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転生して聖女見習いになったと思ったら何故か毒手の親戚みたいなトンチキ拳法を極める流れになってるんですけど!?  作者: 悠戯


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07.出会うガール


 修道院の最寄りの街のちょっと手前。

 チラホラと人や馬車が行き交う街道で、わたしは知り合いの顔を見つけました。



「こんにちは。ご無沙汰してます、おじさん」


「うん? ああ、誰かと思ったらりっちゃんか! ちょっと見ない間にすっかり美人さんになってるから見違えたよ」


「うふふ、ヤですよぉ。お上手ですねぇ」



 見つけた顔とは、三年前にわたしが修道院まで来る時にもお世話になった商人さん。自分の馬車に商品を積み込んで、あちこちの街や村を行き来しているお仕事をしている方でした。


 生まれ故郷の町にいた頃からの知り合いですし、できれば家族の近況を聞いたりなど軽く世間話といきたいところだったのですけれど、残念ながらそんな風に呑気にしていられる状況ではなさそうです。



「あらら、馬車の後輪が。道の窪みにがっつりハマっちゃってますねぇ」


「そうなんだよ、まったくツイてない。車体ごと横転して品物が駄目になったり馬が怪我をしてないのは不幸中の幸いだったけど、押しても引いてもビクともしやしない」



 そんな事情で商人さんの馬車は街道で立ち往生していたご様子。

 わたしが見つけた時もおじさん一人で馬車の荷台を持ち上げようと頑張っていましたが、まあ流石に無謀というものでしょう。下手をしたら腰や背中を傷めてしまうかもしれません。



「周りの皆さんにお手を借りるのは……うーん、ちょっと難しそうですねぇ」



 現在地点は街のすぐ手前。

 街道を行き来する人というのは大抵なんらかのお仕事の途中ですし、トラブルに関わり合って余計な時間を食いたくないというのが正直なところ。世知辛いようですが、彼らに文句を言うのも筋違いというものでしょう。


 まあ、そういう事情なら仕方がありません。



「わたしの荷車は一旦路肩に置いておくとして……よいしょ、っと! なるほど、コレはたしかに強敵ですねっ」


「おいおい、気持ちはありがたいけど流石に無茶だよ!?」



 知り合いのピンチを見捨てるのに抵抗があったという理由もありますが、ここで恩の押し売りをしておけばお礼として実家に送る手紙をタダで届けてくれるかもしれません。それで郵便代が丸々浮けば、そのお金はそのままわたしのお小遣いになるわけです。

 いつも見ているだけで我慢していた揚げ菓子でも買い食いするか。それとも思い切って奮発して、ケーキが美味しいらしいと評判の喫茶店で優雅にティータイムとでも洒落込むか。そんな野望の前では多少の肉体的疲労など安いものです。



「ぐぬぬ、むむっ」



 どうやら手助けを受け入れてくれる気になったらしいおじさんと力を合わせ、馬車の荷台を押してみたり持ち上げようとしてみたり。常日頃のトンチキ拳法の修行のおかげで体力が付いてきた自信はあったのですが、残念ながら窪みにハマった車輪はあと一歩のところで出てきてくれません。


 ううむ、自分から手伝いを申し出ておいて役に立たないとは我ながら格好悪い。いっそ恥の上塗りを覚悟して、修道院に引き返してクーちゃんや先輩方に助っ人に来てもらおうか。そんな風に考えかけていたのですが……幸いなことにその必要はなくなりました。



「失礼します! この馬車を押せばいいんですか?」


「はい?」



 商人のおじさんとわたしの二人がかりで馬車の荷台を押していたところに、なんと見知らぬ少年が助っ人を申し出てくれたのです。



「あ、はい、どうもお願いします?」


「はい、任せてください! 見習いの身ではありますが、困っている人を助けるのは騎士の務め。微力を尽くさせていただきます!」



 見知らぬ助っ人少年は、わたしと同じくらいの背丈の小柄な体格。

 ライトブラウンの髪を短いポニーテールに結っていて、初対面の相手に対する感想としては少し失礼かもですが、人懐っこい子犬が尻尾を振っているかのような印象がありました。

 顔立ちも幼めですし、見たところわたしより二つか三つは年下でしょうか。なんとなく見覚えのある服装は、たしかすぐそこの街にある士官学校の制服だったと記憶しています。



「じゃあ、『せーの』でタイミングを合わせて一気にいきましょう。せぇ……の!」



 騎士志望なら常日頃からトレーニングなどもしているのでしょうけれど、残念ながら助っ人少年は見た目に反した怪力の持ち主というわけではないようです。


 しかし、それでも単純に人手が増えたのはありがたい。

 わたしと商人さんと少年の三人がかりで力と根性とを振り絞り、そして。



「やった!」



 軽い衝撃と共にようやく不自然に傾いていた馬車が正常な状態へと復帰。三人とも汗まみれで息も絶え絶えといった有り様ですが、どうにか目的を果たすことができました。



「ありがとう、りっちゃん! 小さな騎士さんも、おかげで助かったよ」


「いえ、お気になさらず! 当然のことをしたまでですから!」



 体格が小柄なせいもあってか、言動の端々に幼い子供が騎士ごっこに興じているような妙に芝居がかった感はありますが、助っ人少年の熱意は一人前の騎士さんにも劣らぬようです。なんだか実家の弟達を思い出して微笑ましい気分になりました。


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