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転生して聖女見習いになったと思ったら何故か毒手の親戚みたいなトンチキ拳法を極める流れになってるんですけど!?  作者: 悠戯


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61.比較的セーフ寄りの変態とガール


 偶然にも目の前に服屋さんがあったのは僥倖でした。

 当のレイさんは大して気にする様子もありませんでしたが、すぐ隣にお尻丸出しのイケメンがいる異常すぎる状況に我々の心が耐えられそうにありません。



「着替えてきたぞ。ちゃんと金も置いてきた」


「はい、よくできました。このあたりのお店の人は皆逃げちゃったみたいですね」



 ともあれ、これでようやく建設的な話ができそうです。

 具体的には、ちょうどレイさんの尻ビームで半死半生の重傷を負った悪魔を実験台に、ここまで持ってきた『本』で本当に人間に戻せるか試そうという次第。元々はもうちょっと先の通りにいるはずの院長先生が弱らせた連中を使う予定でしたが、別の実験材料がより近くにいるのだから使って悪いということもないでしょう。



「ええと、たしか魔法陣が描いてあるページを開いて押し付ければいいんだっけ?」



 その前段階の十分に弱らせる工程は偶然にもすでに完了済み。

 巨大なライオンが真っ黒いゴミ袋を被ったかの如き悪魔は、胸から背中にかけてを尻ビームによって貫かれ、今は倒れたままピクピクと痙攣するばかり。肉体に開いた穴の直径はパッと見二十センチ近くにもなるでしょうか。これが尋常の生物なら間違いなく致命傷です。



「じゃあ、早速……あれ? ねえねえ、これって悪魔が身体から抜けたら怪我も無かったことになるのかな?」


「さあ、どうなのでしょう? 陛下はそのあたりには触れられていなかったと思いますけど」



 これで悪魔を身体から追い出すまでは良いとして、憑依されて肉体が変質している時に負った怪我が都合よく治ってくれなければ、後に残るのは身体に大穴が開いた普通人。せっかく元の姿に戻れたとしても、余命は長くて数秒といったところでしょうか。



「どこか読める部分にそのあたり書いてないですかね?」



 『本』の記述は古めかしい日本語とこの国の文字とが不規則に混在した可読性最悪のシロモノですが、今いるメンバーの中で一番読めそうな可能性があるのはわたしでしょう。別に全部を正確に読み解く必要はないですし、悪魔が抜けた人間の肉体がどうなるかだけ分かれば十分なのですが。



「うーん……全然分かんないですね!」



 案の定、何が何だかさっぱり分かりません。そもそも王様がそのあたりに言及しなかったということは、最初から書かれていない可能性もそこそこありそうですし。



「ま、この際仕方ありません。上手くいったら儲けものくらいの軽い気持ちで、ワンチャンいけないか駄目元で試してみる方向でいいですね?」


「良くないわよ!?」



 わたしの提案にエリーちゃんがすごい勢いで「待った」をかけてきました。

 こちらにとっては手頃な実験台でも、彼女にとっては仲の良いお友達の誰か。もし失敗したら死んでしまうとあってか、慎重な対応を求める気持ちが強いようです。


 まあ、わたしも別に無駄な死人を出したいわけではありません。

 悪魔状態での怪我が都合よく治れば良し。

 もし治らず致命傷を負った状態で人間に戻ったとしても、ここにはわたしとクーちゃんがいるのです。数秒でも死ぬまでの猶予があれば、すかさず毒手モドキを叩き込んで治すことも可能でしょう。『本』を試す時には、あらかじめ拳をブチ込めるようスタンバイしていなくては。



「でも、そのあたりの事情を知らないエリちゃんが見たら、常識的な判断でわたし達のこと止めそうな気もしますね?」


「え、なに? 何しようとしてるの?」



 これから仮に死にかけの怪我人がここに現れたとして、一見するとトドメになりそうな一撃を叩き込もうとする人間が予備知識のない相手からどう思われるか。我ながら、つくづく絵面の物騒さに問題のある特技です。


 そのあたりの技の性質を逐一説明してもいいのですが、知り合って間もない相手があんな嘘くさいトンチキ拳法の実在を素直に信じてくれるかというと……。



「ま、いいか。クーちゃん、そっち側からお願いね」


「はい、万が一の時はお任せください!」



 こっちは二人。いくらエリーちゃんが必死に止めようとも、それぞれ別方向から怪我人に殴りかかる我々の両方を同時に止めるのは物理的に不可能です。字面も絵面も最悪ですが、これが一番確実なのだから仕方なし。



「え、ちょっ、待っ! なんで二人とも拳を構えてるの!?」



 『本』のページを開いて構えつつ、更にはすかさず殴りかかれるようにと二重の構え。エリーちゃんからは確実に友人を助けられる見込みもないまま、危うい賭けに出ようとしている風に見えているものと思われますが、結果的に助かれば彼女も許してくれるでしょう。



「せぇ、のっ!」



 まずは『本』に描かれた魔法陣を仮面にギュッと押し付けて、と。


 おっ、どうやら効いてるようですね。

 巨大化した身体がみるみる縮んでいきます。

 元々が身体の一部でない仮面やローブまで連動してサイズダウンするのは不思議な気もしますが、そこは悪魔による超自然的な不思議パワーによるものですし考えるだけ無駄でしょう。


 縮小の過程で固定用の紐でも緩んだのか、自然と外れた仮面の下には十四歳だというエリーちゃんより更に一つ二つ年下と思われる少年の顔が。衰弱しているのか弱々しくはありますが、ちゃんと息もしているようです。


 どうやら意識がないのか特に恐怖や苦痛の表情を浮かべていないのは幸いですが、これローブを着たままの状態で怪我の有無を見極めるのって意外と大変そうですね?


 ビームで開いた衣装の穴も全体のサイズが縮むにつれて小さくなっていますし、黒いローブを着たままでは出血の有無なども分かりません。その下の身体に穴が開いているかどうか見極めるためには、ローブを剥ぎ取って確認しない限り確かなことは言えないでしょう。なので、これは仕方のないことなのです。



「よし、仕方ないから脱がしますか。クーちゃんはそっち押さえててください」


「えっ、なに!? また変態なの!?」


「こらこら、人聞きの悪い。意識がないうちに着ている物をひん剥いて中身を検めるだけですよグヘヘヘ」


「やっぱり変態じゃない!? あと、その笑い方なに!?」



 まったく失礼な。

 仮に変態だとしても、限りなくセーフ寄りの変態であるはずです。


 ちなみに下着以外は裸に剥かれた少年の身体には、どこにも傷ひとつありませんでした。治療の手間が省けたのはラッキーですが、怪我がなかったからこそエリーちゃんの誤解を解く機会を逸してしまったような気も?



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「えっ、なに!? また変態なの!?」 変態はいつ、どこにでもいる、あなたの後にも……グヘヘヘ!
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