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雪獣は何故に人を思ふ  作者: 天野最中
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第十四話 新しき朝

 目が覚めると縁側ではなく、自分の部屋の布団に寝ていた。

先程までの出来事は夢だったのだろうか。

だが、布団の上で丸まっている温かいモノがそれを現実だと俺に告げる。

上半身を起こして布団の上を見てみる。

それは昨日俺をあの世界に招待した黒い兎だった。

確か朏っていう。

俺が起きたのに気づいたのか分からないが耳を立ててこちらを見上げてくる。

撫でてやると目を瞑り気持ちよさそうに受け入れてくれている。

そんな時に扉を叩く音が部屋に広がる。


「雪夜君。ご飯の準備は出来てるから早く来てくださいね。」


「分かりました。」


彰人さんにそう返して俺は身支度をすませる。

そういえばこいつどうすればいいんだろうか。

とりあえず腕に抱えて食堂に向かうことにした。


「ゆ、雪夜君。その兎どうしたんだい?」


「その、朝起きたら布団の上に居ました。」


「あれ?おかしいな。基本庭までは入れるんだけど、中までは入れてないんだよね。一体何処から入ったんだろう。まぁ、雪夜君に懐いてる見たいだからいいんだけど。ご飯あげたら返してあげてね。」


「分かりました。」


多分離しても着いてくるんだろうけど。

俺は朝食を食べながら隣の椅子の上で飯を食っている朏を見てみる。

これが、この街を守っている兎か。

こういう姿を見ているとそうは見えないんだよな、ただの兎にしか。

この兎が告げるのは昨日の事が夢ではない事。

そしてもう一つ。俺が危険な『獣』であることだ。

多分この兎は俺の監視役という所だろう。

月詠もああはいうが何処かで俺を信用しきれていないということなのだろうか。


「あぁ、そうだ。雪夜君に言い忘れてたんだけどね。今日から二年程この宿に滞在される方が来るから。長い付き合いになるだろうから挨拶をしておくようにね。」


「はい、わかりました。」


俺はその挨拶の後に御馳走さまと付け加えて、席を立つ。

今日は町長に会いに行く日。

まぁ、この地に来た人は必ず挨拶しに行くのが決まりだそうだ。

そのうえ少し広い街といえど都会からはかなり離れている。

この街で友好関係を気づけば助け合いが出来る。

そう考えたら普通だろう。

俺は部屋に戻り、鞄をとり外に向かう。

相変わらずついてくる朏を抱えあげて肩の上に乗せる。

少し落ちそうになるがなんとかしがみついている。


「落ちるなよ。こうしないとお前がしんどいだろ?」


そう言い聞かせて俺は玄関を開けて外に出る。

さっ、正真正銘新しい人生だ。

過去に向き会えてはいないが俺は後悔はしていない。

これから取り戻していけばいい。俺はそう胸に誓い町長宅へと歩みだした。


時同じく雪夜の元クラスメイトの置かれている携帯が通知音を誰もいない部屋に響き渡らせる。

その画面には一つのやり取りが映し出される。


『もうお前らの言いなりにはならない。もしそっちに帰って何をしようが俺は抗う。』


『は?何言ってんの?こっちに帰ってきたらお前はただの奴隷だ。』


『そうなったら容赦なくお前らを襲えるな。』


『祭川雪夜が退出しました。』


これがまた一つ、彼が進みだした証拠となるのだろう。

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