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「入部届けだぁ!? お前こんな部活に入部すんのか?」

「え、あれ? 先生、顧問、何ですよね?」

「んなこと言われても前任の先生から受け継いだだけの名前の顧問だよ」


顧問である先生は頭を掻きながら意外そうな表情で入部届けを受け取った。

そして彼の後ろにいる小さな二人を見る。


「にしてもまさかチビ部にこんなでかいやつが入部するとはなぁ~」

「わたしたちの部活の名前は楽部ですよぉ!」

「チビチビって言うとかクソですかあんたわッ!」

「はっ。部員4人全員チビだったじゃねぇか」

「教育者の言葉とは思えない……」


彼は親の仇を見ているかの如くの冷たい視線を顧問に向けていた。

しかし目の前でプンスカと怒っている先輩の顔を見てしだいに普通の顔に戻って行った。


「にしてもお前のような高身長で年より上に見られそうな顔、そのうえその低い声といい――美女と野獣ならぬ、幼女と巨獣だな」

「は? てめぇ、言っていいことと悪いことが――」

「ぼ、暴力はダメですよ!?」

「あんたも逆に気にしてんのね……」


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


危うく暴力沙汰になりそうだった争いは薺の手によりおさめられた。

その後、教室をでた3人は学校の校舎の端にある部室へと向かっていた。

彼を先導する2人の姿を見ていると顔が綻んでいく。


「ここよ、ここ」

「楽部室――楽部専用の部室なんですか、これ……」

「初代楽部部長が理事長の娘さんだったのですよ」

「それでこんな部室が……」

「卒業した後もずっと残ってるんだからきっと親バカなのね」

「理事長が聞いたら絶対怒鳴られますよそれ……」

「いいわよ、どうせ今は所用で日本にいないんだから――」


そう言いつつ部室の扉を開けると中には小学6年生程の背丈の女性が座って本を読んでいた。

扉が開いたのに気がつくと本を閉じる。


「おかえりなさい。部員は集まりましたか――聞くまでもなく後ろに大きな人がいますね」

「一本大釣りしてきてやりましたよ、部長」

「それだとわたしが餌ってことになりませんかぁ」

「ぶつかって釣りあげたんだからその通りよ」

「ひ、酷いですよぉ」


プンスカと2人はじゃれあうように相手をポカポカと殴りだす。

年上である事を思うとやはり並々ならぬ感覚が突き抜ける。

すると座っていた女性が近づいてくる。

よく見ると彼はその女性に見覚えがあった。


「あれ、もしかして薙扨の従姉の阿利洒じゃないか?」

「あら、身長が大きくなりすぎてて気がつきませんでしたが、朱輝ですね」

「あれ、部長知り合いなんですか?」

「ええ、従妹の友達で小学生の頃に遊んでいたことがありますね」


そう言ってフフッと幼馴染の神山 阿利洒(かみやま ありさ)は笑う。

それを見たとき薺はハッとした顔をする。

そして彼の顔を見てニッコリとした顔になる。


「そう言えば私たちの紹介をしていませんでしたね!」

「あ、そう言えばそうね。まずは私から」


そう言うと彼女はフッと鼻息を立ててピシッと腰に手を当てる。


「あたしの名前は岩打 夢(いわだ ゆめ)よ。苗字は嫌いだから夢先輩って呼びなさい」


紺色のブレザーに緑のネクタイ、そして紺色のスカートという格好だが、小学4年生程の身長である事が不思議な感覚を醸し出している。

黒髪の短髪で髪の先が少し曲がっているところが活発さを感じ、口元の八重歯がさらにそれを引き立てている。

キラキラとした大きな黒い眼がそれを見た相手の心を奪ってしまいそうである。

そして頭にあるアンテナのような髪がピョコピョコと動いている。

今とても喜んでいることが聞かなくてもわかる。


「わたしの名前は端詞 薺(はたこと なずな)です。わたしも薺先輩って呼んでもらえるとうれしいです!」


黒髪で長い髪をリボンで結んでいるポニーテールである。

ニッコリとした笑顔は清純さを表している。

そして小学4年生程の身長差がかわいさをもさらに引き出している。

服装は夢と同じではあるが何か少し違和感を感じる。


「あ、薺さん。このさらし出しっぱなしでしたよ」

「ちょっ! なでいまいうんですかぁ!?」

「さ、さらし……」

「薺は身長が低いのに胸がでかいことを気にしてるからさらしで抑えてんのよ」

「さらになでばらすですか!?」


薺はポカポカと秘密をばらした二人を叩く。

彼は先ほど感じた違和感の理由がわかり納得した。

わかると同時につばを飲み込むほどの感覚が体に響き渡る。

ミスマッチなものは心に響き渡るのである。

それは誰もが理解できる。

なぜなら幼児体型で胸がでかいのだから。


「阿利洒は何でおれにそんな事をばらしたんだ?」

「なんでって――面白そうじゃないですか」


そう言ってニコッと笑ってこっちを見る。

すると彼はドキッとする。

昔から少し成長はしているが小さな姿が心を狂わせる。

黒く腰まで届く長い髪、透き通ったように美しい黒い瞳。

そしてすべてを受け入れてくれそうな口。

それらすべてを含めて大和撫子というしかないほどの美しさである。

そしてふと気になったことがあった。


「あれ、たしか阿利洒はおれより2つ年上だった気がするんだけど――」

「留年したのよ」

「えっ!?」


気になったところ。

それは2つ年上のはずの阿利洒が2年生の緑色のネクタイをしていたことである。



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