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恋愛症候群  作者: 真殿悠
第一章
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遺伝性

華の俺に対する信頼は、その親友と重ね合わせているところが多分にあるはず。


病院からの帰り道、ふとそんな分析をしてみた。

さっきの距離の近さは初対面にしては異常とも言える。

元々がパーソナルスペースが狭い人間ならまだしも、今日の学校の様子を見る限りとてもそうは思えない。

珍しくネイティブ同士だから、なんて彼女は言っていた。

勿論その理由も重要なのだろうけど、きっとそれだけじゃない。

俺は名も知らぬ誰かの代わりとしての役割を求められている。

心細さを紛らわせるための人形遊びのようなものだ。

確証はないけれど、なんとなくそう思った。


俺はそれが悪いことだとは思わない。

少なくとも今俺がやっていることと比べたら可愛いものだ。

誰だって寂しいときは誰かに縋りたくなる。

多少重ね合わせているだけで、俺にその親友と同じように振る舞え、なんて求めているわけじゃないのだ。

けれど、俺の中にその誰かへの嫉妬が芽生えるのを止める理由もなかった。


嫉妬。

今まで経験したことのない感情だ。

やっぱり恋愛症候群ってのは面倒な病気だな。



その後、華と別れ帰宅した。

彼女はもう少し病院に用があるらしい。


「おかえりー」

「ただいま。今日の晩飯は?」

「ハンバーグ!」

「ふーん」

「なんだ、あんた好きだったでしょ。もうちょっと喜んでもいいんじゃないの」

「マジで!? ハンバーグ!? 超嬉しいんだけど!! もうこれで俺いつ死んでも後悔ないわ!!」

「バカじゃないの」


母親とはいつも通りのやりとりだ。

大丈夫、おかしなことは言っていない。

至って普段通りの会話だ。


「父さんはまだ帰ってきてないの?」

「今日はちょっとやることあるらしいよ。学会近いみたいだし」

「じゃ飯も遅くなるとか」

「それが食べてくるって言うのよ。せっかく自分でハンバーグ食べたいって言ってたのに可哀想よねえ」

「そういや好きだったっけ、ハンバーグ」

「そういうところ子供っぽいところあるのよね、あの人。学校どうだった?」

「転校生が来たよ。しかもネイティブ」

「あら珍しい」


…………さて、これからどうするか。

恋愛症候群のこと。

家族に言うべきなのは間違いない。

先に言っておかないと、後々余計な心配をかけるだろうから。

けれどそれを言ったとして、事態が好転するとも思えない。

特にあの父親はそういう人だ。


俺の両親は二人とも医者をやっている。

職場で知り合い結婚したらしく、その理由を聞くと母親曰く「気が合ったから」だそうで。

ちなみにどちらもデザイナーズチルドレン。

たまに鬱陶しく思うことはあるけれど、どちらも立派な親だ。

それなりに尊敬しているし、その気持ちは忘れていない、と自分では思う。

ただ一つ大きな問題がある。

大きな問題が発生した、と言ったほうが正確か。

二人ともが恋愛に対して、とても否定的なことだ。

正直俺自身は恋愛そのものに対して、そこまで忌むべき存在とも思えない。

いざ自分が恋愛症候群になってしまった今でも、わりと抵抗なく受け入れることが出来ている、と思う。

だがあの二人はきっとそうじゃない。

自分の息子が恋愛症候群だと知ったら。

きっと俺を責めることはしない。腐っても医者だ。病人を責めても仕方のないことは知っているはずだ。

だが、そのやり場のない憤りは、きっと自分達を責める。

二人とも責任感の強い人だ。

きっと自分の責任を必死で探そうとするだろう。

俺に優しく「お前は悪くない」と声をかけてくれるだろう。

それは確信を持って言える。

俺は、そんな親を見たくない。


とはいえいつかは言わなければいけないことは事実だ。

少なくとも今すぐ言うことはしない。

覚悟が決まってから、なんて先延ばしの常套句を使いたくはないけど、俺自身もまだ飲み込めていないことだってある。

ひとまず紹介された病院を受診してからでも遅くはないんじゃないか。

そうやって自分に言い訳をしながら。


ならば今何をするべきか。

親に話す、という選択肢はひとまず脇に置いておこう。

それはまだこれから先、もう少し後でやるべきことだ。

それならどうするか。

幸いにして、俺はもうひとつの選択肢を持っている。

信頼できる家族に話す、という条件を満たす選択肢を。


「ねえ、芽衣は帰ってきてる?」

「自分の部屋でなんかしてるわよ」


妹に、相談してみよう。

真面目な人達です

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