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恋愛症候群  作者: 真殿悠
第二章
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ターンオーバー

橘結衣はしつこいくらいに俺の日記を読みたがった。

俺の個人IDを教えたのが運の尽きで、毎日20時を過ぎると催促のメッセージを飛ばしてくるようになってしまった。

最初は毎日書かなくてもいいなんて言っていたのと同じ人間とは思えない。

渋々日記を書き上げ送り返すと、ものの5分ほどで感想が返ってくる。

確かに感想が返ってくることそれ自体はモチベーションを高めるのに非常にありがたいのだが、その中身がまるで通信教育の添削でもしているかのようで、はっきり言って萎える。

元々文章を書くことそのものは嫌いじゃないが、無理やり書かされているという事実がただでさえモチベーションを低めているというのに、その上で更にこの仕打ちだ。

こいつは俺のことが嫌いなのだろうか。

いや、あの話しぶりやわざわざ催促してくることから考えてもそうとはかんがえられない。

単純に相手の気持ちを考えるのが苦手なだけ、と読むのが正解だろう。

あいつが俺よりも友達が少ないという事実がその推測を後押ししている。



そんなわけで俺は今橘に見せるための日記を書いている途中だ。

そんなに時間もかけていられないのでパッパと書いてしまおう。

よし、ではこうだ。



"今日わかったこと。

恋愛症候群は面倒臭い。

おわり。"



いやいや小学生じゃないんだからさあ!

我ながらよくもここまで適当な文章が書けるものだ。

きっと心の奥底に眠る面倒くさいという原始的な欲求が自然と俺の手を止めてしまったのだろう。

さすがに書きなおすべきだろうか。

いや俺は頑張った。頑張ったがこうなっては仕方がない。

そもそも毎日一つのテーマについて日記を書き続けるということが無謀なのだ。

小説家だって毎日書いているわけじゃないだろう。たまには気分転換したい日だってあるさ。

俺の場合は今日がたまたまそういう日だったに過ぎない。

俺は悪くない。

もうこのままで出してしまえ。

誰にともなく言い訳をしながら、俺は送信ボタンを押した。



返事は1分と経たずに返ってきた。

さすがに早いなと感心してそのメッセージを開くと、内容は俺が送った文のそれより遥かに短く簡潔なものだった。



"短すぎ

再提出"



まあそうだろうなとは思っていた。

素直にちゃんとした日記を書いておけばよいのだが、さすがにそろそろ面倒臭さがピークに達してきている。

というか恋愛症候群関係の面倒臭さって半分以上こいつが原因なんじゃないだろうか。

実際そんなことはないはずなのだが、こればっかりはそう思わずにはいわれない。

つってもまだ家族とすら相談できていないことをこいつに話すのもなんだしなあ。

先生から言われた話を一般論の範囲で教えておくか。

さしあたってはネイティブに恋愛症候群という病気は存在しない、というところでいいか。

多分こいつが一番聞きたいのはネイティブとデザイナーズチルドレンの恋愛が成立するのかという話なんだろうけど、それをそのままこいつに教えてやるのもなんだか癪だし。



"今日は診察の日でした。

診察と治療のついでに先生に恋愛症候群についてお話を聞きました。

ネイティブに恋愛症候群はないそうです。

どうやらデザイナーズチルドレン特有の病気だそうで、

ネイティブの場合はただの恋愛と言うのだとか。

これに関しては素直にネイティブが羨ましいです。

僕がネイティブだったら恋愛症候群にかかることもなかったのですから。"



まあこんなものでいいだろう。

いつもより短い気もするが、モチベーションの落ちた状態でこれ以上はちょっときつい。

これで提出してしまおう。


やはり返事はあっという間に返ってきた。



"そのくらいは知ってた。

つまんない"



俺の日記なんだから俺が知らなかったことを書いてもいいだろうよ……。


とはいえ再提出という文字が見えないならこれで今日のところは勘弁してくれるということだろう。

というかこれ以上催促されても血の一滴すら絞り出せやしない。



しかし、よくもまあ毎日他人の書いた文章を心待ちにできるものだ。

これは橘だけでなく世間一般的にも似たようなものか。

俺なんかはしっかりと完結したフィクションや新書ばかりを読むから、そうやって新作を心待ちにするという気持ちがいまいちピンと来ない。

第一作者に何かあって新作が立ち消えたら相当ショックじゃないか。

世の中にはそんな新作に限らずとも名作がゴロゴロ転がっているのだから、そちらを選んで読むほうが時間的にも有益に思うのだが。

どうにも世間様ではそれだけではお腹が空くそうだ。

もしかしたら「新作である」ということそのものが一つの価値として成立しているのかな、と肌になれた寝具に寝転がりながら散々見慣れた天井を見上げてそんなことを思う。

なんだか見方によっては読者の方に喧嘩を売っているような内容になってしまいましたが、あくまで青葉君が思っていることであり作者の意図とは違う、と言い訳をさせてもらいたいです。

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