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転生して聖女見習いになったと思ったら何故か毒手の親戚みたいなトンチキ拳法を極める流れになってるんですけど!?  作者: 悠戯


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44.遊び上手なガール


 そんなこんなで私服を調達。

 試着したのを着たまま会計まで済ませ、いよいよ本格的に王都観光に乗り出す準備が整いました。ちなみに、さっきまで着ていた修道服はシワにならないよう畳んで、地元時代から愛用している一枚布を風呂敷代わりに包んであります。折りたためば邪魔にもなりませんし、いざとなればタオルとしても使えますし、意外と便利なんですよね。



「こうして日の下で見ると一層似合って見えますね! ちなみに、りっちゃんさんは『可愛い』と『綺麗』のどちらの形容がお好みですか?」


「普通、それ本人に聞くかなぁ? ……そこはマー君なりのワードセンスで、臨機応変にお願いできればと」



 くすぐったいような照れ臭さはありますが、服が似合っているのを褒められるのは正直悪い気分ではありません。お父さんが染め上げた『作品』が使われているとなれば尚更のこと。


 うん、初っ端から良い買い物ができました。

 まずは幸先の良い滑り出しと言ってもよいでしょう。



「それで観光でどこに行くかなんだけど」


「はい、りっちゃんさんにリクエストがあれば喜んでエスコートさせてただきますよ!」


「修道院を発つ前に王都に来たことのある先輩達から、色々とオススメを聞いたりもしたんだけど」


「事前の情報収集を怠らないとは見事な備えかと! 流石です!」



 このワンコ、わたしが何しても無条件で褒めてきますね。

 それが必ずしもイヤというわけではないものの、こっちが変なこと言った時にも無思考で追従したりするようでは、ちょっとばかり不安を覚えなくもありません。今のうちから、そのあたり指摘して矯正を図るべきでしょうか。



「でもね、色々聞いたオススメっていうのが八割方は食べ物関係というか。ほら、先輩達も立場上あんまり派手に遊び回るってことは気が引けたみたいで。そうなると必然的に何か食べる方向に進みがちになっちゃいまして」


「なるほど。でも、今はまだ食事は無理そうですよね?」


「そうなんだよねぇ。今の状態で下手に飲食系を攻めたら、この服が早々にお亡くなりになりかねないですし」



 この世界では金銀財宝よりも貴重であろう和食をたらふく食らった判断に後悔はありませんが、買ったばかりの服をゴミにしたくないなら飲食系の予定は明日以降に回すのが無難でしょう。あまり自制心や克己心に自信はないですが、明朝はご飯のおかわりを控えめにしなくては。



「それで食べ物系以外の残り二割のオススメっていうのが、劇場でお芝居を見るのと国営カジノなんだけど。まず劇場は今やってる演目が何かも分からないし。開演時間によっては結構待たないといけなさそうだし。劇場前まで行ってみて軽く確認するくらいはしてもいいかもだけど」



 カジノに関しては、勧められはしたものの最初から行く気はありません。

 というか、これをオススメしてきたの院長先生なんですよね。普段からカード賭博で買ったの負けたの騒いでいますし、とんだ破戒僧もいたものですわ。



「つまり、現状はほぼノープランも同然の有り様でして。それならそれで、ただ単にお散歩するのもそれなりには楽しいかもしれませんけど、ここはマー君からの提案を期待したいかなって」


「ははぁ、それは責任重大ですね」



 王都の地元民ではあるものの、小さい頃はほとんど出歩けなかったと聞いています。なので土地勘などはないにせよ、もし元気になったら行ってみたかった場所などはあるのではないでしょうか。



「大聖女様とりっちゃんさんのおかげで、この通り元気になったわけですからね。あの頃のボクが行ってみたいと思っていたというと……あの、我ながら子供っぽいかなとは思うんですけど。それに普通は意中の女性を誘うようなことではないとも承知してはいるんですが……」


「聞いたのはこっちだし、できる限りは付き合うつもりですよ?」



 いつも歯切れの良い受け答えをするマー君にしては、珍しく言いよどんでいるご様子。こちらの体力および精神的に支障がない範囲であれば、なるべくオーダーにお応えしたいとは思うのですが。



「ええとですね、この通りを真っすぐ行った先に、ちょっとした公園のような場所があるはずなんですよ。王都内では珍しく色々な花や木々があって、市井の皆さんに開放されていて、誰でも自由に散歩や運動を楽しめるというような。小さい頃は城の窓からその光景をよく眺めていたんですが……」


「うんうん、遠慮なく言ってくださいな」


「はい……ボクと同じ年頃の子供が親御さんや友人とボール投げをして遊んでいるのを、常々羨ましく思ってまして。ボールならこの辺りの雑貨店かどこかで買えると思いますし、りっちゃんさんさえ問題ないようなら一緒に――――」


「よし、やりましょう!」



 マー君が言いよどむのも無理はありません。

 普通デート相手をキャッチボールに誘ったりしたら、大抵の女性は困惑待ったなしでしょう。ですが、これでも前世の小学生時代はドッヂボールで鳴らしたもの。今生でも実家の弟妹達や近所の悪ガキ共に、川に向けて石を投げて多く跳ねさせたほうが勝ちという水切り遊びで大人気なく圧勝して尊敬を勝ち取ったりもしていました。そういう意味での抵抗感は大してありません。


 それに何よりボール遊びに付き合えば幼い頃のマー君の無念が少しでも晴れるというなら、迷うことはないでしょう。適度に身体を動かしてお腹を減らしておきたいという希望にも適います。


 無論、わざと手を抜いて勝ちを譲るつもりなど毛頭なし。なんの遊びをするにせよ、それが勝負事なら初心者相手だろうと全力で叩き潰して差し上げる所存ではありますが。



「望むところです! さあ、行きましょう。りっちゃんさん!」


「ふっふっふ、その手の遊びならこっちに一日の長がありますからね。わたしの必殺魔球の前にひれ伏させてあげましょう……っ」



 いや、魔球は適当言っただけでそんなモンないですけど。

 ともあれ、近所のお店で大ぶりなメロンくらいの大きさのボールを購入した我々は、件の公園に移動して芝生の上で力いっぱい投げたり蹴ったり。ルールもあるんだか無いんだか最後まで分からないままでしたが、ただボールを行ったり来たりさせているだけでも案外面白いものです。


 そうして気付いた時にはもう日暮れ間近。

 土や草の汁で買ったばかりの服が汚れないよう注意してはいましたが、全身にかいた汗ばかりはどうしようもありません。ムードの『ム』の字もないような時間ではありましたが、これはこれで充実したひと時だったと言えるのではないでしょうか。



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破戒僧にして破壊僧
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