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第5話:生徒会長と学園巡り

 カーテンが開けっぱなしの窓から祐の部屋に容赦なく朝日が差し込んでくる。祐は幸せそうな顔をして熟睡している。ドアが叩かれても祐は全く気づかなかった。


「……まだ寝ているのかしら」


 再びドアが叩かれたが、それでも祐は起きなかった。しばらくしてドアのロックが外れる音がしてドアが開けられた。入ってきたのは夏穂だった。祐の部屋を見たとき若干動きが止まったが、祐の体を揺らした。


「起きなさい、学園を案内するわ」

「待って……くれよ。君を探しているんだよ……待って」

「寝言? 誰か探しているのかしら」

「ん……」


 祐はのんびりと起き上がり夏穂の顔を見た。


「……!! 夏穂っ!」

「そうよ、おはよう」


 目の前に夏穂がいる現状を認識して、祐は初めて自分が寝坊していることを理解した。


「す、すみません! 寝坊しちゃったみたいで」

「いいのよ、私も詳しい時間は報告していなかったから。それにまだ朝の八時よ。普段の日なら遅刻だけど今日は休みよ」


 祐は目覚まし時計を確認すると確かに夏穂の言っている通り、時計の針は八時を指していた。祐は適当に服を掴むと洗面所に駆け込む。

 その間に夏穂は部屋の中を軽く見回した。部屋の中は裕福とはかけ離れたものしか置いていなかったが、夏穂にとっては新鮮なものばかりだった。しかも祐はきれいに整頓しているため、見映えも良い。


「すみません、遅れました」

「そうね。ここから近い場所って言ったら校舎かしら。その前に制服を渡しておくわ。バンダナも」


 制服を受け取った祐は左腕にバンダナを巻き付けた。

 聖貴学園では学園内を歩くときは原則として制服となっているが休日は私服でも構わない。そのため休日は主人コースの生徒にバンダナ着用の義務はない。しかし、バンダナを付けていないと夏穂の従者に間違えられてしまうと思った祐はバンダナを着用することにした。祐は手荷物は特に無かったので財布とスマホをポケットの中に入れて玄関で靴に履き替えた。

 聖貴学園の主人コースの生徒は指定の靴は存在しない。基本的に自由である。けれど体育の授業は指定された靴を使うことになる。逆に従者コースの生徒は部屋着と下着以外は、全て学校指定の物を着用することになっている。その費用は殆ど学園側が受け持っているため、従者コースの生徒に負担がかかるケースは無い。

 ロビーに出ると既に何人かの生徒が他の生徒と話していた。


「生徒会長、おはようございます。今日もお元気そうで何よりですわ」


 夏穂は微笑むこともなく軽く手を挙げるだけだった。逆にテンプレのような言葉使いに若干、引きそうになった祐だが冷静さを装った。そして軽く会釈をして夏穂の後に付いていった。やはり、祐の予想通り夏穂の従者だと勘違いをしている生徒がチラホラといた。


「なかなか、注目を浴びているわね」

「それはそうでしょうね。生徒の中のトップと見ず知らずの男、しかも従者コースの白いバンダナじゃなくて緑色のバンダナを巻いているんだからな」

「そうね。確かに今までに、こんなことはなかったわね」


 夏穂の言う通り、聖貴学園成立から今まで主人コースに転入してきた生徒はいなかった。今回は聖貴学園の初めての試みだった。

 損なことを話しているうちに校舎の前に来た。規模は普通の学校の校舎より多少は大きいが見た目は大体同じである。


「ここが校舎、この学園の中心ね。窓ガラスは全て現在の技術の最高品を使用しているわ」


 聖貴学園の校舎には二つの入り口がある。まず、正門のロータリーの方から見て正面にあるのが一つ目の入り口。主に主人が見つかっていない従者コースの生徒が使用するが、勿論主人コースの生徒も使うことがある。

 二つ目は校舎の裏に地下へと続く道とエレベーターがある。聖貴学園の地下には線路が敷かれている。基本的に従者コースの生徒は使わないが、主人と一緒に乗ることは珍しくない。


「移動に関しては優秀だな、この学園」

「そうね、移動に関することで困ったことは今のところ無いわ。勿論、自殺防止の措置も取られているから」


 校舎の一階は職員室や学園長室、二階以降クラスルームになっている。夏穂と祐のクラスは三階ある。


「それから、ここから見えている建物が特殊棟」


 特殊棟は簡単に言ってしまえば家庭科室や音楽室といったクラスルーム以外の教室が入っている建物である。勿論地下鉄でも行けなくはないが、校舎と繋がっているため大体の生徒が校舎から直接向かうことが多い。


「何て言うか……建物が多いですね」

「そんなことはないわ」


 そう言うと夏穂は図書館に向かった。図書館までは歩いても行ける距離なので地下鉄は使わないで徒歩で向かった。

 実際、図書館までは歩いて五分くらいの距離だった。と言っても夏穂の歩くペースは何故か少し速かった。その事を考えれば普通に歩けば十分くらいだろう。


「ここが図書館。雑誌から漫画、小説やライトノベルまで揃っているわ」


 夏穂の説明の通り、聖貴学園の図書館には大量の本が集められている。雑誌や漫画、小説やライトノベル、ゲームの攻略本まである。やはり小説やライトノベルが人気である。と言ってもその類いの本を読んでいるのは従者コースの生徒で貴重な日常に帰ると語る生徒もある。

 構造も本格的で耐震設計も完璧である。


「結構ここに来ることになりそうだな」

「そうね。発売された日に、この図書館に置いてあるわ」


 検索する端末も存在しており、かなり本格的である。だからこそ、ショッピングモールの次に人が来る場所となっている。


「私のおすすめを紹介しておくわ。参考に」


 そう言って夏穂は二階に向かった。二階はライトノベルと小説のコーナーで、ちらほらと生徒の姿を見られた。皆、読書に夢中になっていて祐と夏穂に気がつく生徒はいなかった。それだけ夢中になっているともとれる。


「この本よ」


 そう言って夏穂は何冊か本を取り出した。タイトルやイラストは、ありふれたものだが夏穂はまるで子供のようにはしゃぎながら説明した。

 一冊はパンデミックが起きた国で生き延びるため奮闘する。そんな話で噂によると実話だと言う説も上がっている。だが真相はわかっていない。

 二冊目は異世界に転移して猫と共に旅をするお話だ。これは純粋にフィクションだが、作者が多忙で次の発行は半年後ではないかと言われている。


「これって貸し出しは、やっていないんですか?」

「一応やっているわ。返却期限は三日だけど。勿論、貴重な本は持ち出しが禁じられているわ」


 貸し出しはコンピュータによって管理されていて、何の本が貸し出し中で誰があと何日借りられるのかまで細かく記録されている。


「あとで借りてみるか」

「ええ。おすすめするわ。次に来ましょう」

夏穂が祐に本を紹介する場面で触れている本ですが、

一冊目は、小説投稿サイトハーメルンにて完結している私の作品をモチーフにしています。

また二冊目は、私の数少ない知人である。月見里キャメロット先生の「リリキャット戦記 〜俺の人生は『猫』に掌握されたようです〜 」をモチーフにしています。月見里キャメロット先生には、オマージュしたいと言ってちゃんと許可を取っております。

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