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「何なんですかぁ~痛いです」

「あ――部長を追いかけて行ったんですよ」

「えー! なでですかぁ? 用事があって忙しいんですよ?」


純粋な目でそう答える彼女を見て彼は困ったようにそれに頷くしかできなかった。

そうしていると正宗が肩を叩いてくる。


「とりあえずここで待とう。薙扨ならすぐに連れてくると思うよ」

「まぁ……そうなんだろうけどさぁ……」


するとすぐに扉が開いた。

そこには鞄を持つかのようにつかまれた阿利洒とつかんでいる薙扨がいた。

その姿はまるで親が嫌がる子供を無理やり連れ帰るようであった。


「ううう……会いたくなかった……」

「いやぁ、まさかこんなにちっこいままだったとは。連れてくるのが楽チンだったっすよ」

「ほんとうだね、朱輝に聞いた通りだ。小さいままだね」

「うぇぇぇぇええぇぇ」

「部長がまるでいじめられてる子供ですね」

「あんたはさっきまでいじける子供だったわよ」


鋭くツッコまれた薺は夢のほうを睨んだ。

睨まれた夢も睨み返していた。

が、すぐに睨みあうのをやめた。


「はぁ、子供じゃないんだしこういうのはやめやめ」

「ですね」


そう言うと下におろされた阿利洒を慰めるために移動していった。

それを見ていた彼はいいものを見たようないい笑顔になっていた。


「朱輝。君は何を求めてこの部活に入ったのか理解はしたけど共感はできないよ」

「は?」

「君は気がつかなくていいんだ」

「なにがなにやら……」


彼は正宗の言うことがよく理解できなかった。

特に理解しようともしないで目の前の光景を見ていた。

二人によって何度か助けられた阿利洒はいつもの定位置の椅子に座り、机に突っ伏していた。


「ああ、そう言えば忘れてた。あ――部長に渡すものがあるんだけど」


郷に入っては郷に従えということで阿利洒のことを部長と呼ぶ。

呼ばれた阿利洒は少し泣きながら顔を上げる。


「……渡すもの? 何でしょう?」

「えーと、これで――」

「そっ、その封筒は!?」


彼が懐から取り出した封筒を取ろうとバッと手を取ろうとする。

が、朱輝は取れないように上にあげる。

取ろうと飛び跳ねるが身長差がありすぎて届くことはない。

それを見ていた幼馴染たちはクスクスと笑っていた。


「なんかさっきまでのあんたあんな感じだったわよ」

「えー本当ですか~。自分ではよくわからないでしたよ!」

「部長が遊び道具にされてんのにええんかあんたら……」


鞘歌は二人の漫才に鋭いツッコミを入れる。

二人はそれ以降何もしゃべらずにジト目で目の前の光景を見ていた。

鞘歌はやれやれと言った顔をして朱輝に近づいていく。


「ちょいちょい朱輝君。そろそろやめたってくれへんかな? その封筒大事なもんやねん」

「あ、はいどうぞ。部長さ~ん」

「うぇぇぇええ。やっと渡してくれましたぁ~」


阿利洒は泣き叫びながら封筒を受け取り、上に持ち上げながらその場でクルクルと踊りだす。

その光景は朱輝の心には先ほどとは違う快感が心に広がっていった。

鞘歌は頬をポリポリと書きながらやれやれと言った顔をしていた。


「あれ、それもしかして初代部長からの指令書じゃない!?」

「えっ、初代部長からの指令書ですかっ!?」

「あーやっぱ気が付いてなかったんやねぇ~」


阿利洒の手にあるものに気がついた彼女たちは突然あわて始め、その場であたふたとし出す。

朱輝は初代部長というキーワードが耳に引っかかった。


「初代部長って言うと理事長の娘の?」

「いまだにこの楽部で絶対的権力を持つ人でもあります」

「逆らったらこの学校で生徒なんてでけへんやろうなぁ~」

「末恐ろしいな……」


彼は頭の中で般若のような形相をした女性を思い浮かべた。

だが周りの女性陣を見ていると、想像の中の女性の身長はかなり小さなものとなっていく。

すると般若の面を無理してかぶっている小女ができあがる。

そして朱輝の顔は綻んでいく。


(年の割に若すぎる見た目で般若の仮面……)

「ふっふふふふふふ……」

「うわっ、なによ突然!」

「こ、壊れちゃったですか?」

(あかん! 想像通りの子やった! 想像してもうたんや!)


彼は今の想像ですべてを理解し笑いが止まらなくなってしまった。

自分がこの部活に入った理由を。

あの快感の理由を。


(考えればそうだった。初めて会った時。先輩風を吹かせながら話しかけられた時。変わらなさすぎる幼馴染と再会した時。いじめて楽しんだ時。そして今の想像

もっと早くに気が付くべきだったんだ)


朱輝は心の中でいろいろなことが解決した。

その答えは思えば当たり前だった。


(俺は小さな年上女性。小女が大好きなのだっ!)


それが彼の答えである!

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