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恋愛症候群  作者: 真殿悠
第三章
30/67

欠失

さて、どうにかして華と2人きりになれるタイミングを作らないとな。


最悪横に一真が居ても大きな問題はないのだが、そうやって親友に助けを求めるのもちょっと違うだろう。

これは俺がやらなきゃいけないことの一つだ。

それに一真がいるとしたら同時に橘もいる可能性が高い。

あいつはいけない。

嘘の告白というある意味醜態を晒す場面に同席なんてさせたら、それはもう俺の弱みを丁寧にラッピングして進呈するも同然だ。

うまく言えるか、華が受け入れてくれるか、その後で問題が起きないか。

正直なところ多々ある障害を全てうまく乗り越えられる自信もない。というか一つでも乗り越えられる自信はない。

そういう無様な途中経過を晒せば、ただでさえ水面下で握られている首輪に繋がったリードが、絞首刑用の縄に変わりかねない。

一真なら俺の醜態ぐらい見慣れたものだし、新たにまた見たとしても精々が内心失望するぐらいだと思う。というか今更どうこうなってるくらいなら伊達に9年目の付き合いはしてないさ。

だが橘がそういう醜態を見たら、そこから更に俺の苦手なものを推測するくらいはやるだろうし、そしてそれを悪用しそうだ。ていうか絶対する。

逆に言えばそういう経緯をすっ飛ばして「俺の嘘が解決したという事実」だけを事後報告で知らせたら、弱みを握られる心配は限りなくゼロになるわけだ。

しかも橘はかなり悔しがるに違いない。

そして橘が握っている秘密は意味を成さなくなり、俺は晴れて呪縛から逃れることができるというわけ。

ま、日記に関しては一から十まで嫌だったわけじゃないけど、さすがにあの息の詰まる義務感はもうこりごりだ。

とはいえこれは全てがうまくいった場合の話だけど、そうやって理想を設定し思い描くこともモチベーション維持のためには不可欠だ。

ていうかそういうメリットを常に意識していないとすぐ挫けそう。




というわけで、


「一真、一つ頼みがある」


困ったときのかずえもん。

きっと4次元ポケットはなくとも何かはしてくれる。


「なんじゃ藪から棒に」

「華と2人きりになれるチャンスを作ってくれ」

「そんなん『2人で話したいんだ』とでも言えばすぐじゃね」


あれ? かずえもんわかってくれない。


「そうは言うけどそれが難しいんだって。橘とか絶対に覗きに来るでしょ」

「うーん、確かに結衣はそういうの好きそうだけど、さすがにそこまでするか?」


いやするって。じゃなきゃあんな日記書かせたりしないって。

とは間違っても言えないので誤魔化すだけにしておく。


「念には念をってやつで。そこら辺一真なら信頼できるからさ」

「まあ……そう頼られるのは嬉しいけどあずましくねえな」

「てことはやってくれるか!」

「しゃあないし」


それでこそ我が親友、心の友よ。


「やるのはいいけど、具体的になにせっちゅうの」

「ひとまず4人でどこかへ出かけようと思う。今度修学旅行あっただろ? あれ俺たち4人で組もうぜ」

「そんなことなら頼まれるまでもなくそうするつもりだったぞ」

「それは話が早くて助かる。それで、そこから少しだけ抜けだして俺と華の2人きりになりたいわけだ。だがそれには大きな障害がある。さっきも言ったけど、橘だ。あいつはそんな状況になったら絶対俺たちを探そうとする。ていうか橘でなくても2人が途中で抜けだしたら不自然に思うのが普通だ」

「そりゃそうだな」

「なので、一真にはあいつの相手をお願いしたいんだ」

「なるほどな」



作戦はこうだ。


来る5月の半ば、修学旅行がある。

中3で最も重大なイベントと言っても過言じゃない修学旅行だ。

そしてこの旅行は基本的に班行動が全ての単位となる。何をするにも事前に決めた班で行動しなければならないのだ。

逆に言えば自分の班員以外と接する機会が限りなく低くなると言い換えてもいい。

つまり外敵ではなく内敵にさえ気をつけていれば、余程突拍子もないことをしない限り目立つこともないということである。

この場合の内敵とはもちろん橘だ。


そして班単位ということに限れば、班毎が孤立するタイミングなんていくらでもある。

自由散策やホテルの中、オリエンテーリングに移動中の乗り物など、班単位で固まらないほうが珍しい。

さすがに班行動でさえあればいつでもいいわけじゃないが、同じ班というだけで極自然な流れで2人きりになることができる。

そのためにはまず華と同じ班にならなければいけないのだが、一真と俺とそして華がいるとなると当然のように橘も一緒に来ることになるだろう。

あいつが他のクラスメイトと話してるの見たことないし。

というわけで細かいタイミングは後でまた決めるとして、一真には俺が華と話している間橘を引きつける役目を担ってもらいたい。

早い話が囮だ。


「このあとのホームルームで班分け決めるだろうからその時はよろしくな」

「おう。でもちょっと面倒だな」

「そこは頼む。まあ橘となら一真もそんなに気負わなくていいはずだし」

「いやそれはそうなんだがさすがにちょっとな」

「なんか引っ掛かることでもあるのか?」

「引っ掛かることっていうか……もう1人どうするつもりなんだ?」

「もう1人?」

「班員だよ班員。お前聞いてなかったのか? 修学旅行の班は5人1組だぞ」


聞いてなかったっす、はい。


新キャラの予感。



※あずましくない:方言。なんとなく居心地が悪い様

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