『エッジ』 第10章 すり替わり【reprise】 (2)
崩れ落ちた若武者から、礼韻と優丸が着衣をはがしていく。2人は身長こそ若武者を超しているが、体の線は細い。さらに、眠って意識をなくした人間はずしりと重いとくる。しかし2人には、貧弱な膂力を補う頭脳があり、重いバイクを乗りこなす小柄な女性の如く、手際よくごつい体から剥いでいく。粗末な胴丸をはずし、陣笠を取り、その下の衣装を脱がす。若武者たちは見張り番という役目柄、いつでも報告に走れるよう篭手も脛あても付けてなく、ものの数分で褌一枚の姿にまで剥いてしまった。
今度、礼韻と優丸は着衣を脱ぎ、剥がしたばかりの足軽の衣類を着けていく。沁みた汗がムッと匂ったが、2人とも気にしなかった。陣笠を被ると、面頬で顔の下半分を覆った。面頬だけは持参したものだった。
地べたを転がされ、ひっくり返され、若武者たちは泥だらけだった。その黒い2つの体を引きずり、彼らは、大木に背をもたせて縄で縛りつけた。
ここで礼韻が、ようやくというふうに小さくため息を吐いた。そして優丸に、触れるほどに顔を近づけた。そこまで寄らないと、闇と靄でなにも分からないからだ。
「おまえは着ていた物を埋めてくれ。こちらは、やつらの眠りに念を押す」
低音でそう伝えると、すぐさま若武者に近づき、口を開けて奥にカプセルを詰め込んだ。これは飲み込まずとも、唾液で割れて溶け出し、威力を発揮するものだ。半日は確実に目を覚まさない。
優丸の方は、着ていた衣類を、目印を付けておいた木のそばに埋めた。この時代の者が見ても、おそらくは衣類だとは分からないであろう、21世紀初頭のスタンダードな服を、頑強な防水の袋に入れて埋めたのだ。
「おい」
土をかぶせ終わって立ちあがろうとした優丸に、背後から野太い声がかかった。




