114話 マッパ・イズ・マッチョ
パンチ、パンチ、パンチ、パンチ、パンチ、パンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチーーーーーーーーーーーーーー
無限のラッシュが息付く暇もなく翔を襲う。翔はその攻撃に合わせて《雷電》を放ち、何とか威力を抑えているが、それでも成人男性以上の膂力が翔に襲いかかる。
「さあさあさあさあ!もっとワタクシを楽しませてくださいまし!!」
ミーネの喜色に飾られた声が翔の耳朶に響いてくる。
翔は声も出せないというのに、ミーネにはその余裕があるのだ。
その事が翔をイラつかせる。
「ーーッ!……『俊雷』!!」
「ーーおっと。……それはもう見ましたわよ!!」
通常の雷に混じえて、速度の速い雷を不意打ちしたが、ミーネはそれを易々と躱してのける。
その上で、彼女の打撃が数を増す。
「ほらほら、早くしませんと手数で負かしますわよ!」
「ーーチッ」
翔は段々と捌ききれなくなってきている攻撃に対し、舌打ちを打った。
ーーまさかこんな強敵が潜んでいたなんて……!
翔は内心でそう愚痴をついた。
翔が音淵先生に聞いた情報では特待生として入学した生徒の中に女子は氷華しかいないと聞かされていた。
だが、どうだろう。目の前の彼女は明らかに特待生足り得る実力を兼ね備えているではないか。
それは翔と互角に渡り合っていることからもわかる通りだ。
「お前、入試では力を隠していたのか?」
「入試?……あぁ、入試ですか。いえ、もちろん全力でしたわ。でも、入試の時はジャージの着用が必須でしたので、そう言う意味では全力ではありませんわね。まぁ、ジャージの下に何も着ないという奥の手を使いましたが、それでも特待生並の力は出せませんでしたわ」
その説明を聞き、翔はどうしてミーネが特待生では無いのか納得した。
そして、疑問が浮かぶ。
「確かこの体育祭もジャージの着用は必須の筈だ。なぜお前はそれを脱いだ?」
「あら、お忘れですの?あなたが吹き飛ばしたのではないですか。ワタクシのジャージを」
「あ……」
ミーネの攻撃が凄すぎて、翔はその事を失念していた。
つまり、このピンチの原因は翔にあるということだ。
そう理解した翔は一度背後に大きく退き、ミーネとの距離を取った。
その程度の距離、ミーネなら一足で詰められる距離だったが、ミーネはそれをしなかった。
両者が距離を開けたまま暫し制止する。
翔が荒れた呼吸を肩で整え、垂れる汗を拳で拭う。
そして、ジャージの下で火照る身体を冷やすために、彼はジャージの上を脱いだ。
「やっと、真っ裸の魅力に気づいてくださいましたか?」
「いや、ただ暑かっただけだ」
「そうですか、残念ですわ」
本気で悔しそうにするミーネを見て、彼女が如何に全裸というものに固執するのかが分かる。
翔は心底理解出来ないとばかりに首を傾げた。
「一つ問いたい。お前に羞恥心というものは無いのか?」
これは戦いだ。戦いに闘志以外の感情があるのか、と問うのは愚問以外の何物でもない。
だが、この問いだけは別だと、翔はそう判断した。
それに対しミーネは何を言ってるか分からない、とばかりに首を傾げた。
「羞恥心。もちろんありますが、それが?」
「なら、どうしてそんな布の少ない服を着られる?」
「……あなた、何を言っていますの?」
翔の言葉にミーネはまるで分からないと首を傾げた。
そして、呆れたように告げる。
「羞恥というものは、つまり恥ずかしいということですのよ?それを踏まえた上で、先程のあなたの質問は変ではありませんくて?」
「……一応聞いておこう。お前は服を脱ぐことに恥じらいはないと?」
「勿論ですわ!!」
翔の問いにミーネはこれ以上ないほど胸を張って見せた。
「そもそも何故全裸が恥ずかしいのですか?家に帰れば服を脱ぐでしょうに」
「は?全裸にはならないだろ」
「え?全裸になりませんの?」
両者が顔を見合わせて困惑した表情を見せる。
それから、ミーネは常識を確認するかのように翔をじっと見つめた。
「だって、お父様が言っていましたのよ?全裸こそ至高の姿であると。外ではしてはいけないけれど、家の中では絶対にその姿でいなければならないと。当然お父様もそうしていて…………翔さんは違うんですの?」
ミーネの質問に翔は何を返したらいいのか分からなかった。
色々とツッコミところがあったが、取り敢えず彼は大きなため息を吐き出した。
「なるほど、よく分かった、あぁ、よく分かったよ」
「!?分かって頂けましたの!?」
「あぁーーお前とその父親がどれだけ変態なのかって事をな」
翔はそう相手を『賞賛』すると、それへ敬意を払って全力の一撃を打ち込むことを決めた。
中腰に構えて、脚は右を前に。
手はまるで腰に刀を備えているかのように、左で鞘を掴んで、右で柄を掴む構えを取った。
「さぁ、これで終わりにしようか」
「よく分かりませんが。受けて立ちますわ!」
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