第一話 日常
鳴り響く携帯のアラームに目を覚ます。
窓からはカーテンの隙間を縫い、太陽の光が差し込む。
あぁ、また一年が始まったようだ。
学校の事一年ではなく、まだ冬の寒さが残る元旦。
俺は憂鬱になりながらもベットから体を起こす。
服を着替え、ベットを整頓して部屋を出る。
そして顔を洗うという普段通りの、なんら変わらない行動を繰り返す。
どこか物足りない、そう思ってしまう。
そのまま顔を洗い終えて次はリビングに入る。
そこには両親が朝食を取っていた。
「雪夜、おはよう。今ご飯持ってくるから待っててね。」
母がそう言い残し席を立つ。
父はこちらを少し見ただけですぐに食事に目線を戻した。
そんな仕草に寂しくなることもない。
それが自然だからだ。俺がそうさせてしまったからだ。
「ごちそうさま。」
食事を終えて俺はその場所に居られなくなり自分の部屋に戻る。
そしてベットに寝転がりながら携帯を眺める。
リーニヤのグループでは今日も他愛ない話が途切れ途切れながらも続けられている。
俺もそこにただただ相づちを打つかのように参加する。
『そういや、皆知ってる?五兎っていう温泉街なんだけどさ、今そこが結構バズってるの』
『へー、そうなんだ。なんか目玉でもあるの?』
『それが・・・』
今日は知らない観光地の話が盛り上がっているようだ。
ただ『凄い』や『いいな』等の返信のみをして興味がありげに動いてく。
そんな中、俺の個人チャットの方にメッセージが届いた。
『雪夜、お前来週の休み空いてる?』
『空いてるけど、どうした?』
『いや、今度何人か誘って桃鏡に行こうっていう話が出てな。行くんなら来るか?』
『行かせてもらうよ。』
丁度いい、服でも買い足しておこうか。