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酷く蒼く、あまりに赫い  作者: 科次 函舟
2/2

1話_赫

 床の熱さで目が覚めた。

「地獄か」

 驚きはなかった。

 起き上がるまでもなく、眼前に広がる不自然な赫に、私は堕とされたのだと気がついた。

 どこまでも落ちていく様な。それでいて、言いようのない不快感に押しつぶされてしまいそうな。そんな空気を感じる。

「やぁ、ヴィラン。気分はどうかなー?」

 首すら動かさず枕元に立つそれを視認する。

「無粋な名前」

「良いでしょ。だから君はこんな所にいるんだよ。償いを強制されるんだ」

「あんたは?」

「獄卒って呼んでね!」

「名前を聞いてる」

「あいにく名前なんてものは無いんだごめんねー。私は端末に過ぎないからさ。ここの管理を任されているだけのねー」

「そんな奴が何のようだ?」

「いいや。用なんてもんじゃないよ。チュートリアルみたいな? 心のないNPCがただ事実を告げるだけのね」

「はぁ。それじゃ、なんだ」

 私は口に出すのを憚っていた。自分自身それに気がつくと、口を噤んで、少しだけ間があって、

「俺は死んだのか」

 そう問いかける。

「どうだろう。少なくとも君は堕とされた訳だからね。自分の胸に聞いてみたら?別に難しい問いではないはずなんだけどね」

「そうか。そうだな」

 曖昧な言い方に。私は何を問い質すべきかを悩んでいた。

 ――実際の所、思い当たる節がなかったのだ。

「償いの強制か」

「あぁ――不服? 君はもしかして自分のしたことを正しいことだと思い込んでいたのかな」

「別に。強制される物ではないだろうと思っただけだ。悪いとも思ってねぇしな。それで? 血の池を泳ぐか。針の山を登るか」

「ふふっ、ステレオタイプで結構結構。だけどねー、そうじゃないんだ。ここで過ごすこと。それ自体がこの世界の役割なんだよ」

「過ごす……ね」

 私はようやく起き上がる。奇妙な空間だった。吹き抜けの天井に、扉も窓もない部屋。

 彼はどうやって入ってきたのだろう。

「俺は裁判に掛けられ、ここはその控え室ってところか」

「察しが良いね。だが、うーん。半分正解ってところかな?」

「半分?」

「端末だと言ったでしょう?」

 こいつを介して、裁判は始まっていたのか。

 声音が変わり、瞬きは消えた。

「贖罪の意識の欠如。――刑期、輪廻五回を課す」

「……はは、そうか。分かったぞ」

 表情一つ変えることのないそれに私は指差す。

「俺は死んでない。必ず新宿に戻る」

 私は本当の地獄へ送り出されるのだった。


 精緻な調度品が並ぶ、悪趣味な部屋の中。数人が、モニターを見ていた。

「威勢が良いと言えば良いのかぁ?」

 一人だけ。中央に陣取る身体の大きい彼だけは天を仰いでいた。

「まさか、な」

 モニターは別の死者を移しだした。

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