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目の前の女性は自分のことを初代部長だと名乗った。

そして理事長代理だとも。


「しょ、初代部長なんですか? あなたが?」

「そうですっ! ワタシがっ! 初代部長っ! ですっ!」


一言一言にポーズをつけながら叫ぶ美異を見て彼は少し引いた。

彼女は叫び終わるとゆっくりと椅子に座る。


「で、返答は持ってきてくれましたかっ!」

「こ、こちらに」


阿利洒は自分の身長の3分の2もある所にいる美異に手紙を渡す。

美異はその手紙を受け取るとすぐに確認をする。


「ふむふむなるほど……」


確認を終えると受け取った手紙を机の上に置く。

すると手を組みこちらをすっと見つめる。


「うんうん。OK、OK!」

「は、はい。今年もよろしくお願いします」

「うんうん。で、キミキミ。新入りの巨人君」

「駆守賭朱輝君です」

「朱輝君ね」

(楽部の人ってフランクだなぁ……)


誰もがすぐに名前で呼んでくることに少し戸惑いながらも美異の話を続けて聞く。


「わが楽部に男子が入るのは初代のワタシの頃とあの子の時くらいなので久しぶりです」

「はい」

「ま、別に関係を持ってもいいけど表沙汰になることだけは絶対にしないでね」

「ウェッ!?」


唐突な美異の下ネタ発言により彼は慌てふためく。

大きな巨体が顔を赤らめアタフタする姿はとてつもなく面白いもののようであり、周りにいる小女達はクスクスと笑っている。

美異の下ネタトークにも慣れているようで慌てる様子もない。


「君は声もワタシが見てた頃のイケメン主人公っぽいしてるしきっと楽勝ね」


ニッコリとそう彼の肩を持ちながら言う。

彼はとりあえず頷くことしかできなかった。


「ところで初代部長の見てた頃のアニメっていつの話かしら」

「20年くらい前の話なんじゃないですか?」


夢と薺は周りに聞こえないようにコソコソと話す。


「ちょっとそこぉ~なにを話しているのかなぁ~?」


どうやら聞こえていたようでニッコリと笑いながら二人を見つめる。


「く、くだらないことです」

「き、気にしなくていいですよ」


ギョッとした感じで体を震わせながら喋るのをやめてピシッと体制を整える。


「ま、とにかく。これからいろいろあると思いますが……楽しんで部活していってくださいね?」

「あ、はい」

「で、では、失礼します」

「はいはい。そこの二人以外はさようなら」



夢と薺の二人は真っ白になったようにその場に立ち尽くしていた。

そんな二人をよそに三人はのそのそと理事長室を後にした。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


「あの二人は大丈夫ですかね……」

「きっと生まれ変わってこの部室に戻ってくるやろう。それまで待つしかないんや……」

「はい……!」

「いい話にしようとしてるようですが、彼女たちの自業自得ですからね」

「「はい」」


部室に戻ってきた三人は遠くに行ってしまった二人のことを思いながら大きな机に向かって椅子に座っていた。


「何でもネタにしてこそ関西人ですやん」

「関西人が誰でもネタに走るようなことは言わないでください」

「まぁ、ベタ関西人はうち以外おらんしなぁ~」

「ベタな関西人なんてここらにはあなたくらいですよ……」


そう言いながら阿利洒はズズっと熱い緑茶をすすりながら飲む。

トンっと湯のみを机の上に置くと隣の椅子の上に置いていたB4サイズの紙を手に取る。


「とりあえずこれが今後の予定表なので、持っておいてください」

「はい」

「はいはい」


軽い返事をしながら二人は予定の書かれた紙を受け取る。

上から順に書いてある内容を確認していく。

四月から五月までの予定が書かれている。


「あの~幼稚園で舞台劇とか町内草野球大会とかあるんですけど……」

「あ~それな。いろんな人の頼みごととかを聞いてんねん。理事長時代からの付き合いの物もあるから断るに断れんねんなぁ」

「楽部は頼むと言われたことも楽しくやるというのが決まり。と言うのが初代部長の決めたことです」

「あ、もしかしてこの部活の名前ってしゃ――」

「言うたらアカンで?」

「ハイ……」


どうしても自分の思いついたことを言葉に発して喋りたかったのだが……

シッと指を一本顔の前に出された彼は黙ることしかできなかった。


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