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『で、その楽部ってのに入ったのかい?』

「ああ」

『阿利洒ちゃんもいるなんて、運命を感じるね』

「まったくだわ」


家に帰り、食事も風呂も済ませた朱輝はベットに寝転びながら正宗と携帯電話で会話していた。


『しかし思うんだが、高校生にもなって夜に電話って何だが女子っぽくないかい?』

「まぁ、よくアニメとかでは女の子がやってるけど男がやってても問題ないだろ」

『はっはは、その通りだね。実にその通りだ』

「とりあえずまた明日な」

『ああ。っと、明日楽部に案内してくれないかな。薙扨と一緒に阿利洒に会いたいんだ。久し振りだからね』

「おう。明日案内するよ。じゃあな」

『ああ。また明日』


ピッ


電話を切ると朱輝は携帯を近くにあった勉強机の上に置く。

そしてフトンの上にポフッと落ちる。


「しかし……」

(なんだったんだろうなぁ……あの感覚……)


朱輝はよくわからなかった感覚のことを考えながら近くにあったリモコンで部屋の電気を消した。

そうして明日のことを考えながら眠りについた……


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


次の日、6時間の授業も終わり、教室の端の席に朱輝、正宗、薙扨が集まっていた。


「にしても私立っていやっすねぇ~いきなり6時間授業をやるなんて」

「中学校とは違うんだぞっていう教訓になると思うけどね」

「まぁ、それはさておき。そろそろ楽部に行こうと思う」

「いやぁ、小学校以来っすねぇ阿利洒に会えるの」

「しかも留年しているなんてとんだ笑い物だね」

「酷いことをいうもんだ」


朱輝は鞄を持ち立ち上がり、廊下へと向かって3人で歩いていく。

すると教室の前に見覚えのある顔が立っていた。


「おい、駆守賭」

「あれ、顧問の刃隠(はがくれ)先生じゃないですか」


昨日乱闘になりかかった顧問の刃隠が朱輝に会いに来たのである。

刃隠は手に持っていた封筒を差し出してくる。


「これを神山に渡しといてくれ」

「あ、はい」

「いやぁ、お前が俺のクラスの隣で助かったよ。じゃ、頼んだぞ」


彼が封筒を受け取ると刃隠はすぐさまその場を後にしていった。

3人は去っていく刃隠を見届けると手に持っていた封筒に視線を移した。


「何だろうなぁこれ」

「阿利洒に渡すようにって言われていたね」

「部活のなんかっすよ。さっさと久しぶりの再会に行くっすよ!」

「そうだな。行けば分かるか」


そう言うと封筒をブレザーのなからある内ポケットになおし部室へと向かった。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


「どうもー!」


部室に入り、あいさつをするとニコニコとした笑顔で鞘歌がかけよよってくる。


「おっ、きたなぁ朱輝くーん。――およ? 後ろの人らはなんや?」

「あ――部長の従妹と幼馴染ですよ」

「ほぉー昨日言っとった子らやな? 久々の再会のために連れてきたんやね」

「ええ、そういうことで来ました」

「で、阿利洒はどこにいるっす?」

「部長は――あれ?」


彼女はあたりを見渡すが阿利洒の姿が見当たらない。

机の下や近くのポリバケツの蓋をあけたりするが姿が見当たらない。

そして近くで本を読んでいた夢の肩を叩く。


「なぁ夢ちゃん。部長どこにおるかしっとる?」

「へ? 部長? 今までそこに――あら?」


夢は部室の奥を見るがそこにも阿利洒の姿はない。

キョロキョロとあたりを見渡すがやはり姿はない。

そんなときに朱輝の隣にいた正宗が肘で小突いてくる。


「しかしこの部活の面々は小さい人が多いね――君はロリコンだったかな?」

「何言ってんだ? 今までそんな傾向あったか?」

「ふ、そう言えばそうだね……」


こそこそと周りに聞こえないように小声でこそこそと話しているとしまっていた部室の扉が開く。


「どうもです~。あれ? 知らない人ですね。入部希望さんですか?」


扉を開けて入ってきたのは薺だった。

彼女は入ってすぐのところにいた見たことない二人を見て首をかしげていた。


「いや、違うっすよ。阿利洒に会いに来ただけで……」

「あれ、部長に似た声をしてますね」

「それは従妹だからっす」

「えっ、従妹ですか!?」


そういって顔を上に見上げながらクルクルと薙扨の周りを回る。

すると納得いかないような顔で薙扨を見る。


「声は似てますけど、それ以外は部長と違いすぎます! そな高身長が妬ましいです!」

「そ、そな? あ、でも身長なんて高くてもいいことないっすよ。バスケの勧誘されたうっとおしくて――」

「キッー! 言ってなららないことを言ってしまったですね!」

「あ、その……すいませんっす……」


泣き叫びながらポコポコと足を叩いてくる薺を見て彼女はとても申し訳ない気持ちになった。

そうしていると夢がトコトコと近づいてくる。


「あの子って部長の従妹なの?」

「あ、はい」

「部長って比べられるのが嫌で逃げたんじゃないの? 誰が見てもあの子のほうがお姉さんよ――何かイライラしてきたわ。あたしもあの子を叩いていいかしら」

「いや、いろいろ気持ちもわかるんで殴らないでやってもらえますか?」


同じく身長の高いものとして彼女の気持ちがわかる彼は夢をなだめるように話しかける。

夢はチッと舌打ちイライラしているように叩くことをあきらめた。


「ん、部長がどうしたんですか?」


クルっと顔をこちらに向けた薺はトコトコと歩いてくる。

薙扨はすべてが終わったようにその場にヘタリと座り込む。


「部長が逃げたって話よ」

「部長ですか? さっきそこで会いましたよ?」

「えっ? そうなんですか?」

「ええ。もう今日は用事があるから帰ると」

「逃げたのよ!」

「今行けば間に合うっす!」

「ひゃっ!?」


大声でどなりながら二人は廊下へと扉を引き走りかけて行った。

突然のことに驚いた薺は床にペタリと尻をつけてしまった。


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