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恋愛症候群  作者: 真殿悠
第一章
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前向性

「そりゃただで黙ってろなんて言わないけど……何させるつもりよ」

「そんな難しいことはない。とりあえず話を聞いてくれ」


芽衣にはことの顛末を簡単に話した。


ネイティブの転校生が来たこと。

自分が恋愛症候群になってしまったこと。

相手にはそれなりに気に入られたこと。

つい流れで自分がネイティブじゃないと言いそびれてしまったこと。


あまり表情を変えず聞いていた妹だったが、俺の話が終わると呆れたようにこう言った。


「バカじゃないの」


仰るとおりでございます。


「ていうか何、ちょっと気に入られたいからってまさかネイティブだなんて嘘つく? ありえないでしょ」

「嘘っていうか、勘違いさせちゃったっていうか……」

「言い訳しない! 黙ってる時点で一緒だから」

「はい! すいません!」


いやもう返す言葉もございません。


「で、めちゃくちゃ面倒なことになってて、しかもだいたい全部兄ちゃんのせいってのはわかったけど。それで私にどうしろって?」

「それがですね、もうちょっとこう、華さんと仲良くなりたいなーなんて……」

「はああぁぁぁ!? バカでしょ!! あんた絶対バカでしょ!! バカじゃなかったらゴミでしょ!!!」


それを聞いた芽衣の顔は阿修羅も真っ青な形相だった。

可愛い小学生の女の子がそんな顔しちゃいけませんよー、なんてことは口が裂けても言える空気じゃない。


「私も自分で頭がいいとは思わないけどさあ、まさか自分の兄がこんなバカだったとは……はあ……」

「それでですね、芽衣さん」

「何?」

「できることなら、こういうとき女の子は喜ぶんだよーとか、そういう心構えみたいのを教えて頂けると嬉しいかなー、って」

「金」

「えっと……」

「金もらったら嬉しいに決まってるでしょ」


身も蓋もない。

いやそれはそれで全くの正解なのだが、かといって俺が聞きたいのはそういう話ではないのだ。


「もっとこう、中3の男子でもできるような、手軽なこととか、ないですかね……?」

「あーよくわかんないけどあんた顔は悪くないから適当にそこら辺のイケメンと絡んでるといいんじゃない?」

「それってBLだろ! 絶対自分が好きなもの言ってるだけじゃねえか!」

「ホモが嫌いな女子なんていない!」

「あ、はい」


一喝されてしまった。

とはいえその方法は却下だ。

俺自身の恥や外聞といったデメリットもそうだが、下手するとドン引きされるだけで終わる。

彼女にはこんな妹と同じ次元に落ちて欲しくないところだ。


「じゃあさじゃあさ、芽衣はなんか欲しいものとか憧れてるものとかないか?」

「え、なんかいいものくれんの? じゃ金! 金頂戴!」

「お前にやるわけじゃねえ!」


全くどこの守銭奴だお前は。


「そうじゃなくて、お前が欲しいものを聞けばせめてもの参考になるかと思って」

「なんだつまんない」

「で、なんかないのか」

「うーん……金以外だと、BLとか」

「却下」

「わがままだなあ。じゃあ…………文房具?」

「文房具?」


これまた随分と実用的なところに落ち着いたな。


「そんなんでいいのか」

「例えの一つよ。馬鹿正直にペンを渡してもすっごい微妙な顔されて終わるでしょうね」

「ならどういう意味だよ」

「消耗品でかつ普段から身近で使うもの、って意味よ。ていうか中学行ったら授業も全部タブレットで手書きなんかしないって聞いてるけど」

「確かにペンで書く機会なんてほとんどねえな」

「でしょ? だから、さっき言った条件に合うような他の何かってことになるんじゃない」

「そうは言ってもねえ」


生憎と、同年代の女子が普段使うもの、と言ってもパッと思い浮かばない。

そもそもそんな簡単に思い浮かんだらこんな妹に聞いてないか。

とはいえ確かにその方針は間違っていなさそうだ。

普段から使う消耗品。

もらって嬉しいもの筆頭だな。


「具体的に何がいいんだ?」

「知らないよ。自分で考えてよそのくらい。さすがに私も中3のネイティブが欲しいものとか言われてもわかんないって」

「そういう元も子もないこと言わない」

「めんどくさいなあ」


少しは真面目に考えてくれている様子だが、結局俺より少しは正解に近い存在にいるというだけで、芽衣もそう簡単に答えがわかるわけじゃないのだろう。

まあ一旦プレゼントのことは後回しだ。

まずはそういうものを、例えば誕生日に渡しても不思議じゃない、そんな関係を築くことからスタートしなければ。


「何にせよありがとな、色々考えることは多そうだ」

「どういたしまして、って言いたいところだけど、一つ忘れてない?」

「何が」


この期に及んでまだアドバイス料でも要求しようというのだろうか。

さすがに俺もこれ以上無い袖は振れないし、こっちには秘密を握っているという切り札もある。


「これは私のせめてもの好意で言うんだけどさ」

「だから何さ」

「兄ちゃんさ、自分が病気だって忘れてるでしょ」


突き刺さる一言だった。


口が悪い妹との仲は良好です

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