表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生して聖女見習いになったと思ったら何故か毒手の親戚みたいなトンチキ拳法を極める流れになってるんですけど!?  作者: 悠戯


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/59

29.美味い話に喜ぶガール


 そこからの数か月は、まあ平穏な日々ではあったのでしょう。

 二日に一度ペースで毒手モドキを叩き込んだり、それ以外の日でもパトロールのお手伝いをしたり、ちょくちょく会っては色々やっていた割にマー君との関係にこれといった進展はありませんでしたが。

 新ネタの供給がなくて残念がっている先輩方はさておいて、彼は停滞感を覚えて焦ったりしないんでしょうかね。いえ、わたしが言うのもなんですが。


 ともあれ、月日は流れてわたしは十六歳になりました。

 まあ、だからといって何がどうなるというわけではないのですけれど。



「はーい、ご飯できましたよー」


「待ってました! 今日のお昼は……おっ、今日はりっちゃんママシリーズの新作かな?」


「ええ、いつもパンを焼いてるオーブンでピザなるブツを焼いてみました。熱いうちが華の料理なので、冷める前にどうぞどうぞ」



 しいて言えば、地球グルメの再現はちょっと上手くなったかもしれません。

 ここ数か月ほどマイブームで食事当番の時に色々試しているのですけど、これが他の皆さんにも意外と好評で、褒められて嬉しくなったわたしは調子に乗ってアレコレ試している次第でございます。



「へえ、要はチーズやら燻製肉やらを載せて焼いた薄パンかい……ふむふむ、コイツは酒に合いそうだ。誰か、アタシの部屋から持ってきておくれ。麦酒と葡萄酒、どっちもだよ!」


「ちょっとちょっと院長先生、まだお昼ですよ?」


「いいんだよ、これで飲まないのは美味い肴に失礼ってなもんだ。神様だって、お目こぼしくださるさ」


「……まあ、気に入ってくれたのは嬉しいですけどね」



 市場でトマトっぽい野菜(スイカくらいあるビッグサイズでしたが)を見かけたので、気合を入れてトマトソースを仕込んでみたのですけれど、イタリアの味覚は修道院の皆さんの舌に合っていたようで一安心。惜しむらくは、そのお化けトマトは遠方から来た商人さんが運んできたとかで常時手に入るわけではない点ですが。下ごしらえの際に種を取っておいたので、駄目元で畑に植えてみましょうかね。


 ちなみに、今日は上手くいったので皆さんの反応も優しめですが、いつもこんな風に成功するわけではありません。前にお米っぽい穀物を炊いて捏ねてお餅風にしたのを出した時は、わたし含めて皆で微妙な顔を浮かべることになりましたし。



「ごちそうさまでした」


「はい、お粗末さまでした」



 さて、楽しいお昼の時間は無事終了。

 わたしの午後の予定は、食器を片付けてから聖句の暗唱と毒手モドキの修行でしたっけ……と、脳内の予定表を確認していたのですけれども。



「そうだ、忘れるところだったよ。金髪と茶髪、アンタら二人これから院長室まで付き合いな」


「はい?」



 身に覚えはないですが、もしや自分でも気付かぬうちに何かやらかしましたかね。いえ、わたし一人ならともかくクーちゃんも一緒の呼び出しとあらば、その線は薄いでしょうが。



「なんだろうねぇ?」


「さあ、私もよく……」



 最近ますます美しさに磨きがかかり、常時後光が差し始めたクーちゃんにも心当たりはない様子。夜中、お手洗いに行く時とか灯りを用意するのが楽で便利なんですよね。

 彼女自身に自分が謎の光を発している自覚はないらしいのですけれど、日常的に摂取している世界樹成分が我が眼球や脳に重篤な副作用を及ぼしているのではないことを祈るばかりです。先輩達や街の皆さんにも見えているようなので、恐らく大丈夫だとは思うのですが。


 まあ、美少女特有の怪現象についてはさておいて。

 院長室に呼び出された我ら二人は、思ってもいなかった話を聞くことになりました。



「院長先生の王都行きに同行? そういえば、毎年春先に何人かで行ってましたね」


「ああ、アンタら二人もようやくオシメが取れたことだしね」



 院長先生は以前から年に二回か三回ほど修道院を空けることがありました。

 理由はその時々で違いますが、春先の今頃だと確か王都の建国祭だか何だかのイベントに出席するためだったかと。これまでは既に一人前のお許しを得ていた先輩のどなたかを旅の供としていたのですが、今回初めてわたし達にその役目が回ってきたようです。



「ま、ちょっとした小旅行くらいのもんだ。気楽に楽しむくらいで問題ないさね」



 つまりは修道院のお金で旅行ができるというわけです。

 前年以前にお供を務めた先輩達のお話によると、メインの式典では会場の隅っこで澄ました顔をしながら大人しく立っているくらいで難しいことは何もないはず。それでいて式の前後に一日か二日くらい王都見物を楽しんだり、院のお金で美味しい物を飲み食いしたり。そんな話を聞いて羨ましく思った覚えがあります。



「ふふ、王都に帰るのは久しぶりですわ」


「あ、そっか。クーちゃんの地元だっけ。ていうか、多分行く途中でわたしの地元の町も通るんじゃないかな? あんまり長居はできないだろうけど、チラっとでも帰省できればいいなぁ」



 タダで旅行と帰省ができる上に色々と美味しい思いもできそうです。

 この修道院に来てから、こんなにも美味い話があったでしょうか……いえ、王子様からのプロポーズの前では霞むかもしれませんけど、あちらと違って今回は素直に喜べます。


 真面目に生きていれば良いことはあるんだなぁ、なんて。

 そんな風に思っていた時期がわたしにもありました。


※この作品が面白いと思ったらブックマーク登録やポイント評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
旅行といえば野盗。 ヒャッハー!爆散!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