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99話 開会式

「ヘイヘイヘイ!!ハローミジンコ、ヘローアオミドロ!!祭りといえばこの男ーー羽攘 実だぜ!!テンションマックスかァァァ???…………おいおい、何だこの空気。何で君たちバチバチなの?祭りだよ?もうちょいソフトに行こうよ??」


 羽攘先生が言う通り、グラウンドに設置された壇の前にそれぞれ二列に並んだA組とB組の間には目に見えて火花が散っていた。


 弾二四高校の体育祭はその内容上、例年両クラスとも相手クラスに大なり小なりの敵対心を抱いている。


 しかし、今年のは別格だ。

 敵対心、というかもはや敵愾心、ともすれば殺意とも言い換えられる気配が互いに漂わせているのだ。


 これには何かと盛り上げようとする羽攘先生がもっとクールに行こうと言う始末。

 だが、彼らの間に交わされた契約を知っているものからすれば、


「無理だよな……」


 音淵先生が教師席から眺めて呟いた。

 彼はその事をつい十分前に知らされた。

 B組担任の葉枯はがらし先生に体育祭の事を聞かれ、多少時間遅れに生徒たちの元に行ってみると、何故かテンションダダ下がり、殺意モリモリの那月達を見つけたのだ。


 そして、その理由を聞いて卒倒しかけた。

 無理もないだろう。A組は良くも悪くも実戦を経験している。

 ピンチをチャンスに変える力があるが、何より基礎が足りていない。


 対するB組は実戦こそ経験していないが、基礎は必要以上に積んでいる。

 その強みはたかがイベントの体育祭で活かされるものだ。


 足場の不安定な地に立った巨塔と、基盤のしっかりした地に築かれた城塞。

 どちらが勝つか、その行方は知らないが、一つ言えるのは、


「バカ野郎ども……」


 その罵倒だけだ。


 ▼


 羽攘先生はとうとう面倒くさくなったのだろう。せっかく燃えているならさっさと初めてしまおうと、校長先生にマイクを譲る。


 相も変わらずひょろ長な緋袴校長は登壇するとマイクを口元に持ってきた。


「ふむ……まぁ、まず落ち着こうか」


 校長の声は落ち着いていた。人の心にしみじみと響く慈愛の声。

 それを聞いた生徒たちの間の空気が僅かながら緩和する。

 それを見て校長は満足気に頷いた。


「体育祭だ。生徒達が互いに競い合うイベントだからね、そのような空気になるのは分かる。だが、これはあくまでイベントだ。もっとも重視する事は競うより、勝つより、負けるより……その他全ての何より、第一に重視するのは楽しむことだ」


 校長はそこで一度言葉を区切ると、厳かに告げた。


「高校生活三回しかない体育祭。心の底から楽しみたまえ。私は是非、君たちのそういう姿の中に、未来のプレイヤーを見たい。……以上だ」


 一礼すると、校長は壇を降りた。


 羽攘先生がマイクを受け取り、開会式を続ける。


「えー、じゃあ続いて選手宣誓。一年A組代表、稲荷めめ」

「はい!」


 めめが列から抜けると、前の壇に歩いていく。

 そして、その壇に登ると、マイクの前で息を吸った。

 そして、大きく吐くと、目を見開いた。


「宣誓!私達は、この青空の元、プレイヤーシップに則り、正々堂々とスキルを用いた試合をすることをここに誓います!!」


 拍手喝采。

 それを受けながらめめは一度お辞儀をすると、そのまま降壇し、列に戻った。


 それを見送って、羽攘先生はむず痒そうに次を告げた。


「以上をもって、第五回体育祭開会式を終了します」


 そして、息を大きく吐くと、満を持して大きな声を発した。


「んじゃあ!!早速だが、第一種目を始めようか!!!!」


 休む暇も与えずに、羽攘先生がそう叫ぶ。

 その言葉に再び生徒たちの間に緊張が走った。


 は羽攘先生がリモコンで何かを操作すると、空中から無数の石が降ってくる。


 それは晶石のようなもので、全て形がバラバラだ。

 色は青色で、中で何かが渦巻いている。


 全員がそれを拾うのと同時、壇の上のスクリーンが光った。


 全員がそれを注視して、注目して、そしてーー首を傾げた。


 そんな事を気にせずに、羽攘先生はマイクに叫んだ。


「第一種目はァァ!!ーー『障害物競走』だ!!!!」


 同時、那月達が手に取った晶石が青い光を放ち、それが消えた時、そこに那月達の姿はなかった。

本作をお読みいただきありがとうございます。


「面白い!」


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「頑張れ!!!」



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