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プロローグ

「・・・であるからー、炎に元素を含んだ化合物なんかをかざすと・・・ほら!炎の色が変化したのがわかるだろ!!ほら!!」


「・・・」


「・・・スピー・・・」


「はい・・・これが炎色反応というものです・・・」


キーンコーンカーンコーン♪


授業終了のチャイムが鳴ると生徒たちは鬼の早さでノートをたたみ、適当に終わりの挨拶を済ませると各々の教室へと撤退していく。


業中には決して見せない笑顔を見せて・・・


「あいつら・・・ゾンビなのか!?能面被っているのか!?」


俺、霧島尊は化学教師採用試験を華々しく合格し今年からここ、南高校に勤め始めた新米教師である。

化学の楽しさを必死に教えようと努力する日々だが、もうダメかもしれない・・・

出勤初日、心躍っていた俺にベテラン教員が一言、諦めろと言っていた理由が最近になってようやく理解できた。


ここにいるのはやる気のない生徒ばかり、頭の出来はいいが何かが足りない。

だが現実とはいつだって自分の思うようには動かない。今回だっていつもと同じ、期待していた俺が馬鹿だったのだ。

ああ、どこか大空に飛んで行きたい・・・教えを必要としてくれる人の処へ・・・

そう考える毎日である


「・・・片付けるか」


どんなに嘆いても次の授業は始まる

そう思ってガスバーナーから吹き出す炎を止めようとコックを捻ったとき

奇妙な違和感が全身をを駆け巡った。

次の瞬間、眩い閃光が辺り一面を支配した。


「うわぁ!!!」


どうなったかを考える間もなく尊の意識は大空へ飛び立っていった



遠くのほうから誰かの声が聞こえる・・・

母さんか?となるとさっきの爆発は夢・・・?よかった・・・

たまに異常なほどリアルな夢を見るが、その類だったのだろう。


「うう、聞いてよ母さん。すげー怖い夢を見たんだ。もう出勤しなきゃ・・・今日って何日だっけ?」


異様に重たい瞼を開く努力をしながら母親にそう尋ねた。なんだか体中が痛い。それに何故か全身がスースーするような・・・


「ガリア歴4815年、4月20日だけど」


「そう、今日はガリア歴4815年の4月にじゅ・・・」


思わずスルーしそうになったが明らかにおかしい。主に西暦がおかしかった。


「何言ってるの母さ、ブハァ!!」


言い終わる直前、顔面にバケツをひっくり返したような水が浴びせられられた。一瞬で先ほどまであった眠気が吹き飛んだ。


「何すんだよ!母さ、あれ?」


「キャァーーーーー!!生きてますわ!!お嬢様!こんな化け物に近づいてはいけません!」


目を開けると、目の前でメイド服を着ている透き通った肌の女性がいた。肌の色が白すぎて黒髪がとても浮いているように見える。・・・一応言っておくが母さんではない。

メイドは俺に向かってやたらめったらに罵り声をあげている。

とにかく辺りを見回すが、そもそもここは自宅のベットの上ではないらしい。起き上がろうと試みるが体が全く動かなかった。

自分の体を見ると体中に鎖のようなものが巻き付けられていた。なんだこれは・・・?

ステンレス製のチェーン?いやアルミニウム製か?

・・・・いや、今はそんなことを考えている時ではない。もっと重大なことに気が付いてしまった。全身の血の気が抜けていくのがわかった。

俺は服を着ていなかった。パンツすらはいてない、生まれたままの姿。


・・・これは捕まる!!!


見知らぬ家で全裸、全く身に覚えがないとはいえ警察を呼ばれても文句は言えない。


変態教師またまた逮捕


と大々的に報道されてもおかしくはない状況だ。明日の朝刊の一面を飾ってしまう前に何とかしなければ!


「これは違うんです!!ホントに違うんです!!」


もはや何が違うのか自分にも理解しかねる。


「死ね!変態!」


メイド服の女がそう叫ぶと同時に尊の体に電流が走った。

尊の意識は再び大空へと飛び立っていった。


「はぁ・・・はぁ・・・フィアナお嬢様、お怪我はございませんか?」

「私は大丈夫だが・・・これは一体・・・?」


フィアナと呼ばれた中学生ぐらいの少女は不可思議そうに首を傾げた。


「・・・きっと新種のゴブリンですわ」


これが俺、霧島尊と魔導士フィアナの最初の出会いであった

同時に、化学と魔法、二つが出会ってしまった運命の日でもあったが

当の尊は知る余地もなかったわけである





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