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高嶺の花  完全版  作者: 早川隆
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あとがき  ひとこと、参考文献など

本作は、永禄12年 (1569年)に起こったいわゆる「大内輝弘の乱」を題材にしたフィクションです。


前作「礫」を、事前の自分の想像よりもかなり上首尾で書き終えたのを良いことに、その勢いで、イケメン能役者と美しき姫君との恋とバトル、といった手軽なストーリーを、短くライトに書こうと計画して、いろいろ調べているうちズブズブと沼にハマりました(苦笑)。


本作に関しては、いろいろと悩み、さまざま試行錯誤を繰り返し、いったん別投稿サイトに発表したあとも、あちこち手を入れております。本verは、そうした努力が結実し、まずまず皆様にも見ていただけるレベルのものになったと判断した、現時点での決定版となります。


「礫」同様に、かなりの思い入れのある作品です。完成させられただけで自分としては満足なのですが、もし皆様にもお楽しみいただければ、望外の幸せでございます!




事件そのものや登場人物の知名度が高くないのを良いことに、本作に関しては、あちこち、かなり大胆な設定を入れました。


たとえば、大内輝弘が大内義長に随行して山口に来た事実はございませんし、ましてや、後に敵になる市川局と恋仲だった、などというようなこともございません。なにより、市川元教の父親については、もちろん、完全に作者の与太であり、あくまで小説の設定に過ぎません。この点、どうか誤解なきようお願いいたします。


ただ、二十九章で書いた事件は、だいたい史実です。この、元教の運命こそが、当初はお手軽小説であったはずの、本作の重いテイストを決めました(最後にこんな悲劇が控えているのに、ハッピーエンドになぞ、なりようがございません・・・)。




作中、重要な役を担う左座宗右衛門やおたきといった登場人物は、完全に架空のキャラクターです。両者とも、ちょっとした端役として、思いつきで名前を付け登場させたのですが、いつの間にか作品のキイを握る重要人物に昇格しておりました。こういう、予想外のキャラクターの成長は(計画性のないアマチュアならでは、と叱られそうですがw)、小説を書く上での醍醐味のひとつだと思います。


それ以外の主要登場人物は、だいたい実在です。竺雲恵心は、有名な安国寺恵瓊の師匠にあたる先輩外交僧で、元就在世時には毛利家の京都における外交窓口のような存在でした。また、実際にこの戦いの際、山口に居合わせ、数少ない城兵とともに高嶺城に立て籠もっております。少し架空人物ぽい山内林泉軒も(抜荷をしていたかどうかはともかく)、内藤家出身の富裕な有徳人で、実在の人物です。


物語の背景となる事件や戦乱などは(多少の単純化や脚色はありますが)、史実や、広く受け入れられている解釈を踏むように努力いたしました。当事者一人称で語られる形式であるため、当時起こったさまざまな事件をかなりこまごまと拾わせていただきました。特に前半はいささか冗長な感もあったかと思いますが、なるべくリアリティを持って、読者に作中世界に入っていただきたいという狙いからでございます。




この、一般にはあまり知られていない戦闘についての文献・資料は少なく、筆者が思うに、その詳細はほとんどわかっていないものと思われます。それでも、大内勢数千というのは確かだったらしく(一万という資料もありますが、小説内では六千としました)、また城内の守備兵力がごくわずかだったのも事実のようです。


これだけの圧倒的な兵力差を以てして、なぜ高嶺城が陥ちなかったのか。


執筆の契機は、自分なりの想像で、この謎に迫りたいと思ったからです。そして、早合撃ちと輝弘の逡巡そして精神崩壊という、なんら資料に根拠のない、小説ならではの掟破りのチートモードを用意しました。安易なようですが、これくらいの大胆な設定をしないと、この兵力差による大内勢の不首尾をうまく説明できないと思えたからです。皆様のご意見はいかがでしょうか?




本戦役、ならびに市川局や大内輝弘に関する関連書籍や文献は無いに等しく、また作者は毛利家、大友家に対する関心が昔から深いため、なにも参照しないでもある程度のことは書けてしまうようなオタクです(苦笑)。よって、今回、あらためて参照した資料は極めて少なく、以下程度しかご紹介できません。


前作同様、恒例の調査不足ですが、時間も金もないアマチュア作家である点に免じ、どうかご寛恕願いたく思います。


「戦争の日本史12 西国の合戦」 山本裕樹  吉川弘文館

「戦国合戦詳細地図」 有限会社バウンド編集 インフォレスト

「能」 安田登  新潮新書

「毛利輝元卿伝」 マツノ書店

「安芸毛利氏 (論集 戦国大名と国衆)」 村井良介編  岩田書院

「週間ビジュアル 戦国王21号」  ハーパーコリンズ・ジャパン

「週間ビジュアル 戦国王24号」  ハーパーコリンズ・ジャパン


もしこの周辺の歴史に興味が湧きましたら、ぜひ手にとってみてください。特に、値は張りますが岩田書院の論集は戦国マニアには読み応えがあると思います(山内林泉軒ら、数名の有徳人のことは、このなかの一論文にて初めて知りました)。


もちろん、参考書籍の中から都合の良い部分だけをつまんでおりますので、作中に書かれていることの責はすべて作者にあります。


また、WikipediaやGoogleマップなどを含む、インターネット上の各サイト、ブログなどの情報もあれこれと参照させていただきました。記憶も判然とせずサイト名など特記できないのですが、ここに厚く御礼申し上げます。




長く重いこの作品を、最後までお読みいただき、ありがとうございました!

ご意見やご感想等、いただけたら嬉しいです。


また、もし興味を持っていただけましたら、本作に先んじて書いた、「礫」(ツブテ、と読みます)も、併せて御覧ください。桶狭間合戦に先んじて戦場となった、とある砦に立て籠もる無名の戦士たちの物語です。

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