問診
「華と友達になってやってくれ!」
話をするためにあまり人気のないところに一真を連れてきた。
俺の嘘とかあれやこれやがバレると非常に面倒だしな。
「いきなり何かと思えばそんなことか。別にいいけどさ」
「ほんとか!」
「まああの子も悪い子じゃなさそうだし。しかし……」
「ん、なんか引っ掛かることでもあるのか」
「そらめっさある。てか引っ掛かることばっかだ」
「聞かせてもらおうか」
岸一真はいわゆる「いいやつ」だ。
この言葉、皮肉的に使われることもあるけれど、一真に関しては全くそんな意味はなく文字通りの「いいやつ」そのものだ。
きっと東の病気のこどもや西の疲れた母だって、自分のことよりも優先して助けに行くだろう。
正直なんで俺なんかと付き合ってくれるのか、有り難い話であると同時に不思議な話だ。
そんな一真なら、きっと偏見なく華と接してくれるだろう。
そしてそれを一つの足がかりとして彼女が「人見知り」を直してくれたら。
どうやらその予測自体は間違っていなさそうだ。
しかし目論見通りに事が運ぶかは、さっきの反応を見る限りなんとも言いがたい。
「そうだな……、まず聞きたいんだけどさ、お前いつの間にあの子と仲良くなったのよ?」
「昨日だけど」
「前から知り合いだった、ってわけじゃなく」
「昨日会ったばかりだな」
「魔法でも使った?」
「使ってない」
「答えがシンプルすぎて余計わけわからん、イエスノー以外で答えてくれ」
「正直、できるなら俺もそうしたい。一真が何聞きたいかはなんとなくわかるんだけど、説明が難しくてさ」
「なしてそんな複雑そうな事情を抱えてるのよ」
「俺にもよくわからん」
自分で言うのもなんだが、ほんとふざけた答えだな。
誤魔化すつもりもないしできることならわかりやすく説明してやりたいんだけど、生憎と事態を整理して綺麗に説明できるだけの頭が足りていない。
完全に俺の基礎スペック不足だな。
「じゃあ1つずつ、順番に聞いていこう」
「すまんな」
「そうしないと俺もわけわからんからな。えーと、時系列順がいいか。まず昨日、お前は四条院さんに初めて会ったんだべ? お前が忘れてたとかでなく」
「正直記憶力に自信はないけど、初めてなはず」
「……しょっぱなからふわっふわな情報だな」
「いやすまん。でもきっと初対面でいいはず」
「まあいい、初対面だってことで話進めんぞ。で、昨日はいつ彼女と会話したよ」
「放課後病院で」
「また新情報だな。で、どんな話をした」
「転校する前に親友がいたんだーとか、心細かったけど青葉君がいてよかったーとか」
「そこ」
「へ?」
「お前、四条院さんのこと『華』って呼んでるしもしかしてとは思ったけど、お前も下の名前で呼ばれてんの?」
「あ、ああ。『四条院って長いから呼びやすい華でいいよー』って言われて。俺の名前は向こうから呼んでいいって聞かれたからいいよって」
「それで」
「いやまあ、だいたいそんなような話して終わったよ」
「後から連絡とったりとかは」
「特に。今朝教室で喋ったのがその次だから」
「てことは四条院さんは最初っからお前を気に入ってた、と」
「気に入ってるってより、寂しいからって言ってたよ」
「お前の恋愛症候群については」
「うーん、多分知らないんじゃないか? 教えてないし」
「それなのに、最初から親愛度MAXだったと」
「だいたいそんな感じ」
「…………絶対これめんどくせえことになってる」
さっきからずっと険しい顔で話を聞いていた一真だったが、今度はこめかみに手を当て考えこんでしまった。
何かまずいこと言っただろうか。
それともやっぱり面倒だから四条院さんと仲良くなるのは嫌だとか。
いやいや、さすがに一真に限ってそんなことを言うはずがない。
「なあ青葉、一つ俺の予想を聞いてくれ。もし間違ってたら相当失礼な予想だから、今度ハンバーガーでも奢ってやる」
「マジで!?」
「間違ってたら、な」
てことは結構自信あるってことか。
「いいだろう。聞いてやろう」
「何故にそんな偉そうなんだか。まあいいや。要はお前は特に何もしてないのに、四条院さんに気に入られてる、ってことだな。転校初日はあんだけ人と関わろうとしとらんかった四条院さんに」
なんだか含みのある、というか勿体ぶった言い方だな。
「まあ人見知りをする子なのかもしれないけど、だったらお前だけ気に入られるってのもおかしな話だべな。悪いが見た目はもうちょいいい奴がいる」
抗議の声を上げたくなったがここはこらえどころだ。
ていうかこの口調、もしかして。
「で考えたんだがまあこれしかないだろうなと。「ネイティブ」の四条院さんが、「デザイナーズチルドレン」であるお前を気に入る理由は」
あ、これ完全にバレてるやつだ。
「四条院さん、お前のことネイティブだって勘違いしてっしょ?」
これはもう100点満点の答えだ。
一真君は油断するとすぐ方言が出ます




