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『エッジ』(関ヶ原 レヴェレイション)  作者: 勒野宇流
祖父の贈り物
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『エッジ』 第7章 祖父の贈り物(12)

 曇る空が白む。夜が明けたのだ。


 寒気に震えながらじっと待っていると、鉄砲の音に続いて声が響いた。


 そして靄が取れる。


 眼下に、福島隊と宇喜田隊の衝突が見えた。


 体に、電気を通されたかのようだった。願坐韻は土嚢から身を乗り出し、軍勢同士の派手なぶつかり合いを見入った。


 頭の中に入っている関ヶ原の合戦史が、眼下でそのまま繰り広げられている。福島と宇喜田がまず槍を合わせ、黒田以下東軍の軍勢が北国街道に向かった。狙うは石田三成だ。


 また、松尾山の小早川、南宮山の吉川や毛利、それらは兵を動かさずに静まっていた。そして戦闘地帯の中央に位置する島津も。


 彼らがこの一戦で沈黙を貫き通したことは当然知っていたが、実際に見ればやはり驚きを隠せない。戦闘している者との差が、あまりにも極端だからだ。


 宇喜田が押し、三成の前に立つ島左近が相手を蹴散らす。小西も大谷も善戦。どこをどう見ようとも、西軍優勢。そしてたたみかけるように、三成の大砲が火を噴く。


 そして昼がすぎ、問題の、小早川の裏切り。その前提として、家康麾下の鉄砲隊による松尾山への発砲。願坐韻は興奮の極みで、胃からコーヒーを戻す。寒いはずなのに、玉の汗を浮かべている。それでも痙攣するかのように震えが止まらない。


 一斉射撃という家康の脅しに、小早川秀秋がいよいよ裏切りを決行し、大軍を同じ西軍の大谷吉継に向かわせる。


 この裏切りが、戦況をひっくり返す。大谷がつぶれ、その余波で小西、宇喜田も劣勢に陥る。


 西軍は、まるで音を立てるかのように、一気に崩れてしまう。


 願坐韻は当時の記録者の正確さに、深く唸った。巷間言われているとおりの展開なのだ。俯瞰もできず、録画など言葉すらない時代。なのに、記してあるとおりの展開で戦いが進んでいる。いったい記録者は、どこで見て、どう記憶し、綴っていたのだろう。


 願坐韻は、関ヶ原を記した者たちを賛しながらも、まったくもって不思議だった。

 




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