102話 乙女のライバル
那月の先導の元、百花とめめはトラップに一度も引っかかることなく、中間地点まで来ていた。
「助かったよ〜。私たちだけじゃこんなに早く来られなかった」
「そりゃ良かったが……残念ながら、こっから先はさっぱりなんだよ。ごめんな」
「気にしないでください。ここからは私たちも協力しますから」
「そうだよ!那月くん、怪我したら言ってね。もちろん、めめちゃんも」
「おうよ!」
「頼りにしてますよ、百花ちゃん」
三人はそう言うと、中間地点の二つの分岐のうち左の道に進んだ。
那月曰く、こういうのは進む方向を固定したほうが良いらしい。
「……と、ここまでだ。さっきはこのタイルを踏んだら天井に押し上げられ、大玉に終われ、スタート地点に戻ったんだよ」
「それは……災難でしたね」
「那月くんならその大玉壊せたんじゃない?」
「それが無理だったんだよ。センセ達も容赦ねぇよな」
先生達に愚痴を言って、那月は大きく息を吐いた。
それで気持ちを切り替えると、那月は先へ進もうとする。
「さて、行こうぜ」
「ちょっと待ってください」
「ん?めめ?どした?」
めめに呼び止められ、那月が振り返る。
「もし良ければ私に先頭を任せてくださいませんか?私ならトラップの位置分かるかもしれないので……」
「おう、そういうことならいいぜ!任せた!」
「あ、ありがとうございます!!」
断られると思っていたのか、明らかに安堵の表情を見せためめが那月と代わって先頭に立つ。
「『限定憑依ーー銀狐』」
スキルを発動させると、めめの鼻先が黒くなり、銀色の耳と、同色の三本の尻尾が生える。
「おぉ!やっぱすげぇな。これ本物なのか?」
まじかでめめの狐化を見た那月がその耳や尻尾を無遠慮に撫で回す。
「……ぁ、那月、くん……くふぅ、んん…………ぁ………………だめぇ…………はひゅん♡」
「ちょ、那月くん!ストップ、ストォォップ!!なんかめめちゃん凄いことなってるから!!」
いやらしい声を上げて膝から崩れためめから那月を引き離すと、二人の間に立つ。
アリクイの威嚇のようなポーズで那月を睨む百花。
「那月くん……そんなにめめちゃんの触り心地良かったの?」
「え?あ、そっか……あれめめを撫で回したことになるのか……?」
「当たり前でしょ!!」
「すみませんでした!!」
百花に叱られ、那月が謝る。
すると、頬を赤く染め、息を切らしためめが立ち上がる。
心做しか汗ばんで、ジャージが体のラインを強調していなくもないが、それは百花の気のせいだろう。
「……はぁ、大丈夫、ですよ。……少し、腰が抜けてしまっただけですから…………」
「めめちゃん、ほんとに大丈夫?気持ち悪かったら言ってね」
「えぇ、気持ち悪くはありませんでした。というかむしろ…………きもちよかった…………みたいな」
最後に行くにつれ小さくなっていくめめの声。反比例するようにめめの顔が赤くなる。
「え?なんか言った?」
「いえいえ!なんでもありません!!はい!」
「そうか?それならいいんだが……」
顔をりんごのようにして手を振るめめに、那月はそれ以上追及はしなかった。
百花だけが何かを感じ取り警戒の体勢を取っているが、今は関係の無い話だ。
「こほん……それでは行きましょう。トラップの匂いはもう覚えましたので」
めめが先に進む。それに続き、百花、那月の順について行く。
「そこトラップです。あ、そっちの壁も」
めめの指示通りにトラップを避けて進んでいく。
一応試しにめめが言った所を押してみると、本当にトラップが発動した。
「しかし、すげぇな。俺も鼻が聞くほうだけど、何も匂いなんかしねぇぞ」
「確かに那月くんは私が晩御飯の準備を始めると直ぐにやってきますね」
「あれは腹が減ってるからで……それにめめの料理うめぇから早く食いたいんだよ」
「ふふ……そう言って貰えると嬉しいです。まぁ、鼻が良いのはスキルのお陰で、普通の私よりは那月くんの方が鼻はいいですよ」
そんな二人の会話を間で聞いていた百花は次第に頬を膨らませていった。
「ねぇ、めめちゃん。今度私にも料理教えてよ」
「へ?……えぇ、まぁ、いいですよ。何にします?」
「そうだねぇ、男の子の胃袋を掴めるような料理かな?」
「男の子、ですか?…………あ、ごめんなさい。私、そうとは知らず……」
何かに気づいためめが慌てて謝る。
だが、百花は気にしないとばかりに笑みを見せた。
「いやいや、気にしないで。私も負けないから」
「いえ、私は…………」
「ん?」
「いえ、なんでもないです」
百花に何を言っても無駄だと悟っためめはそれ以上何も言わなかった。
それからは終始無言の移動となり、ときおりめめがトラップの位置を教えるのみとなってしまった。
だが、幸か不幸か、お陰様で無事ゴールに着くことが出来、那月たち三人は一階へと階段を登っていった。
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