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転生して聖女見習いになったと思ったら何故か毒手の親戚みたいなトンチキ拳法を極める流れになってるんですけど!?  作者: 悠戯


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33.大家族とガール


 四年ぶりに帰ってきた懐かしの我が家。

 この日の晩は久しぶりに十人家族が勢揃い……にプラス一名。

 ゲストのマー君をお招きして、総勢十一名で賑やかな食卓を囲むことになりました。



「あらあら、まあまあ。今日はやけに通りが賑やかだと思ってたけど、王子様がウチの町にいらしてたの? それに、りっちゃん達が同じ馬車に乗ってたなんてビックリだわ」


「だよね! わたしも最初は超ビックリしたもん。すごい緊張したし。でも、話してみると意外と親切で面白い人だったよ。ね、マー君?」


「ええ、口数は少ないけど同級生の皆にも優しいですし。あと面白さで言えば、一人で修練をしてる時に魔法を耳や鼻の穴から出せないか試したりとかもしてましたし。流石にお尻から出そうとするのは止めるよう頼みましたけど。テクニックとしては凄まじく高度なことなんでしょうけど、王家のイメージ的にちょっと……」



 あの影武者さんは、いったいどこを目指してるんでしょう?

 万事に秀でた凄まじい才能の持ち主ではあるんでしょうけど、数々の天然ムーブがたまたま王族っぽい浮世離れしたイメージや世間の好意的な解釈と噛み合っているだけで、レイさんもなかなかの変人ですよね。


 いえ、今考えるべきは影武者ではなく目の前の本物のほうなんですが。



「お母さん、シチューおかわりもらうね」


「ええ、たっぷり食べてね。マークさんも遠慮なくどうぞ」


「はい、ありがとうございます! 美味しいです!」



 ウチの家族も、まさか目の前の少年こそが本物の王子様だとは夢にも思っていないでしょう。マー君はマー君で、あれだけ緊張するだのなんだの言っていた割に、驚くほどの早さであっさり我が家の食卓に馴染んでいます。


 家族にしてみれば久しぶりに帰ってきた娘から友人と紹介された形ですが、その具体的な関係性については未だ誰も踏み込んではおりません。

 全部の事情を包み隠さず明かすわけにはいかないにせよ、仮にも年頃の娘が同年代の異性を連れてきたわけです。まさか本当にただのお友達だと思ってはいないでしょう。じゃあ何なのかと問われたら、わたし自身としても説明に困ってしまうのですけれど。


 今のところ、まだそういった人間関係の繊細な機微を理解していない年少の弟妹以外の皆は、大人しく『見』に回って様子を窺うつもりのようなのですが。



「ああ、その、マーク君だったかな? ウチの娘は、えっと、ご迷惑をおかけしたりしてないかい?」


「はい! それどころか、いつもボクが助けられてばかりで娘さんには大変感謝しています!」


「そ、そうかい。それならいいんだけど……」



 唯一、お父さんだけは一目で分かるほどに狼狽えている様子。

 子供のわたしも怒っているのを見たことがないくらい穏やかな性格の人ですし、出会って早々に何か早合点をしてマー君を怒鳴りつけたりしないのは幸いでしたが、帰省した娘が男の子を連れてきたという状況にはずいぶんと戸惑っているようです。


 ちなみに、我が家の父は染物工房を営む職人にして親方。

 服を仕立てる前段階の、糸や布に色を付けるお仕事ですね。

 他の染物工房というのを見たことはないですし、身内の贔屓目も込みかもしれませんけど、職人としての腕前はなかなか見事なものがあると思っています。その割に我が家の財政状況が万年金欠なのは、友人知人に頼まれたら返済の見込みもないお金をポンと貸してしまうのと、それから他にも……。



「それにしても、わたしもさっきお腹見て驚いたよ。九人目だなんて、お母さん達ってば相変わらず仲良しなんだから」



 こうして家族がどんどん増えるのが家計を圧迫する一因なのでしょう。

 困ると同時に嬉しいことでもあるので、別に文句を言う気はないですが。

 この世界では前世の日本における一般家庭より子供の数が多めなのが普通ではあるのですが、それでも九人姉弟というのは流石にかなり珍しい部類です。いえ、この調子ならそのうち二桁の大台に乗るかもしれませんね。



「あらあら、わたしなんてまだまだよぉ。わたしのお婆ちゃん、りっちゃんの曾お婆ちゃんなんて、全部で十六人も産んだんですもの。ウチの家系は代々多産向きな体質みたいだし、りっちゃんも将来お母さんになったら、きっと元気な赤ちゃんがいっぱい産まれると思うわよ?」


「ぐはっ!?」



 お母さんってば、すぐ隣にマー君がいる状態でデリケートな話題を……!?


 マー君は何を想像しやがったのかこっちを見て照れ臭そうに頬を赤らめていますし、お父さんは可哀想にわたしの顔を見ながら泣きそうになっています。きっと、早くも娘を嫁に出す場面でも想像してしまったのでしょう。



「…………ええと」



 期せずして、何やら気まずい沈黙が。

 今の会話の意味を理解できていないであろう年下の弟妹達も、大人達の空気を読んでかわざわざ静かにしてくれているようです。その気遣いが嬉しくもあり、話を逸らして逃げる口実がなくなったのが悩ましくもあり。



「あのっ! ご家族の皆さんにお伝えしたいことがあります!」



 そんな沈黙を真っ先に破ったのはマー君でした。

 いざとなれば凶悪な魔物に立ち向かえるほどの勇気があるのは身をもって知っていますが、この平和な食卓においてもその勇敢さは変わらぬ様子。

 いつまでも態度をハッキリさせない優柔不断の身としては、そんな彼の気性が正直羨ましくもありますね。ついでに言えば、もう数瞬の後に訪れるであろう家族からの追求の嵐を予見して困り果ててもいたのですけれど。



「まだ御本人に快諾をいただけていない段階で言うのは時期尚早かとも思ったのですけど、実は、ボクは娘さんに将来の結婚を前提としたお付き合いを申し込んでいます! もし彼女に受け入れていただけたなら……どうか、その時はボク達の仲をお許しいただけないでしょうか!」



 本来、まだ付き合ってもない段階で言うことじゃないのは彼自身も重々自覚しているようですが、それでも熱い気持ちを抑えきれなかったのでしょう。あとは一か八かわたしの家族を先に味方に付けることで、精神的にこちらの外堀を埋めていく計算も幾らかあったかもしれません。


 突然の宣言には我が家族も大層驚いていましたが、結論から言ってしまうと……ええ、見事に外堀が埋められる形になりましたとも。それはもう、大阪夏の陣かってくらいの勢いで。栄華を誇った豊臣の命運も最早これまで、おのれ徳川……なんて、この世界の誰にも分からない日本史ボケを脳内で繰り出して現実逃避している場合ではなく。


 無責任な先延ばしを続けるのも、いい加減に限界でしょうか。彼の誠意をこのまま小手先で誤魔化し続けたら、そろそろ自分で自分のことが嫌いになってしまいそうです。


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喰らえ!禁断の!プリンス尻ビーム!!
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