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ある日、姉さんは魔王を拾ってきた。

作者: かりーむ

 姉さんはよく色々なものを拾ってくる人だった。


 川辺に落ちた水切りに最適な小石とか。土に中に埋まっていた錆びたブロードソードとか。

 

 大抵はガラクタだし、酷いときは生き物を拾ってくることもあった。


 そして、その世話をするのはいつもぼくなのだ。


 今日も姉さんは生き物を拾ってきた。



 ―――ボロ布を纏った15歳くらいの女の子だった。髪は白く、肌も白い。目はルビーの様に真っ赤だ。


「捨ててきなさい」


 面倒を見切れるのは栄養失調の野良猫までだ。流石にこれは10歳の子供にはヘビーすぎる。


「だって可愛かったんだもの!」それは認める。

「すっごく綺麗なわんちゃんでしょ!」

「わんちゃん?」


 僕はここで会話が見合っていないことに気づいた。


 その後、2人(?)きりになった時に聞いてみた。


「きみって犬なの? 人間なの?」


 女の子は口をあんぐり開けた。


「き、き、貴様っ!? 我の真なる姿を見えているのかっ!?」


 なんでも。彼女は昔魔女に呪いをかけられてこうなってしまったらしい。


 ほんとかなぁ、と僕は疑う。彼女の目、かなーり泳いでた。追手とかから逃げるために自分でかけてるんじゃない?


 まあ、いいか。

 とりあえず。リードと首輪を探さなくちゃ。あとお父さんに犬小屋を作ってもらえるようにお願いしてみよう。


 彼女を飼い始めて数日後、やたらキラキラしたお兄さんが街の広場で聞き込みを始めるようになった。お父さんとお母さんは、あの人は勇者さまだよ、と教えてくれた。


 勇者様。1年前に魔王を倒してみんなを救ってくれた凄い人。でも、そんな凄い人がどうしてこんな田舎の街にいるんだろう?


 ララの散歩をしてる時、勇者さまに声をかけられた。

 ちなみにララっていうのは、姉さんが拾った女の子の名前だ。


 ライフィーズラオフレア。


 略してララ。古い言葉で「世界を穿つ黒き流れ星」って意味があるらしい。


 命名は姉さんだ。禄に面倒も見ないのに、命名権だけは主張してきた。


 あと、絶対に犬につける名前じゃないよね。いや、ほんとは犬じゃないんだけどさ。


「ねえ君、こんな顔の女の子を見なかったかな?」


 白い歯を見せながら勇者様が一枚の絵を見せてくる。

 そこにはララの顔が描かれてた。リードの先のララを見ると歯をガチガチ鳴らして目の前の勇者さまに怯えていた。


「いえ、見てないですね」


「そっか。ありがとうね。もし見かけたら教えてね。あと近寄ったりはしないように。危ないからね」


「誰なんですか? そのお姉さん。まさか魔王とか?」


「おっ、正解。なんてね、ふふ秘密だよ」


 なんて会話をしてぼくらは分かれた。


 去り際に、「おっかしいなぁ。魔力はこの街であってるんだけどなぁ」なんてぼやきが聞こえた。



 家に帰ると、ララが言ってきた。


「我は魔王だ―――」と。



 それを聞いてぼくは驚いたけど、まあ、でもいいかとも思った。


 姉さん、楽しそうだし。


 多分、これから色々起こるのだろう。


 でも僕はこの子の飼い主だ。


 残酷な未来でも君と一緒なら。


 「なんとかなるさー」と適当に言いながら僕はフリスビーをぶん投げた。

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