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「あ、あああ! 初代部長からの指令書! すぐに返答しないと!」
「はい、ワープロ。紙も補充しといたでぇ~」
「ありがとっ! さっさと書きますよ!」
彼が答えを出している隣では慌てふためきながらも初代部長への返答をワープロでうちはじめる阿利洒の姿があった。
「ワープロなんて古いものがよくあるね……」
「幼稚園の時に見た記憶はあるっすけど……」
「初代部長の使ってたやつやねん。『大事に使ってねっ』という言いつけにより使い続け取られてるんや」
「今の初代部長の間手なんですか? うまいですねぇ。あ、そろそろボクらは帰りますね」
「えーもっと阿利洒で遊び――」
その瞬間、薙扨は肩を掴まれる。
「ではみなさん。さようなら」
「さ、さよならっす~」
薙扨は大きなプレッシャーを感じてそれを拒むことができずに正宗とともに部室を後にしていった。
「なんやけったいなカップルやったね」
「否定はできません」
いろいろ解決し落ち付いた彼は静かに同意する。
「高身長でスタイルのいい人なんてさっさと帰ってくれてよかったのです!」
「あんたも胸がでかいじゃないのよ」
「高身長じゃないとアンバランスでよくないのです!」
またもや言い争いをしている二人を見て彼は心穏やかになっていた。
「ちなみに胸の大きさは薺ちゃん、うち、夢ちゃん、部長やで」
「ウェッ!? いきなり何を――」
「いいかえると得、大、並、無やで」
「さらりと言いますが無は酷くないですかね……」
「実際そうやろ?」
「……」
事実は言い返すことができない。
嘘をつくこともただ空しいだけなので何も言えない。
(幼馴染を救うこともできないとはっ!)
彼はただただ泣いた。
自分の何もできない無念さに。
「まさか泣きだすとは思わへんかったで……」
「現実って悲しいんですね……」
「……せやね」
「できましたっ!」
現実を見ながら泣いている彼と慰めてい彼女をよそに阿利洒の叫び声が部室に広がる。
その叫びにより争っていた二人と現実を見てしまった二人の視線が阿利洒に集まる。
「書けましたよ返答が! さぁ、さっさと行きますよ!」
「ど、どこに?」
彼の問いかけに彼女は天井を指さし答える。
「理事長室にっ!」
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「り、理事長室とか生れてはじめてきましたよ……」
「そりゃ高校入るまで私立に行ったことないんやったらそうなんやないの?」
「多分行ってても来ないと思いますけど……」
楽部一同は理事長室の扉の前に来ていた。
高校の理事長室とは思えない大きさの扉である。
「で、何でここに来たんで?」
「初代部長に返事を届けるためです」
「理事長に渡してもらうってことですか?」
「いえ、初代部長は――」
「失礼します!」
薺が説明をしようとすると、それを遮るように阿利洒が理事長室の扉を叩く。
すると扉が自動的に中へと開いていく。
「どうぞ、お入りなさい」
「はい」
阿利洒がそう返事すると順番に部屋の中へとはいっていく。
(広っ! 理事長室ってこんなもんなのか?)
あたりを見渡すが明らかに教室より広い。
いろいろな賞状が飾られており、西洋鎧や和風鎧に盆栽にチューリップなどあまりにも統一されていない家具が置かれている。
「よく来ましたね」
話しかけてきた人物は窓の方向に椅子を向けて座っており、彼らからは姿が見えない。
そしてゆっくりと椅子が動き、椅子に座っている人物の姿が見える。
「ふふ、そちらの大きい方は初めてですね?」
「は、はい」
理事長と言うにはかなり若い女性が椅子に座っていた。
彼は初代部長は理事長の娘と言われていたので混乱していた。
「初めまして。私は理事長代理にして楽部初代部長――」
座っていた女性はすっと立ち上がる。
「日静 美異です。よろしくねっ!」