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物語の始まり

「はれ、ここは・・・?」


「あれ、やっと起きた」


尊が再び目を覚ますと一人の少女が尊の顔を覗き込んでいた。

透き通った白い肌に黄金色の長い髪の毛、青く澄んだ瞳が印象的だった。

あまりの顔の近さに思わずドキリとしてしまった。

とっさに起き上がろうとしたが体に巻き付いている鎖が動作を制限させた。心なしかさっきより鎖が増えている気がする・・・

下半身には申し訳程度に麻の布が被されていた。


「き、君は誰?」


「私はフィアナ、魔導士。お前は?」


「え、えと俺は霧島尊です。高校で化学の教師やってます。」

「タケル?変な名前・・・。なんで教師が全裸で人の家にいたの?この部屋ずっと鍵をかけていたのに・・・」

「うっ・・・。それは何かの間違いなんです!俺は無実なんです!露出癖なんてありません!信じてください!!・・・え、というか魔導士・・・?」


とにかく釈明を繰り返し自分の無実を潔白するが、今フィアナという少女の口から出た単語を聞き流すわけにはいかない。

魔導士?魔導士というと・・・そうだ、小さい時にやったゲームに出てきた気がする。

魔法とか魔術とか、非科学的なものをバンバン使って敵を倒す奴らのことだろうか。

とすると・・・彼女は魔法使い?いや、中二病?だが少女の来ている服はいかにも魔導士って感じだ。もしかしてコスプレイヤー?

一気に疑問が押し寄せてきて頭が爆発しそうになった。

とにかく一番最初に聞かなければならないことがある。


「・・・ここはどこ・・・?」


「ここはガリア大陸に位置するグラナダ。」


ガリア?グラナダ?聞いたこともない地名だ。群馬の山奥にそんなところがあったような・・・なかったような・・・


「・・・お前、記憶が抜けているのか?どこの生まれ?」

「いや、東京都中目黒xxxxx出身です?」


普通なら何ともない質問だが何故か疑問形で答えてしまった。


「トウキョウ?そんな国あったかな?」


そう言うとフィアナは隣にあった大きな本棚から一枚の紙を引き抜いた。

今まで気づいていなかったが部屋を見回すと天井まで届かんばかりの大きな本棚が広い部屋の四方を埋めていた。

床は赤いカーペットが敷き詰められており、肌触りがいい。ベッドと勘違いしたのはこれのせいだろう。

フィアナは床に大きな紙を広げた。紙には大きな島のようなものが書いてあり、中央には見たこともないような記号が描かれていた。何かの字のように見えるがよくわからない。


「トウキョウ?ってどこにあるんだ?」


・・・これは地図だったのか。21年間生きてきたがこんな地図は見たこともなかった。


「・・・ちょっと叩いてくれない?」


俺はおもむろにフィアナにそう頼んだ。もちろんこれは自分が正気なのかをチェックするためのものであり、少女にぶたれて性的興奮を得るとか、そういった意図は全くない。・・・たぶん。


「??叩いてほしいのか?」


フィアナはそう言うと拳を固く握り、フルスイングのパンチを俺の顔めがけて放った。


「ぶっ!!」


少女とは思えないほどの力にまたまた大空へ飛び立ってしまいそうになったが、歯を食いしばりなんとか耐えた。左の頬がヒリヒリと痛む。

・・・やはりこれは現実のようだ

となると俺はタイムワープをしてしまったということか?いや俺の知っている世界では魔導士がいた時代など存在しない。となると・・・俺は何処か知らない世界に飛ばされてしまったのではないか?

・・・知らんけど。


「お嬢様、調べて参りました」

「あ、あんたは!」

バタンとドアを開ける音とと共にメイド服の女が部屋に入ってきた。こいつは俺が最初に目覚めたときに暴言を吐いていたとんでもない女!さっき浴びせられた電流のようなものを思い出し、自然と金〇が縮み上がった。

メイドの手には見慣れたTシャツとズボンが、まるで汚れた物を掴むかのようにして持たれている。


「あ、それは俺の服!!」

「あら、起きていたんですね。・・・これが服?本当に訳がわかりませんわ」

「ロラン、何かわかったことは?」


ロランと呼ばれたメイドは俺の服を部屋の隅に無造作に投げ捨てると左手に持っていた分厚い本をめくり始めた。


「見た目は多少違いますが喋っている言語、尻尾の有無、体型や骨格の形成を見るに種族はユリウスで間違いありませんわ。念のため魔力値を調べてみます」

「なるほど、あと名前はタケルと言うらしい。カガク?の先生をやっているっていうんだが、カガクってなんの魔法分野だ?攻撃魔法?それとも召喚魔法か?」

「・・・はて、そんな魔法科の名前は存じ上げませんわ」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!さっきから魔導士とか、攻撃魔法とか言ってるけど・・・嘘だよね?魔法なんてあるわけないよね?」


