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第二章 恋は蜃気楼02

 朝、落ち着かない気持ちでまこと登校してきていた。

 置き去りにするなどと、最低なことをしてしまったと、時間が経つにつれその思いが強くなり、颯太になんて話を切り出そうかと、そればかり考えていた。

 早く好き過ぎたまことが、じりじりとした気持ちでいると、友菜がやって来る。

 「友菜おはよう。昨日はありがとう。あの後、どうした?」

 「あああの後、大丈夫だったよ」

 笑顔で言った友菜は、サッとまことの元から離れて行く。

 そのまま、クラスメートたちと楽しそうにしゃべりだし、それ以上のことは何も聞けず、自分の席へ戻ったまことだった。 


 颯太は、一限目の途中でやって来る。

 今回は、柳井からの連絡済で、何おお咎めもなく席へ着いた颯太を、まことはそっと盗み見る。

 

 左手に包帯が巻かれ、足も引きずっているように見えた。しかし、学校を休むほどの怪我ではなかったんだと分かり、まことはホッと胸を撫で下ろす。そうなると、今度は謝るべきかどうかの葛藤である。現場を目撃しておきながら、何もできないどころか、ケガを負った颯太の介抱もせずに、帰ってしまったのだ。最低の行為に、弁解の余地がない。

 あれこれ考えているうちに、一日が終わろうとしていた。

 焦りまくったまことは、何とか話し掛けなくてはと、相変わらずだらけている颯太目がけ歩き出す。


 そんなまことの心の葛藤を知らない颯太は、大きく躰を揺すぶられ、痛さで否応なしに顔を上げていた。


 「キミには、やる気スイッチっていうものがないの?」


 顔を上げるなり、何のCМだよ。と突っ込みたくなるような言葉を言われ、颯太は思わず笑いそうになってしまっていた。

 「学校へ通いたくても、通えない子、沢山いるんだからね。キミは贅沢だ」

 違う、そんなことが言いたいんじゃない。

 颯太がいつものように、逃げに入る。

 何とか食い止めて、聞かなきゃ。さりげなく、ケガの原因を。

 無言で行ってしまおうとする颯太を見て、まことは悲しい気持ちでいっぱいになる。

 「逃げる気?」

 

 大股で廊下を行ってしまう颯太を見やりながら、、まことは大きなため息を吐く。


 「まこと、どうかした?」

 羽純の問いかけに、、まことは笑顔で首を振る。


 話し掛けるチャンスを窺うまことは、一つ気が付いたことがあった。

 友菜が、気のせいかずっと颯太のそばにいて、話し掛けているのだ。

 しかも、それに面倒くさがらず、颯太がきちんと答えている。

 そんな姿を見るのは、初めてだった。

 胸のざわつきを否定するように、まことは頭を振る。


 友菜の行動は、まことの民らず羽純の心も揺さぶるものとなった。


 下校時間、足を引いて歩く颯太を追いかけ、当然のように横へ並ぶ友菜を見て、いよいよ心中穏やかではなくなった羽純が声を荒げる。

 「何、あれ」

 クラスの女子たちに合わせてる程度にしか、颯太に興味を示さなかった友菜である。


 まさか……。


 苦々しい気持ちが羽純の中に蘇り、ついまことにきつい口調になってしまう。

 「あいつ、篠原のこと、好きだったけ?」

 そんなことを聞かれても、答えようのないまことは、苦笑いで羽純を見る。

 「あんたは、これでいいの?」

 「良いも何も、私が決めることじゃないし」

 羽純が目を覗き込まれ、まことは言葉を詰まらせる。

 「あんた、篠原のこと気になっていたんじゃないの?」

 「……気になっていると言うか、それは学級委員として」

 「まだそんなこと言ってんの? 本気で怒るよ」

 「だって本当のことだもん。それ以外言いようが」

 「もう良い。まことなんか知らない」

 「羽純っ」

 羽純は怒って行ってしまう。


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