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転生して聖女見習いになったと思ったら何故か毒手の親戚みたいなトンチキ拳法を極める流れになってるんですけど!?  作者: 悠戯


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54.戦いを見守るガール


 まったくワケの分からない状況ですが、悠長に謎解きをする余裕もありません。

 四階から飛び降りてきた黒ずくめの怪人に対し、レイさんは即座に反応して迎撃の動き。すっと五指を伸ばした手刀に魔法の光を纏わせて、凶悪な切れ味を誇る鉤爪を真正面から打ち払いました。



「おぉ~……あのビームって遠距離から撃つ以外もできたんだ」



 わたしの乏しい科学知識でも光というのは基本的に真っすぐ直進するものだという程度は知っていますが、そこはファンタジックな原理に基づく魔法の光。手刀に纏わせたり本物の剣くらいの長さに射程を留めることもできるようです。


 以前に見た遠距離から撃つビーム攻撃も強力でしたが、流れ弾で大聖堂のあちこちに穴を開けてしまいかねないリスクを考慮するなら、あえて射程を短く制限するのが正解でしょう。それに短いとはいえ光の刃の刃渡りはざっと二メートル以上。普通の剣に比べたら間合いを長く取れそうですし、その切れ味も金属製の刃物に勝りこそすれ劣ることはないようです。



「うわ、グロ……」



 先の激突で深々と切り裂かれていたのか、ウロコに覆われた怪人の両腕は辛うじて皮膚一枚残して繋がっているような酷い状態。戦闘に関しては素人のわたしでも、これはもう勝負アリだと一目で分かります。ちょっと可哀想な気もしますが、そこはまあ自業自得ということで……なんて、呑気な考えそのものがまさにわたしが素人である証左。


 相手の戦意も殺気も衰えていないことを敏感に察していたレイさんは、まだまだ油断なく構えています。その気構えがなければ、間違いなく次の攻撃でやられてしまっていたでしょう。



「んなっ!? あの身体、何がどうなってるんです!?」



 両腕が千切れかけた程度では何ら問題ないと示すかの如く怪人が出してきたのは、黒いローブの裾から伸びる長大な腕。それだけなら先程の両腕と同じですが、ローブの下からは先端に鉤爪を備えた腕が一本二本ならず次々と伸びてきたではありませんか。


 そもそも足があるべき場所に腕があるだけでもおかしいのに、ローブの裾から伸びる腕の数はなんと八本。タコじゃあるまいし、あのローブを剥ぎ取った身体はどんな構造をしているのでしょう。



「お前達はもっと下がっていろ! 父さ……隊長は陛下とマークを安全な所に!」



 こんな奇怪な怪物が相手でもレイさんは冷静に攻撃を回避し、時に光の刃と鉤爪で鍔迫り合いを繰り広げ、更にはまだ周囲にいる面々に避難を促しさえしています。


 見れば一昨日の謁見の間でもお見掛けした警護隊長さん――やはりレイさんのお父さんだったようですね――が、王様とマー君をこの場から遠ざけようとしています。

 素人考えとしては避難はご本人達に任せて、恐らく相当に強いであろう隊長さんとレイさんの親子コンビで一気に敵を倒し切ってしまうのも手だと思うのですが、あくまで彼らは護衛対象の安全を第一とする警護隊。敵が思ったより強くて手こずったりだとか、目の前の一体以外の伏兵がどこかに隠れている可能性まで考慮しての逃げの一手なのでしょう。


 わたしも迂闊に近寄ってレイさんの足を引っ張らないようにしなくては。

 そういえば二階にいたはずのクーちゃん達はどうなったのか。

 それに本来の予定なら間もなく入場してくるであろう参列客の皆さんに、今は絶対に大聖堂の中に入ってこないよう注意する人も必要です。


 式典の直前だっただけあって聖堂内にはそれなりの数の人間がいましたが、突然の修羅場で混乱しているのか満足に動けている人は少ないようです。わたしも人のことは言えませんが、とにかく戦いの最前線から距離を置きつつ動けそうな人に声をかけて出来ることをしなければ、と。



「フンッ!」



 そんな風に考えていたのは、わたしだけではなかったようです。

 自分に出来ることをしようと考えた結果、正体不明の怪物に接近して強烈極まる横蹴りを叩き込んだのでしょう。間合いを詰めるスピードがあまりに速かったのに加え、単純に蹴りの威力が強すぎて怪人が大聖堂の壁に叩きつけられ、そのまま壁を派手に突き破って外に飛び出していってしまいました。


 当然といえば当然ですが、普段わたしにゲンコツを落とす時は全力の一割も力を込めていなかったのでしょう。蹴りと拳の違いこそあれ、あんな威力の打撃を喰らったら普通の人間は身体がバラバラになってしまうに違いありません。



「さっすが院長先生! ささっ、このままやっちゃって下さい!」


「やれやれ、調子の良い子だこと。まあ蹴った感触からして背骨も内臓もグチャグチャだろうし、あとはゆっくり正体を……チッ、今日の祭りは中止かね」




 砕けた壁の破片にまみれてピクピク痙攣している怪人は、たしかにもう戦えそうもありません。敵がその一体だけなら、これで事件は大方解決したことでしょう。怪人の正体や動機を探る必要はあるにせよ、そのあたりは専門の捜査機関に丸投げすれば済んだはず。そのはずだったのですけれど。



「同じ仮面とローブがひぃ、ふぅ、みぃ……五体かな? いや、見えてない場所にもっといるかもしれないけど。ていうか、アレ……大きすぎません!?」



 奇しくも壁が破れたことで、その向こうに隠れていた王都の街並みが顕わに。

 それで我々の視界に飛び込んできたのは目の前で倒れている怪人とお揃いの仮面と黒ローブの不審者達なのですが、その大きさが尋常ではありません。

 距離があるので正確なところは分かりませんが、周辺の家屋や店屋を見下ろしている点からするに少なくとも体長五メートル以上。個体ごとのサイズのバラつきも少なくないですが、最大の個体は二十メートル近くもありそうです。明らかに目の前で倒れている黒ローブの仲間でしょう。


 院長先生にやられた怪人もそこそこ強かったはずなのですが、あの巨体と比べたら正直ショボく見えてしまいそうです。もしかすると仲間内では「ククク、アヤツなど我らの中でも一番の小物……」みたいな陰口を叩かれる可哀想なポジションだったのかもしれませんね。いえ、それは別にどうでもいいのですけれど。



「これ、普通に国家存亡の危機とかでは?」



 なにしろ一国の首都で正体不明の怪物達が大暴れ。

 もしかしなくても歴史に残るような大事件です。


 なんだか大変なことになってしまいました。


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まさかあの怪しい連中、日を間違えてた?
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