『始まり』 前編
序章「始まり」 前編
突然だが、皆さんはインターネットはどの様に使っていますか?
SNS?
オンラインゲーム?
ニュースや調べもの?
…成る程。え?俺は何に使ってるかって?それは…インターネット配信。インターネットを通じて日本中の人々に見てもらっている。
これはインターネットで活動している、『配信者』である、俺の物語。まぁ、力まずに気軽に見て行って欲しい。
キーンコーンカーンコーン!
チャイムの音がなる。下校時間の合図だ。廊下から窓を覗く。みんな下校していく。今日で一年生は終わり…春休みが入ったら二年生というわけだ。何か変わるかと聞かれたら、特に変わらないのだろう。強いて言えば過ごす環境が変わるくらいだろうか。
クラス替えだとか先生が変わるだとか…まぁ俺はあまり気にしないが。
そんなこんなで下校する。え?友達と帰らないのかって?そんな友達は俺にはいない。そもそも友達と呼べる存在がいない。それには深いー理由があって…。
まぁ、俺が言いたいのは『関わりたいけど関われない』というわけでは無いと言う事だ。『関わりたくないから関わらない』というのが正解。
俺の通ってる学校、つまり上橋高校はこの街、長多橋では上の方にある。上にあるから上橋高校らしい…単純すぎないかと思ったことは何度も。
俺の家から上橋高校は電車で25分くらいだ。今日も長多橋駅で電車に乗って帰る。
長多橋…この街が正直俺は好きだった。
「…ああ!それ俺だから!」
「は?嘘だろ?」
「いやまじだって!まじまじ!」
電車を待っている間、二人の学生の話し声が聞こえてくる。制服を見る限り上橋高校の生徒では無いようだが。
「本当に俺new meで生放送やってるんだって!」
「嘘だろ?だってお前の顔見た事無いし名前すら聞いたことないぞ」
「そりゃそうさ!顔は出して無いからな!それに俺は最近有名になったルーキーだからな!」
「へーそうかいそうかい」
それを聞いて適当に流すもう一人の学生。
「信じてないだろ!」
どうやらnew meの話らしい。new meとは今流行りのネットサービスだ。このサービスの魅力的な点は自由度が高いというところだ。携帯やパソコンさえあれば簡単にできる。このサービスの魅力は、人との交流、商品の売買、創作物の投稿、生放送などと幅広いサービスが提供されている。そして、創作物、生放送これらを行っている人達を『配信者』と呼ぶ。学生だけじゃなく、大人にも人気だ。
「じゃ俺これに乗るから」
そう言って、流していた学生は電車に乗り、行ってしまい金髪のが学生だけがその場に残った。
「ちょっ!なんだよそれ!!」
生放送や創作は趣味でやってる奴もいれば仕事でやってる奴もいる。有名な奴はnew meでも話題になるし今じゃ高校なんかでも普通に話題に出る。今じゃテレビよりも注目されているサービスだ。まぁ有名な奴だったらの話だが。金髪のあの学生も趣味でやってる奴だろう。
「本当にやってんのに!アザルコレクターって名前でやってるつーの!」
アザルコレクター…ハンドルネームでやっているのか。new meは本名でやってる奴ハンドルネームでやってる奴がいる。
ハンドルネームでやってる奴は普段の自分とは違う、または普段の自分には出来ない事を配信上で見てもらうためにやってる。元々new meは『新しい 自分に』というのをコンセプトに出来たらしいから間違っては無い。
今、目の前でやってる金髪の学生もハンドルネームでやってる以上どちらかに当てはまるだろう。アザルコレクター…調べてみるか。
そう思い、スマホで調べてみる事にした。アザルコレクター。検索したら一発で出てきた。new meでの月間生放送カテゴリーのランキングでは、一度乗ったことある配信者だ。配信内容は漫画のレビューやゲームの実況プレイなど様々な事をやっていた。が、ハンドルネームで活動してる奴は基本身バレつまり、自分の正体を伏せるために使う物だが…ましてやランキングに載るくらいの配信者だ。
(…はぁ…俺もお人好しじゃないか?)
そう思いながら俺は席を立ち、アザルコレクターとすれ違い様に
「おい、本当にアザルコレクターならあまり表に出さない方いいと思うぞ」
と忠告してやった。すぐ俺はその場を去るつもりだったが、金髪の学生がそうはさせてくれなかった。
「え!俺の事知ってるの!?」
「まぁ…一応」
さっき知ったんだけどな。
「そっか〜。俺も有名になっちまったなぁ」
と腕を組んでうんうん、と頷きながらニヤニヤしている。
「そりゃランキングに載っているくらいだし知ってる奴もいるんじゃないか?」
「え!そうなのか!?」
と彼は驚いた表情を浮かべた。どうやらランキングのことを知らない様子だ。
「知らずにやってたのか…?」
「ああ!俺あんまりそういうの気にしないからな!」
と自慢げに彼は言った。こいつ生放送をランキングに載るくらいやっているのに何も知らないのかと呆れてしまった。
「とりあえず忠告はしたからな。それじゃ」
これ以上付き合うのも馬鹿らしくなり俺は背を向けようとした…その時、
「ちょっ待てよ!忠告してくれたお礼をさせてくれ!」
俺の肩をアザルコレクターは掴み、そう訴えてきた。
「いいよお礼なんて。別に気にしないでくれ」
そう言って肩に乗っけてた手を払う。
「そんな事言わないでさ!な?な?」
今度は両手で俺の肩をがっしり掴み、揺らす。声もかなり大きくなって電車を待っている人の目線が痛い。目立つのは嫌いじゃないがこんな目立ち方はごめんだ。
「分かった!分かったから静かにしろ!」
俺は声を荒げない様にそう言ってアザルコレクターを落ち着かせた。
お礼を受けるため適当に寄り道することになった。全く…なんでこんな事に。こうなったらちゃんとお礼は受けよう。
初作品なので暖かい目で見てくださると幸いです(笑)