒を初めて目にしたのは氷華の時だ。
彼女の覚醒したスキルを見た瞬間、全身の毛が逆だったのを覚えている。
そして、今の木菟を見た瞬間──あの時と同じ感覚が全身を駆け巡ったのだ。
臆病者から一転──紅蓮の中で木菟の評価が姫華と同等かそれ以上に跳ね上がった。
それに伴って紅蓮は大剣を真正面に構えた。
そして、ありったけの魔力を魔剣に注ぎ込む。
「感謝しろよ魔剣……今日は大盤振る舞いだ──『魔剣解放──死紫焔魔』!!」
紅蓮が叫ぶと魔剣が歓喜に喉を震わせる。
柄から切っ先にかけて真っ赤な炎が包み込む。そして、その炎はたちまちの内に紫の焔へと姿を変じた。
地獄の炎を纏った大剣を木菟の方へと向けた紅蓮は微かに顎を引いた。
「俺の準備が終わるまで待ってたのか?」
「うん。僕と彼女が話している時に待ってもらったからね」
「義理がてぇな……けんど、それが命取りになっても後悔すんなよ?」
「大丈夫。負けることはこれっぽっちも考えてない!」
木菟が一度大きく飛翔した。
それに伴って紅蓮も静かに剣を構えた。
両者の間がだんだんと開いていき、ついには互いに相手を爪楊枝くらいの大きさに捉える。
「…………」
「…………」
切迫した戦場。
この場の主導権は空を支配する木菟にある。故に紅蓮は木菟を待つ。
例え彼が持久戦に持ち込んだとしても、互いの魔力消費スピードからして紅蓮の勝ちは必然だ。
覚醒とはそれだけ魔力を喰うのだ。
だからこそ、紅蓮は木菟が襲ってくることを信じて疑わなかった。
「行くよ!!」
「来い!!」
上空から木菟の声が聞こえてきて、紅蓮が返す。
直後、木菟が翼を羽ばたかせて紅蓮めがけて超速落下する。
それを受けて紅蓮は大剣を下段に構え、上空を睨む。
互いの視線が交錯する。
刹那──二人の中に相手の思考が流れ込む。
そして理解する。
相手も自分と同じことを考えているのだという事に。
即ち──一撃決着。
「いいぜ! それでこそ決闘だ!!」
「────っ!!」
紅蓮が興奮した口調で叫ぶ。
木菟は全身を一本の槍のようにし、ただ一心不乱に紅蓮を目掛けて直進していく。
二人の距離が瞬く間に縮んでいき、ついに二人が次の動きに転じた。
「はぁぁぁ!! ──『堕弔鴑鸝鷚』!!」
木菟は両翼を体にピッタリくっつけると、体を回転させ、落下。
その姿はまさにモグラのように、ドリルのように。
ただひたすらに目標物を穿かんと落下する。
「うぉぉぉ!! ──『羅昇閃』!!」
対する紅蓮は紫の炎を纏う刀を下段から振り上げた。
堕ちる翼と、昇る刀。
二つの交差は一瞬で、また──静かだった。
「…………」
「…………」
地面に膝を着いて着地した木菟。
天に白煙を上げる魔剣を掲げる紅蓮。
両者の静止に、会場は沈黙をもって見守った。
そして刹那──勝敗は傾いた。
「……グハァッ!!」
昇る血飛沫。
堕ちる身体。
空中に舞った"羽"は静かに地面に横になった。
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