INSANITY
ちょっとぐろい、かも。
だって、君が好きだから。
誰よりも、僕が一番、君を想ってるいるから。
ねえ、死ぬまで、僕の腕の中に居てくれるよね?
最初は、ただ君が好きだった。君が笑顔でいるだけで、それが僕の幸せだった。
その笑顔の傍に誰が居たって、どうでもよかった。君には恋人がいないから、なんてことを考えもしたけど、一番の願いは君の幸せだったから。ただ純粋に君に好意を抱いていた。
なのに。
僕の心を狂わせてしまったのは、醜い会話。
「8組のあいつさ、あんたのこと好きらしいじゃん」
「知ってる!マジキモイ!いっつも見られてるし!」
その言葉は、確実に僕の心を抉った。
「それにさー私には彼氏がいるし。あんなの興味ないって!」
周りに平等に優しくて、明るい君は、そこには居なかった。人間の、一番醜い部分を曝け出して、卑しく笑う君。
見たくなかった。
僕の目に映る君は、いつも優しくて明るい君じゃなきゃ。
嫌だ。
いらない。
醜く汚れた君なんて。
いらない。
だから、全部消してあげる。
君の醜い部分、全部。
その日、友人の呼びかけなど全て無視して、走って家に帰った。
鋭い、救いの手を握り。
「綺麗なままの君で、死ぬまで僕の腕の中に居てくれる?」
僕は、鞄と一緒に正常な心を投げ捨てた。
君の家へ向かう。君の家の場所も、君がどの道を通るのかも、君がどこで友人と別れるのかも、全部、知ってる。
君の家までの最後の一本道は、ほとんど人通りがないことも。
居た。
醜く、つまらなさそうな顔をして歩く君。
嗚呼…待っていて、今すぐ僕が。
解放してあげる。
「ねえ」
呼びかける。
振り返った君は、いつもの笑顔で笑う。
そのままの君で。
綺麗なままの君で。
僕の腕の中で。
僕の手が君の体を裂く。
驚いたように開かれる目。
君の口が動くより前に。
喉を掻き切る。
君の口から、醜い言葉は聴きたくないから。
力なく崩れ落ちた身体を、恍惚と見つめて抱き上げる。
綺麗だな。
「ねえ、これで、綺麗な君は、ずっと、僕の腕の中だね」
殺したのは、君じゃない。
君の中の、醜い、君じゃない部分。
本当の君は、死ぬまで僕の腕の中。
綺麗なままの君。
(完)