【番外編】もしも・・・鷹臣が奥手でヘタレだったら
本編とは関係のない架空の【もしも】のお話です・・・って、こればっかりです。
*ヒナが鷹臣が「使用人とぼっちゃま」の間柄がスタート設定です。
「ぼ~っちゃま!テニス行きましょうよ、テニス!」
仕事が休みの朝を満喫中のぼっちゃまを外に連れ出すため、ヒナはいつも頑張っています。
せっかく持って生まれたすばらしい容姿や運動神経をまったくもって無駄遣いしているぼっちゃまのために一肌脱がないと!という状態なのです。
ヒナの両親はそれぞれの仕事でいつも不在です。
でも、大丈夫!
使用人であるヒナがぼっちゃまの面倒をみていればそれでOKなのです。
ぼっちゃまは信用されているというより、たとえヒナが下着一枚で寝転んでいたとしても大丈夫と太鼓判の、・・・いえ・・・架空のたとえ話なのでしたことはないですよ?・・・そう、紳士といえば聞こえがいいですが、ちょっと異性関係に一歩踏み出せない方なのです。
本家の跡取りではないですが、皆さんご心配のようでよくお見合い話など持ってこられます。
でも、その先に・・・という話が一切ないのです。
学生時代の頃は押しに押されておつきあいした方は数人いらっしゃったようですが、最近はとんとそういう話は聞きませんね。
ぼっちゃまはヒナに手を引っ張られて何か物を言いたげな顔をしていますが、言葉にしないのでヒナは強引にでも連れ出しますよ!
市営のテニスコートに行けば、テニスサークルなど若い女性(若くない方もいますが)との出会いの確率もアップするでしょう・・・と今回はテニスです。
ぼっちゃまは学生時代にちょっとかじっていたので道具もあります。
やっぱり世間のみなさまにぼっちゃまのかっこいいところを見ていただかないと!
今すぐにお付き合いでなくても、知らない方に慣れて顔見知りが増えれば何かの機会もできるでしょう。
他にもプールや海、ハイキング的なもの、アウトドアなレジャー、冬にはスキーなど、出会いの場を模索するべくヒナは情報収集にいそしんでいます。
婚活のパーティにでも出てくださればいいのに、お見合い同様ぼっちゃまに拒否されてしまいました。
「ぼっちゃま。午前中のちょっとだけでも外の空気を吸いにいきましょうよ。林の中にコートがあるから気持いいですよ。」
「・・・今日は家でゆっくりしたいんだけど。」
やっとぼっちゃまの口から出た言葉はそれでした。
「・・・ヒナ一人ならつまんないですよ。一人で行くなら水着も買ったばかりだし市営の温水プールにでも行ってきます。」
ぼっちゃまは海は好きじゃなさそうだけど、けっこうプールが好きなのです。
ヒナが誘うとだいたい一緒に来てくれるのです。
ちなみに海はしぶしぶ・・・と言った感じですね。
「水着、また買ったの?」
またってほど買ってませんよ。
1シーズンにつき1~2着ですから!しかも今回はキツクなったから買いかえたのです。
きつくなったのは胸だけなので胸を張って言えますよ!
「前のがきつくなったので今回はビキニにしてみました~!」
「・・・一人で温水プールに行くな。もう少ししたらでいいなら連れて行く。」
よし!食いつきました!
やっぱりプールがお好きなんですね、ぼっちゃま。
その引き締まった体を存分にさらしてプールでナンパ(滅多にないけど)でもされるといいのです!
*
「ぼっちゃま~。プールの帰りにスーパー銭湯も行きましょうよ~。すっきりサッパリですよぅ。」
車の中で、ぼっちゃまの"恋活"とは関係ないヒナの希望を伝えておきます。
家を出る前に、水着をぼっちゃまに見せに行ったら「・・・」と無言になってしまいました。
可愛いのに、白のビキニ。似合いませんでしたか?
そのまま上に服を着て出発したので子供っぽいと呆れられてしまったのでしょうか。
ま、いいです。
ヒナはぼっちゃまに出会いの場を提供できればそれで!
