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恋愛症候群  作者: 真殿悠
第四章
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極体


「なあ華、今週末暇か?」


昼休み、食事も一段落したところでそんな話を振ってみた。

思い立ったが吉日、芽衣に相談した翌日に話をすることにした。


「おや、デートかい?」


どうしてこう橘はぶっこんでくるのか。

お前俺が恋愛症候群だって知ってんだろ。

あなたの大好きな恋愛症候群についての毎日のレポートがなくなっちゃいますよー、とでも言ってやりたいところだが、そこで口を慎む程度の分別ぐらいは持っている。

それに華との話に決着が着いた暁には、恋愛症候群に関連して握られた弱みもなくなっているはずだ。

つまりこれ以上橘に毎晩のレポートを提出しなくても済むということに他ならない。

そう思えばこいつのこんな行いも寛大な心で流してやるのが王の器というものではないだろうか。

とは言ってもうまくいけば、の話だが。


「そうじゃねえよ。うちの妹の芽衣がさ、会ってみたいって」

「青葉くん妹がいたんだ!」

「ああ」


そういえば話してなかったっけ。


「いいなあ。私お兄ちゃんしかいなかったから、妹って響きは魅力的なんだよねえ。いいよ! もう週末と言わず今からでもおっけーだよ」

「いや、あいつもやることがあるらしくて週末がいいってさ」


そのやることがBL漁りだなんて口が裂けても言えないが。


「そっかー残念。その妹の、芽衣ちゃんだっけ、今いくつなの?」

「11歳になったばっかの5年生」

「まだ小学生なんだ! 絶対可愛いんだろうなあ。楽しみー」


まだ見ぬ少女へと夢をはせる華。

まあ確かに見た目は家族の贔屓目を抜きにしても可愛いほうなんじゃないかと思う。

デザイナーズチルドレンがあふれたこの世の中、容姿なぞいくらでもいじれはするのだが、やはり歳相応の可愛らしさというものは遺伝子操作だけではどうにもならない。

そう考えるとあんなのが妹だってことが奇跡と思うほどに可愛い。

ちなみに中身のほうは基本暴力的でBLにはまっているようないいご趣味をしていらっしゃるが、あれはあれでたまに可愛いところを見せてくれたりもするので総合的に見るとそれなりに可愛い。

結論として外見も中身も可愛い。

あれ、うちの妹って完璧じゃね?


「なんだか楽しそうなお話してますねぇ」


そう言って割り込んできたのは黒磯だった。

修学旅行以来、彼女も俺達と一緒に昼飯を食べる輪に加わるようになった。

それまでどこで食べていたんだろうという疑問はあったが、下手をすると相手のトラウマを掘り返しかねない代物なので、あえてスルーの方向だ。

人間、誰にだって知られたくない過去くらいあるだろうさ。


「別に、うちの妹が可愛いってだけだぞ」

「むー、それは同じ妹としてライバル心が燃え上がる話ですね」

「4つ下の小学生に何言ってんだか……」


同じ妹として、ってお前は俺の妹じゃないだろうに。

それとも全国妹協会みたいなものがあって、そこでは日々妹達が切磋琢磨し合い妹力を磨いている……ないな。

あまりバカな妄想をしていると芽衣に後ろから思い切りぶん殴られそうだ。


「その話、ボクも興味があるね」


更に橘が会話に加わってきた。


「ですよね、ですよね! 青葉くんの妹さんって全然想像つかないです。まさかお兄さんのようにすごい無愛想なのかなーとか色々想像しちゃいますし、これでもしすっごい美人さんだったりしたらもうびっくりですよ!」

「想像できないのかできるのかどっちだよ」

「もう。いろんな想像が出来過ぎちゃって、逆にわからないって言ってるのがわからないんですか?」

「ちょっとわかんないわ……」


しかも君何気に俺に対して相当失礼なこと言ってたよね。

いや、ここは王の器を持つものとして寛大な心を持って接するべきである。

これぐらいで怒っていたらいくつ器があっても足りないぞ。


「それでどうだろう、ボク達も青葉君の妹に会ってみたいと思うんだけど大丈夫かな」

「あー、まあいいんじゃねえの」


今回は特に誰かに対して秘密にしておくようなことがない。

芽衣と橘を組み合わせたらいやーな化学反応が起きてしまいそうでそこは躊躇われるところであるが、積極的に断る理由もない。

まあ芽衣は華よりもむしろ橘と話したがっていた節はあるし、多少人数が増えたところで問題はないんじゃないか。

ということで、ここにいる奴らと芽衣を会わせることに決めた。


「一真、お前はどうする?」

「俺はどっちでもええが、どうせ暇だから行くことにするか」


この中で唯一芽衣と面識のある(と言っても家に上がるときに俺を介してお互い見かけたことがある程度なので、実質初対面のようなものだが)一真の参加も決定だ。


「お、ちょっとした遠足みたいになってきたねえ。それでそれで、何時にどこ集合?」

「そうだな、土曜の14時に校門前でどうだ」

「おっけー。みんなもそれでいいよね」

「大丈夫です」

「問題ないよ」

「ああ」

「何か持ってくものとかある?」

「特に要らないんじゃないか。うちに来るだけだし」

「わかったー」


案外あっさり決まったな。

いや、余計な回りくどい作戦を挟まなければこんなものか。

今までが変に手間をかけすぎていただけなのかもしれない。

後ろめたい隠し事がなければそうそう失敗なんてしないぞ、と神様に笑われている気分だった。





「でかした!」


事の次第を芽衣に報告すると、大きな声でお褒めの言葉を頂いた。


「今回は華さんだけでも会えたらなーって思ってたけど、まさか橘さんまで連れてきてくれるとは、兄ちゃんのくせにやるじゃない」

「向こうが会いたいって言っただけだけどな」

「ほんと! それじゃあもうこれは運命よ。運命が2人を引き合わせることを決定したの。土曜日が楽しみで仕方ないなあ」

「喜んでくれたならなによりだ」


実際喜んでもらえるだろうとは思っていたが、こうやって素直にリアクションを表現してくれるとやはり嬉しいものである。

人間何事も素直が一番だ。

普段の芽衣を見ていると特にそう思う。


「それじゃあ土曜日は、兄ちゃんは私の部屋に入って来ないようにね」

「へ?」

「当たり前でしょ。私が兄ちゃんの友達とお話するんだから、そこに兄ちゃんがいたら邪魔でちゃんとお話できないじゃない。だから兄ちゃんは自分の部屋で待機ね」

「う、うーん?」

「ほら、わかったらとっとと出て行って。新しいBLゲーが出たばっかりで忙しいんだから」


言うやいなや部屋を追い出されてしまった。

う、うーん?

勢いで丸め込まれた気分だが、冷静に考えると正しいようで明らかに間違っている理屈だぞ?

素直で可愛い芽衣はどこにいったんだ?



教訓。

間違ったことには間違っていると言う勇気を持とう。


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