第八話 Another view「出雲霧命」
私は父上に呼ばれ父上の部屋に向かっている。
しかし、お祭りもないし、かと言ってこれといった仕事もない。
もしかして新しい任務?っと首を傾げながら私は父上の部屋の前につく。
「父上。入りますよ。」
「入ってきなさい。」
返事をもらい父上の部屋に入る。
部屋の中の父上はいつもより厳しめの顔をしていた。恐らくこれは...
「それでだ。話というのは。新しい住人がこの五兎に来る。その者が獣かどうか判断して欲しい。」
やっぱり任務のことだった。私は無言で頷く。
「どうした?なにか都合が悪かったか?」
今度は逆に首を横に振る。
だけど私は分かっていた。
少し期待する気持ちがあったと共に、こうなる事を予想していた事を。
私は結局愛されていない。
それ故に”獣”に堕ちた。
「受けてくれるなら助かるよ、霧命。それと共に”十種姫”としてしっかり振る舞うのだぞ。」
父上のその言葉が私の傷跡を抉る。
深く、深く。より深くに。
言葉という釘を打ち付けられる。
悪口でもなく、尊敬を込められたその言葉は私を蝕んでいく毒の様なものだった。
「あぁ、忘れていたこれが対象の資料だ、持っていけ。」
父上からその資料を受け取る。
その者の名は雪夜。祭川雪夜という。
私より少し背の高い、茶髪の男の子であった。
だけど、それよりも私の目を奪ったのは。
異様にも赤く見えるその瞳であった。