12
その次の日。
夢によって書かれた脚本を見て他の部員は絶句していた。
夢が書きあげたその内容が本当に夢のようであったからである。
「ちょっと待って。この内容でいく気なのかしら?」
「部長! なにがいけないって言うの!」
「このロボット人形すごく大きいですよ。朱輝君以外扱えなさそうです~」
「この鬼のロボットなんなん? 今回の桃太郎はスペースな感じなん?」
大きく朱輝にしか動かせ無さそうな大きなものから頑張れば行けそうな量産型の鬼ロボット。
はたしてこれらを使って一体どんな人形劇が行われるのか。
薺と鞘歌は疑問に思っていた。
「この脚本を読んでみてください」
「お、これか。なになに――ハッハハハ! なんや子供受けしそうやん!」
「です? ――ええっ! こんなんでいいんですか!?」
「面白いでしょ? でしょ?」
脚本を読み爆笑する鞘歌と驚き慌てる薺。
それを見て夢は今回の脚本はいけると確信した。
それを見ていた阿利洒はやれやれと言った顔をした。
「朱輝君もこの内容を見てなにも考えなかったのかしら? 人形まで作っちゃって……」
「いや、いけると思っちゃってさ――説得力半端なかったんだよ……」
朱輝は人差し指をグルグルさせながらいじけた様に返事をする。
阿利洒はやれやれと頭を押さえる。
「見た目と違ってやっぱり年相応で頼りになるのはわたくしだけですか――」
「バカやのになぁ、部長は!」
「煩いですよ!」
「す、すんまそん……」
バカと言われたことで鬼の形相となった阿利洒の顔に鞘歌はたじろいた。
阿利洒はハッとして再び落ち着くと『コホン』と一息つく。
「別にダメとは言いませんが――先方には桃太郎と伝えているのですが。これは桃太郎とはいえませんよ?」
「主人公が桃太郎なんだから通るわよ!」
「――楽部のノリとしては正しいのかもしれませんけどね……」
諦めたような表情をしてため息をつく。
阿利洒の顔には笑顔はなかった。
だが周りの人間は笑顔である。
これはいけるぞと自信満々な夢。
これは笑えると爆笑している鞘歌。
鬼の人形でロボットとの戦いごっこをしている薺。
みんなの現状を見て安心し始めた朱輝。
この部活にはこういう人間しか集まらないのかと留年している部長が嘆いていた。