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魔法世界の妄言者  作者: 三連ファンブル
1/1

プロローグ A

ある風のない雨の日のことだ。



一人の女が孤児院の前に籠を置き、足早に去って行った。



籠は叫んでいた。



人々は籠に見向きもせず、一人、また一人と通り過ぎている。



籠は泣いていた。



雨が更に激しく降り始める。



籠は動くことも、叫ぶこともなくなった。



ただ、雨の音と人々の靴音だけが全ての音となった。



籠は物となった。



ーー空から降りてきた一滴の光る雫が、籠に触れた。





籠の世界に希望はない、優しさもない、善悪の概念すら存在しない。


それでも、籠の世界の外に奇跡はあった、存在したのだ。




籠の世界に降りた奇跡は世界に「箱」をもたらした。




声は出せない



けれど、目で空が見える



肌が寒いと感じることができる



耳にドアの開く音が聞こえる



誰かが走り寄ってくる音がきこえる



ーー箱は優しいしわくちゃな感触に抱きかかえられた。



後にはただ空の籠が残るのみであった。



空の籠は誰かがいつの間にか持ち去ったのか、無くなっていた。



箱は、エインと名付けられた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




ーー俺は死は静かな物であると考えていた、今、目の前にいる奴に出逢うまでは



最初、俺はボンヤリとした微睡みの中にいた。




何もわからない、疑問に思わない、何も考えたく、なかった。





微睡みが教えてくれた事は俺が死んでいて、今、ゆっくりと、何処かに向かって運ばれている事だけである。



しかし、そんな安らかな微睡みの時間は突然、終わる。




時間の終わりは、声を伴って現れた。否、爆音を伴って




「ガハハハハッッッ!!」



鼓膜が破れるかと思った。


今、自分に鼓膜が有るか無いかは置いておいて



「ここに『存在』が来るとはな!このまま永劫の時が過ぎるまで我一人あるのみと諦めていたところだ!…むぅ、しかし、これは…ありえん…ーーあぁ、成る程、一時的な……」



すぐ近くに何かがいるのだ、知性を持った何か、が

しかし、とにかく声がデカい


混乱が収まった時、苛立ちが募っていた。折角、心地よい微睡みの中に浸っていたのに、叩き起こされたような感覚だった。そんな勢いのまま、俺はそいつに負けない大声で叫んでいた。




ガハハハ、じゃねぇよ!バカヤロウ‼︎


いや、野郎かどうかはわからないが!間違いなくお前は馬鹿だ!


一人で大声で笑って一人で納得すんな!


兎に角、状況を説明しr…。




俺は、最後まで言葉の勢いを保つ事はできなかった、見てしまったのだ。

眼前にいたモノの全貌を。




それは人非ざる異形であった、ファンタジーの世界にしかいない、ドラゴンであった。


俺の開いた口が、閉じずにパクパクさせていると、




ーードラゴンは再び言葉の形をした爆音を放った。




「初めての客だと思っていたら、ぎゃあぎゃあと五月蝿い客だな…よし、ここは張り切って消し炭にしてみるか…」



よしっ、じゃねええ!?

いきなり過ぎるだろ!?張り切ってすることが、俺を消し炭にすることかよ!?他にやることあんだろ⁉︎っていうかあってくれぇぇ!




「歓迎の挨拶だ、五月蝿い客を迎える最初で最後の、な」


すいませんでしたーーッ!

神様、仏様、ドラゴン様!!どうかっ、消し炭だけはご勘弁をーーッ!


「冗談だ、そこまで騒ぐ事でも無かろう」


も、もちろん冗談だと知っていたぜぜぜ


「思いっきり動揺しとるではないか……しかし、神か…」


ドラゴンは最後に一言、聞こえない程小さな声で呟くと


「主の疑問に答えよう」そう言った


なので、俺は遠慮なく質問をした


Q.ここはどこだ?


A.出来損ないの世界だ



Q.なんで死んだ俺に意識がある?


A.これから転生するからだ



Q.Who are you?


A.Well…I


いやそこ英語じゃなくていいです


「主が言い始めたのだろう…そんなに消し炭になりたいか?」


すいません、冗談ですぅぅ!調子に乗りましたーー!


「まぁ、いい。…我は何でもできて、何もできない名無しの龍だ、それ以外何もない」


何でもできて、何もできないとは?


「文字通りだ」


それについては黙ってしまった。何か言いたくない事であったのかもしれない、聞いてみたかったが、今度こそ消し炭にされそうだったので止めておく。触れてもらいたくないことは誰にでもあるということだろう。触らぬ神に祟りなし、だ。


それより、他について聞くとしよう………



その後、一人と一匹の間に何が起きたのかはわからない。


結果として、出来損ないの世界は空っぽとなる。


それだけが今の影響であった。

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