俺の発言にフィアナとロランは顔を見合わせた。


「こいつ正気ですの?」

「さっき叩いたから頭がおかしくなったのかもしれない・・・でも記憶があやふやなだけで害はないぞ」

「なるほど、とにかく魔力を調べますわ」


ロランはポケットから出した小さな石を上にかざした。青白い光が俺の全身を包み込む。クリスタルを覗き込むフィアナとロラン


「こ、これは・・・」

「そんな・・・ありえませんわ。ユリウス人のくせに魔力がゼロなんて!!」


困惑した表情を浮かべる二人に対し、なにがなんだかわからない俺は相当なアホ面をしていた。


「研究室で詳しく調べよう」

「待って!調べるのは自由だけど・・・まずは服を着させてくれないかい?それとよかったら鎖を外してほしいんだけど・・・」


「・・・ダメ」


結論から言うと、服を着られてようやく人並みの扱いを受けれるようになったのは厳重な身体検査の後だった。歯の本数から目の網膜、尻の穴まで、丹念に調べ上げられた。

父さん母さんごめんなさい・・・俺、見知らぬ地で汚されてしまいました。


だがその後の話合いの中、わかってきたこともあった。俺は決して死んだわけではなく、夢を見ているわけでもない。

俺は今までの世界とは全く異なる、異世界という所に飛ばされてしまったらしいということだった。

そして何よりも衝撃的だったのはこの世界には魔力なるものが存在し、魔法が使えるという事だった。


広間のようなところに連れてこられ、2人が専門的な用語を連発して会話しているのを横目に俺はおとなしく椅子に座っていた。今の俺には考える時間が圧倒的に足りなかった。


「にわかには信じられませんわ・・・異世界から飛ばされてくるなんて・・・」

「だが、魔法を知らず、魔力を持たないユリウス人なんてこの世界には存在しない。となるとやっぱり他の世界から来たと考えるのが妥当だと思う。それに私はこれが気になるんだ。ゲンソシュウキヒョウってやつ」


実はさっき化学とは何なのか聞かれたとき、フィアナに元素周期表を書いてあげたのだが、見たこともないそうだ。この世界には魔法の概念がある代わりに化学の概念というものが無いらしい。


「真剣な議論中悪いんだけど・・・その・・・もう一度魔法を見せてくれないかな?」


さっき散々魔法というものを見せてもらったのだが、俺はどうにも納得いかなかった。手のひらから炎やプラズマ的なものをいきなり出され、はいわかりました。と簡単に納得することはできない。


「まだそんなことを言ってますの?ずいぶん疑り深いんですわね」


そう言うとロランの手のひらのにライターから放出されるぐらいの大きさの炎が浮かび上がった。


「うーーーーむむむ・・・」

「納得できましたか?」

何度見ても種も仕掛けも見つからない。本当に手から炎を放出していた。


「お嬢様、このままでは日が暮れてしまいますわ。こいつをどうするかご決定をお願いします。私の考えを言わせてもらいますと、衛兵にとっとと突き出すのがベストだと思いますわ」


衛兵というと・・・警察。背筋に冷汗が流れた。こんな得体の知れない土地でで拘留されるなど死んだも同然だ。

俺はすがる思いでフィアナの方を見た。


「・・・しばらくここにいさせようと思う。どんな世界からきたのか色々聞いてみたいんだ」

「フィ、フィアナさん!!好きだっ!!」


俺は涙を浮かべて喜んだ。まさか少女に涙を流して感謝する日がくるとは・・・。ロランはすごく嫌そうな顔をしていたが見なかったことにしよう。


「・・・そうなると色々と申請が必要となりますわ。政府に住民票を発行してもらわないと不法居住者扱いされてお嬢様まで捕まってしまいます。そもそもなんと説明すればいいのやら」

「とにかく街に行こうか。タケルついて来い」


広間から出て玄関から外へ出ると目の前には広大な草原が広がっていた。。


「こ、これはすごいっ!!」


思わず声を出してしまった。こんな広い草原、俺が今までいた世界にあっただろうか。俺の横を涼しい風が颯爽と吹き向けていった


「驚いてないでとっとと馬車にお乗りなさい!」


玄関で立ち止まる俺を押し飛ばし、ロランが家の横にあった馬車らしきものに向かって歩き出す。ここでは馬が移動手段なのか。しかし、馬車と言っているが肝心の馬が何処にもいない。辺りを見回すが馬小屋らしきものさえ見つからなかった。


「あれ、馬は・・・?」

「はぁ・・・本当に何も知らないのですね。全く、どれだけ野蛮で無知な世界から飛ばされてきたのか・・・先が思いやられますわ」

「・・・野蛮で無知で悪かったな・・」

「まあ見ていろ」


フィアナはそう言うと胸に手を当て、目を瞑った。突如、青い炎が地面に現れたかと思うとその炎は瞬く間に馬へと姿を変えてしまった。


「まじかよ・・・」

「さあ乗ってくれ。そっちの世界の話を聞きたいんだ」


フィアナは華奢な体でヒョイと馬車に乗ると、呆然としている俺を手招きした。


なるほど、俺の中でも一つの結論が出た

今は細かいことを考えるのはやめよう・・・


俺は一体どうなってしまうのだろうか・・・

大きな不安と少々の期待を胸に秘め、馬車はゆっくりと進みだした


ご覧いただきありがとうございました。

勢いで書いているのでおかしな点が多いと思いますが

楽しく読んでいただけたら幸いです。

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