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01 利根川河川敷

私の家から最も近くて、いろいろ遊べる河川敷です。オフロードバイクで行く河川敷は楽しいですね。

 オフロードタイプのバイクに乗っていると、アスファルトの道路以外の場所を走ってみたくなる。

 普段は近所の未舗装駐車場で遊ぶ程度にしているが、やはりもっと広いところを走ってみたくなるものだ。

 そんな訳で、天気の良い土曜日、私は家を出て県道を北東方向に向かって走っている。

 空気は肌寒いものの、陽射しは今の時期にしては珍しく暖かい。

 トラックの多い国道4号線バイパスを横切り、凸版印刷の大きな工場を左手に眺めながら走り続けると、埼玉県と千葉県の県境が近付いてくる。

 県境は江戸川にかかる関宿橋の中央になるので、橋の手前が埼玉県、対岸が千葉県だ。

 江戸川はこの辺りでは大きな河川に入る。

 橋を渡っていると軽量級のスーパーシェルパは、よく大きな横風にあおられた。

 しかし今日はそこまで強い風も無く、無事に茨城県に入る。

 関宿橋を渡り終えた先は90度の左カーブ。

 小砂利が散らばっていることも多いので、しっかり車速を落として路面に注意しながら曲がる。

 道は江戸川の土手に沿うようにして下って行き、途中で右にカーブして野田市関宿地区に入る。

 地方の生活道路らしい周囲の景色を眺めながら進んでいくと、途中で視界が開け、正面に利根川の土手、左手の少し離れたところに白壁の城郭が現れた。

 道の左側に立っている案内標識が、白壁の城郭が関宿城博物館であることを教える。

 この博物館は、利根川と江戸川の分岐点にあたるこの地域が、かつては利根川水運の中継地として大きな役割を持っていたこと、高瀬船や通運丸などが往来していたことなど、河川とそれにかかわる産業や河川改修、水運の歴史といったものを教えてくれる。

 今日はそこに立ち寄る予定は無いので、そのまま直進した。

 今度は千葉県と茨城県の県境を迎える。

 先ほどと同じように、これから渡る利根川のこちら側が千葉県、対岸が茨城県だ。

 進むにつれ、道路は利根川の土手に向かって上り坂になり、バイクは境大橋に入る。

 土手の上に出た途端、広大な河川敷と川面が目に飛び込んできた。

 利根川は日本でも最大級の規模を持つ大きな河川だ。

 とはいえ、今の時期は川面の幅が土手から土手までの距離の半分も無く、両岸には草地の河川敷が広がっている。

 私はいつもより穏やかな横風の中で境大橋を渡り、茨城県に入った。

 橋のたもとにある道の駅さかいを左に見ながら、信号を右折して土手沿いの国道354号線に向かう。

 国道への信号を右に曲がり、古河市方面に進路をとった。

 2分ほど走ると、左手の土手上に置かれた高瀬舟が大きく視界に現れる。

 脇には駐車スペースと『高瀬舟乗船場入口・境河岸乗船場』の看板。

 ウィンカーを出して、その駐車スペースに入る。

 川を挟んだ土手の向こうに関宿城が見えた。

 ここは現在、観光船として運行している『高瀬舟さかい丸』の乗り場へ繋がる駐車場だ。

 駐車スペースの端には土手の下の河川敷へ降りる道がついている。

 スピードを押さえてその坂道を降りていった。

 路面がアスファルトからダートに変わる。

 目の前には整備された高瀬舟の乗り場がある。

 バイクを一度そこへ入れ、徒歩で周囲を歩いてみた。

 路面はフラットな砂利のダート。

 乾いているので、雑なアクセルワークをするとリアタイヤが踊りだすだろう。

 これは以前経験して覚えている。

 上流方向に行くとすぐに草地が現れる。

 草地の間にダートの道がついているが、今日はロングダートを走ってどこかへ行くのではなく、スーパーシェルパに乗ってこの草地を楽しむことが目的だ。

 草地に歩いて入ってみた。

 地面はブーツが沈むほど緩くもないが、それほど硬くもない。生えている草の丈も短かかった。

 ちょうど良いくらいかな。

 私はバイクを停めた場所まで戻り、ストレッチをしてからエンジンをかけた。

 ここまで走ってくる間に温まったシェルパのエンジンは気持ちの良い排気音で応える。

 アクセル操作に気を付けながら砂利道を走り、一段高くなっている草地に入った。

 砂利のダートと違ってタイヤが地面を噛む。

 始めはあまり大きくアクセルを開けず、起伏のある草地を一定の速度で進んだ。

 腰はシートから上げ、くるぶしでバイクを挟むような感覚でステップの上に立つ。

 膝と股関節は柔らかく、視線は目の前より少し先へ。

 スーパーシェルパのしなやかなサスペンションが路面の起伏を吸収し、車体の上下はそれほど大きくない。

 吸収しきれない分は下半身で調整する。

 跨ったバイクがまるで生き物のような躍動感を持って進む。

 手綱を握って馬の背に乗るとこんな感じかもしれない。

 楽しい。

 ブロックパターンのオフロードタイヤはしっかりと路面をつかみ、ターンの時もグリップを失う不安はあまり感じなかった。

 スピードを少しだけ上げる。

 加速した分だけバイクの挙動が大きくなる。

 自分の技術でコントロールできる範囲内にスピードを調節し、軽く跳ねるようなバイクの背で、アスファルトの路上では体験できないバイクの動きを楽しむ。

 ヘルメットの中で叫び出しそうだ。

 なんて楽しいんだ。

 天気も良く、風も穏やかなのに、河川敷には私以外に誰もいない。国道を通る車の音も土手の向こう側で止まっている。

 グオン、グオンと足元で唸るエンジンが、起伏に上下をする車体が、生き物のような感覚を増していく。

 舗装されていない、平らですらなく、道ですらない地面。

 この場所が、このバイクの本来の生息域。そして、これがこのバイクの本来の動き。

 駐車場なんかとは比べようもない。

 あまりの楽しさに時間も忘れて草地の上を走り回り、ふと時計を見て先ほどの整備された場所へバイクを移動させた。

 いつの間にか1時間近く経っている。

 そろそろタンクの残量が気になってきた。

 私は川面と関宿城をバックにバイクの写真を一枚撮った。

 今日はこれくらいにしよう。

 ブーツやタイヤ、バイクの下回りなどの泥をざっと落としてからもう一度バイクに跨り、土手の上の駐車スペースに向かって坂道を登る。

 土手の上で一度止まって河川敷の草地を振り返った。

 また来よう。

 私の技術ではこのバイク本来の性能を見ることはまだまだ出来そうには無いが、それでももっとバイクのことを知っていきたい。

 我が家から最も近いこの河川敷は、これから色々なことを知る場所になるだろう。

 私はウィンカーを出し、国道の車の流れに合流しながら、帰路についた。

 二つの県境を越えれば、30分ほどで自宅まで辿り付けるだろう。

 ここは利根川の河川敷。

 我が家から最も近いオフロード・フィールドだ。

我が家から30分ちょっとで行ける楽しいフィールド!

油断して転倒し、足首を捻挫したのもこの場所でした。

教訓にもあふれていますね(;^_^A

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