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第1話「その乙女、異世界で出航する」

乙女らは強く、気高く、美しい

この物語は一人の海賊船の船長である乙女と仲間(かぞく)の物語である


ウィーン、ウィーン、ウィーン!!


騒がしく警告音が鳴り響いていた


ピピピ、ピピピ


この世界における通信デバイス「HFP(ハンズフリーフォン)」から通話が入った


「こちらライラ!船長、準備オッケーだ!」

この乙女はライラ

黒の短髪に褐色の肌の健康的な乙女である


龍音(りおん)だが、こっちも問題ない」

この乙女は龍音

赤い髪に着物を腰まではだけさせ胸にサラシを巻いている


「そうか、お前達!良くやってくれた!この船の舵は俺が取る!星の海賊団出航だ!!」


船は

ゴォーーーー!

と低く重い音を出しながら力強く飛びだった


「くそ!」

後からぞろぞろ集まってきた女兵士達は悔しがり地団駄を踏んでいた


こうして俺の物語は始まった


その乙女エイダ

長く白銀の髪をなびかせて紅く野望に満ちた瞳をしているこの乙女はこの物語の主人公でありこの三人しかいない「星の海賊団船長」でこの異世界で三度目の転生を果していた


「ふぅー」

俺は水蒸気キセルを吹かしていた


俺達はこの世界を占める真海人による帝国「真海帝国」の軍が密かに作製していた軍事豪華客船、名を海の女神「テティス」の名をもつ船「テティス号」を奪ったのだった


始まりの海「始海」


「船長!これで七つの宇宙(うみ)を制覇出来るな」


「そうだな、これで俺達の願いが叶えられるな」


「でも本当に七つ目の宇宙(うみ)なんて存在するのか?今発見されているのは六つ目の宇宙(うみ)まで。まだ誰もその七つ目の宇宙(うみ)を見た者はいない」


「だが、存在して貰わなければ困る、願いの為にな」


「確か「七つ目の宇宙(うみ)に辿り着きし者、願いが叶う」だったな」

「それはそうとエイダ、俺がやった水蒸気キセルは気に入っているみたいだな」


「ああ、龍音がくれた金色に輝くこのキセルは何て言うか俺の好きな星の輝きに似ているからな。それにキセルは昔から好きだったしな」


そう宇宙(うみ)を駆けるテティス号に揺られながらキセルを目を瞑りながら吹いていると俺は最初の前世の記憶が甦ってきた


~エイダの最初の前世、回想~


それは寒い冬の季節、雪がはらはらと降っていた


「ふぅー」

俺は何時もの様にキセルを吹いていた

降りしきる雪はキセルに触れるとその熱で溶けていった


「見つけたぞ!皆!あの盗人を捕らえろ!!」


カンカンカンカン!

侵入者を知らせる鐘の音が響き渡った


俺は今の世界と同じ様に前世は盗みを犯す泥棒だった


「へっへー!お前ら何かに捕まらねぇよ!」


ぞろぞろと見廻りの女達が集まる中、俺は屋根から屋根へと飛び移り金銀財宝や金を奪った


見廻りの女達を撒いた後、俺は辺りを見渡しボロ家に戻った

母親は流行り病で先に逝ってしまい、俺は目の見えない妹と母と同じ流行り病に犯された妹二人を養っていた


盗みは深夜行う為、俺は明け方に家に帰った


妹達を起こさない様に気を遣いながら家に戻ったが妹二人とも泥棒で鍛えたはずなのに何の物音を立ててもいないが起きてくるのだった


「お姉ちゃん、お帰りなさい!」

「お帰り、お姉ちゃん…」


そう言っていつも妹二人とも、俺を出迎えてくれた


舞彩(まい)舞桜(まお)二人ともまだ寝ててもいいんだぞ、特に舞桜、お前は体が悪いんだ、無理をしてはいかないぞ」


そう二人に言って俺は辛い体をで出迎えてくれた舞桜を優しく抱きまた布団へと運んだ


「詩織姉ちゃん、ありがとう。ゴホッゴホッゴホッ」

「ああ、無理はするなよ」

俺はそう答え、舞桜の体を擦った

詩織と言うのはこの世界での俺の名前だ


別に盗みが好きな訳では無い


しかし、俺は大金が必要だった


舞桜の体は全然良くならないしその病気は重く毎日飲む薬は高額だった

それに、最近になって医療が進歩して舞彩の目は治る事が分かった

でもその為には想像を絶する程の金が必要だった


分かっている、悪事に手に染めた金で人を幸せにする事は出来ないという事を…


だが、真面目に働いているだけでは高額な薬代は到底間に合わなかった


悪事に手に染める事はとても辛い事である、心は磨り減り、捕まった時の恐怖、逃げ回る疲労がある


でも、俺は家族を愛していた

二人の妹達を心の底から愛していた

だからどんなに辛い事でも耐えられた

俺が二人を守らなければならないと誓った


「さあ、ご飯でも買いに行こうかな」

「お姉ちゃん、私も行く!」

帰って早々、買い出しに立とうとする俺の袖を舞彩は掴んだ

「じゃあ、舞彩にも荷物持ちを手伝って貰おうかな」

「うん!お姉ちゃんにはいつも助けて貰ってるから私、お姉ちゃんを助けるよ!」

「ありがとな、舞桜、ちょっと買い物に行ってくるな」

「行ってらっしゃい、お姉ちゃん、舞彩、早く帰って来てね…」

「おう!」

俺は舞彩の手をとって一緒にに買い出しに出た


俺と舞彩は買い物をすませ二人並んで手を繋いで帰り道を歩いていた

「お姉ちゃん、沢山買ったね!」

「そうだぞーお前達には沢山食べて元気でいて欲しいからな」

「うん!私、元気でいていっぱいお姉ちゃんの手伝いをするから!」

少し荷物を持つのを手伝てくれている舞彩は笑顔でそう言った

「舞彩は優しいな、お姉ちゃんはうれしいよ」

そう言って俺は舞彩の頭を撫でた

「えへへ」

頭を撫でられた舞彩はとても嬉しそうだった


辛い事があっても二人が元気でいれば俺は幸せだった

ずっと三人一緒に過ごせる日が続けばいいと思っていた


だけど現実はとても残酷で俺にとって災厄な未来が待ち受けていた

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