19
肉まんフェスティバルから数日。
いろいろあったが何事もなく日常が続いている。
部活内の交流は深まり、ほのぼのとした空気が流れていた。
そして時はとある金曜日の夜へと移る……
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「阿利洒を誘って遊びに行かないかだってぇ?」
『そうさ、幼いころの友人に出会ってもう何周経っていると思っているんだい?』
「ならもっと早くてもよかったんじゃないのか? お前らが準部員とかになっときながら全然部活にこないのが悪いと思うんだが……」
『すまないね。君の邪魔をしてはいけないと思ってね』
「――お前ら二人でいろいろと忙しかったんだろ?」
『……言い返せないねぇ』
ベットに寝転がりながら携帯電話で会話している彼は足をバタバタとさせる。
そして床に足をつけ、よっと体を起こす。
「んで? 阿利洒にはもう話をつけてんの?」
『ああ、勉強もやっとひと段落したみたいだからね』
「ああ……来年同級生になってたら困るもんな……」
『――しっかり者の彼女がまさか留年しているとは、実際見るまでは信じられなかったよ』
「いまだにちゃんとしっかり者だよ……本当に……」
部活のイベント事では彼女がいないとまとまらないことが多い。
たとえば……
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「夢ちゃんのドキドキバズーカよ! 朱輝に用意してもらった部品で作ったわ! さっそくグラウンドで試し撃ちよ!」
自分の体にぴったしな小さなバズーカを担ぎながら夢は部室を後にしようとする。
そこに急ぎ足で彼女が出入り口に先回りをして道をふさぐ。
「ちょっと待ってくださいます? それの使用許可は取ってあるのかしら?」
「えーそんなん本物じゃないし、遠くに煙を飛ばすだけよ?」
彼女は両手をクロスして大きな×を作る。
それを見て夢は「えーっ!」とぼやく。
彼女はクロスを解くとやれやれと言った顔でため息をつく。
「こんなの初代部長に許可を取ってしまえば早いんですから。場所も提供してくれますよ」
「初代部長……理事長代理とはあんまり会いたくないわ……」
「仕方ないですね――問題になっても困ります。わたくしに任せておいてください」
「さっすが部長! 頼りになるわね!」
「……にしてもあなた、わたくしが留年してからなんかわたくしの扱い方変わりましたわね……」
少しかがっくりとした感じでトボトボと部室を後にした彼女の姿をしていたというのを彼は見たことがあった。
他にもまだある……
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「たっこやきぃ! たっこやきぃ! 今日は部室でタコ焼きパーティーや!!」
ジュウジュウと部室の真ん中の机の上でたこ焼きを巧みに焼いているのはさやかである。
彼女はうまいことたこ焼きを回転させている。
「いろいろ入れたろ~たこ焼き屋のにタコ以外もはいっとったり――」
「ちょっと! 唐突に何をしているんですか! 換気扇を回して!」
「と、唐突てぇ~みんなには連絡しとった――ああ、部長はほ――」
「ええい! そんなことはどうでもいいんです!」
「あやや……」
逃げるように彼女が指をさすのが机の上の物の散乱である。
「もしも火が飛び移ったりとかそういうのを考えたりしないのですか!」
「え、いや、ガスコンロの周囲のはよけて何もないし――」
「そういう油断がいけないんです! ちゃんと全部片付けてからにしなさい!」
「へいへい……オカンやないんやから……」
そう言いながら鞘歌はしぶしぶと片付けを始める。
「よろしい――後最後に……何か言いましたか?」
「!? いっ、いえ! 何も言うとりません!」
「よろしい……」
カタカタと肩を揺らしながら片付けをする鞘歌の姿を彼は見ていた。
そして最後に……
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「ほりゃ、ほりゃ、ほりゃ!」
「いや~薺先輩はすごいなぁ。あれだけの数の肉まんがどんどんとなくなっていく」
肉まんフェスティバルの後、少しを部員仲間におすそ分けし、ほとんどを薺一人で食べている。
「肉まんは最高なす!」
「最高なす!」
「ちょっとそこの二人! 肉まんのカスが飛び散っているでしょう!」
そう言うと彼女は新聞紙をパラっと開き、薺が食べている所の下に置く。
「ここからはみ出ないように食べてください」
「はいなす! 部長!」
「おれも自分の分食べるんで新聞紙ください!」
「自分で取りなさい!」
プンプンと怒りながら自分の座っていたところに戻り彼女を見て彼は笑ったりもした……
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などと言うこともあり、彼女は部活にいてはならない人物なのである。
彼が言うしっかり者で部活に必要な人物と言うのは間違いではないのである。
「で、どこに往くか決めたの?」
『ああ、近場のテドンーランドへ往こうと思ってるんだけど』
「ああ、遊園地な――あれ、男女二組ずつでは?」
『ハッハッハ! 幼馴染で姉弟みたいな関係だった阿利洒と何が起きるって言うんだい』
「それもそうか……」
『じゃぁ明日の朝九時に駅で――』
「ああ」
そして彼は笑いながら通話を終了した。
そして携帯電話を近くの勉強机の上に置き、布団にもぐりこんだ。
(九時と、さて……)
時計のアラームを九時に合わせて、部屋の電気をリモコンで消す。
そして布団を深くかぶりそのまま就寝した。