表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛症候群  作者: 真殿悠
第三章
41/67

自己複製能

翌朝。

ホテルでの朝食は、今まで食べたどの食事よりもおいしく感じた。

やるべきことをやった後の食事ってのはこんなにもうまいのかと、新しい発見があった。

考えをまとめることも必要かもしれないが、やはり実行に移してこそナンボだと思う。

こうやって澄んだ気分で頭が冴えた気持ちのいい朝を迎えた今、尚更そう思う。


さて今日の予定はと言えば。

巽市の観光、以上。

ざっくばらんに言ってしまえばそれだけであり、そんなにもである。


ここで軽く巽市の紹介をしておこう。

人口50万人面積8万ヘクタール。

海に面しておりその面積の多くを山地が占めるため、特産物は主に海産物だ。

中でもサメがよく獲れるためフカヒレとかまぼこはお土産としても定番になっている。

まあ何時の時代もフカヒレは高級品なので中学生には縁のない話であるが。

あと歴史が古い。かなり古い。

日本の発展は江戸の昔に上方と江戸を中心に、外様の島津や伊達のような個々の強い勢力が独自に発展を遂げていった経緯がある。

だが巽市は江戸どころか奈良や平安の時代から、その海運を武器に隠れた都として歴史を重ねてきた。

そのため息を潜めていた江戸時代が明けた明治維新を境に、また発展の中心として大きく羽ばたくことになったのだ。


以上ネットの検索サイトより。


観光するからには最低限の知識を仕入れておくのがたしなみというものだが、あまり予習はしない派だ。

予習したところをしっかり決めて周るよりもその場その場でふらっと巡るほうがなんとなく旅をしている気分になれそうだし。

しかし今回ばかりはそういうわけにもいかなかった。

いくら観光とは言っても修学旅行、そんな目的もない気楽な旅は許されないのだ。

いくつかの名所旧跡を巡ることが求められ、あとでそれをまとめて提出しなければならない。

提出は班ごとなので俺一人が頑張る必要もないのだが、頑張らなければならない理由が他にある。

当然華と話をするためだ。

一応今日の夜にでも話せれば御の字なのだが、昨日あれだけ計画しておいてようやく夜の最後の最後になってなんとか2人で話をすることに成功したのだ。

きっとうまくいかないだろうという気はするが、なんとか2人きりで話をするタイミングを作りたいものだ。

トライアンドエラーを繰り返さないと見えてこないことだってあるわけだしな。


というわけで俺が立てた計画はこうだ。


①午前中は史跡巽城を見て、提出するレポートの大枠を決める。

城という歴史的な観光名所なら巽市自体の歴史を調べることもできるだろうし、ここでレポートの資料を集めておければという考えもある。

ちなみにここは特に華と話そうということは考えていない。

むしろここでしっかりとやるべきことを済ませておけば後々楽になるという算段のほうが強い。


②昼食は名物のトルコ料理。

他所の国のしかも今はなき国名を使った料理が名物って、歴史ある街としてどうよとは思わなくもないが、実際評判を聞いてみるとそれが一番好評な料理だという。

確かにトルコは地中海に面しており、世界3大料理にも数えられるほどおいしいという。

班内でもおいしくなさそうな伝統料理よりおいしそうな外国の料理を、ということで満場一致で決定した。

華と喋れたらいいけど、昨日の様子を見る限り難しいだろうなあ……。


③午後は2つ。1つ目は100年前から稼働し続けているというスパコンだ。

スーパーコンピュータ、略してスパコン。

昔から煩雑で膨大な計算やデータ処理を担う重要な装置だ。

しかしムーアの法則ほどではないが、100年も経てば当時のスパコンも今のパソコン以下の性能に落ち着いてしまう。

だがことこのスパコン『陽炎』に関しては事情が違った。

100年経った今でも現役なのだ。

まずこの陽炎は他のスパコンとは異なり計算やデータ処理を目的にしたものではない。

「人間の感情を理解させる」名目で作られたのだ。

人間のニューロンやグリアなどの機能を擬似的に再現し、その発達も指向性を持たせて定義してやれば、何らかの知能を有したコンピュータが生まれるのではないか。

そんな期待を込めて作られた代物だ。

まあ実際はそんなうまくいくわけもなく、とても人間の知能と呼べるものは出てきていない。

しかし指向性を持って自律的に内部回路の増殖を続けており、100年経った今でもそれは衰えることを知らない。

これはもうSFを超えた世界だ。

おかげで世界中から一目見ようと観光客が詰めかける観光名所になっているらしい。

ちなみにこれは完全に俺の趣味で予定に組み込んだので、黒磯は大層不満気な様子だった。

まあ橘と一真はだいぶ食いついてくれたから多数決、ということで。

ファナティックランドのワガママをきいたんだからこれぐらいの役得はあってもいいはずだ。


④最後に行くのは船舶資料館である。

さっき言ったように巽市は海運を中心に栄えた街であり、スペインのガレオン船のように独自の船舶技術が発達した。

昨日資料館で今日も資料館ですか、とは黒磯の弁だが、他にそれらしい代案も出てこなかったのでここに決まった。

班員の誰もが乗り気じゃないが時間とレポートの紙面を埋めるために行くという、なんとも意義の薄い校外学習だ。



こうして予定を見返してみると、やはり華と2人で話せるタイミングを作るのは難しそうである。

始まる前は適当に2人で抜けだして、とかなんとか思っていたがいざやってみるとなかなかどうしてうまくは行かないものだ。


それじゃまずは、お城巡りといきますか。

スパコンの人間化は掘り下げるといくらでも突っ込みどころが出てきてしまうので、違和感があっても温かい目で見守って頂けると幸いです。



ムーアの法則:1年半でコンピュータの性能は2倍になるということを予言した


ガレオン船:大航海時代のあれ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