その点、プールは出会いの確率が少ないのであまりいい場所じゃないんですけど、全くないよりマシですかね。
プールは市民向けのサービスデーとやらで家族連れがにぎわっていました・・・。
ヒナ、作戦失敗です。
やっぱりレジャープールとかじゃないとダメでしょうか。
ちょっと遠いので泊まりじゃないと難しいんですよね。
「鷹臣さん。今度レジャープールに泊まりで行きましょうね。」
ぼっちゃまはブッと吹き出しました。
?何かウケる要素でもあったでしょうか・・・。変なの。
今日は仕方ないので、二人で流れるプールに行ってみたり、ウォータースライダーにヒナだけ行ってみたり、じんわりと温かいサウナやジャグジーで休憩したりとたっぷりプールを満喫します。
泳ぐ専門のコースでなければ水泳帽も必要ないので、ヒナは髪の毛を上でまとめて水を漂っています。
本気で泳ぐつもりならビキニなんて着てきません。
ぼっちゃまもそうみたいですね。
ヒナが流れるプールの中のとどまっていられる場所にいると、ぼっちゃまが流れてきました。
「ヒナ、そろそろ帰ってメシにしよう。」
そしてなぜかチラリと後ろに視線をやりました。
そうですね。もうちょっとしたら休憩時間になるのでキリもいいですし。
ぼっちゃまに手を引かれて階段の部分に行くと後ろから「何だ、男連れかよ。」という声が聞こえました。
ああっ残念です。
男の人じゃなくて女性に声をかけていただきたかったです。
でも、ふと気がつきました。
もしかしてヒナが一緒だと「女性連れ」として認識されてしまうのではないでしょうか・・・!
連れ出し作戦はそのもの自体が失敗では?
今度からわざとはぐれるようにでもした方がいいのでしょうか。
*
「ぼっちゃま~。早くぼっちゃまが片付いてくれないと、ヒナは安心してお嫁に行けませんよぅ。このまま嫁き遅れになったらどうして下さるんですか~。」
ある日とうとうしびれをきらしたヒナは直にアタックすることにしました。
ぼっちゃまはさも心配そうに「どこか嫁に行くアテでもあるのか?」と的外れな事を言い出します。
そんなもんありませんがな。(と、心でツッコミポーズ)
あったらこの年で交際歴一人・処女なんてやってません!
とは言えないので「ぼっちゃまがご結婚なさったら、本家でお世話していただくつもりです。」と澄まして答えておきました。
するとまたぼっちゃまが何か言いたそうにしていますが、生憎とヒナはエスパーではないので言葉にしていただかないとわかりません。
と、いうか言いたいことがあればはっきり言いやがれ!で、ございます。ぼっちゃま。
もしかして、ヒナじゃお見合いは無理とか言いたいのでしょうか。
確かに本人を目の前にしてそれは言いにくいですよね・・・。(遠い目)
ぼっちゃまに「ちゃんと言葉で言って下さらないとわかりませんから。」と下からじっと見つめて伝えると、ぼっちゃまは何故か赤くなって口ごもってしまいました。
あ~・・・。
アナタは乙女ですか、ぼっちゃま。
せっかくイケメンに生まれついたのに勿体なさすぎです!
イケメンの無駄遣いも甚だしいですよっ。
まだ清華ちゃんの方が有効活用してそうです。
これは作戦を変えてめっちゃ押しの強い女性か、侠気のある女性でも探してこないとだめですね。
だいたい車通勤も出会いの幅を狭めるんですよって、会社までバスや電車使うほどの距離じゃないから歩くしかないんですよね。
いっそのこと車を壊して歩かせようかな・・・。
そして食パンでもくわえさせて走って行かせましょう!
きっとどこか道の角でドジな女性がぶつかってくれるでしょう。
ああっ、どうして学生時代にそうさせなかったのでしょうか、母!
・・・思わず現実逃避してしまいました。
食パンをくわえて走るのはドジな女性のほうでしたねって・・・ちがーう!!
ぼっちゃまは"ラッキースケベ体質"でもないのでそれは無理そうです、しょぼん。
こうしてヒナの"誰かとぼっちゃまの交際を結婚までこぎつける"という戦いは"まだまだ続く"どころか、"はじまり"にさえも届いていないのでありました。
ヒナに鷹兄とすら呼ばせられなかった鷹臣でした。
食パンて、ヒナはいつの時代の本を読んでいるのでしょうか・・・。
もし"この鷹臣"が本編の登場人物なら話は3倍ほどの量になり、たぶんしびれをきらしたヒナに押し倒される側になったと思います。